小説 | ナノ


※お酒の間違った使い方をしてます


ばがん、と有り得ない音がして、マンションのドアが突き破られた。驚くのは一瞬で、それはすぐに呆れと諦めに変わった。やれやれだ。玄関を見ると、予想通りの人物が靴を脱いでいるのが見えた。ドア破るくせに靴は脱ぐんだね。

「正座しろ」

いきなりドアを破壊して上がり込んできたと思ったら、これだ。
俺はデスクからゆっくり立ち上がり、ナイフを手に取る。

「はあ?何言ってんの?」

肩をすくめて侵入者…この嫌にでかい金髪バーテン服を見上げる。服装はいつもと変わらないが、手に持っているものが違った。でかい一升瓶を持っている。

「…?何、お酒呑みにきたの?」

「…ああ…まあな。…取りあえずナイフ置いて座れよ。」

づかづか部屋に入ってくると、シズちゃんはソファーにどかりと座った。誰の家だと思ってんだよ…。
まあでもまがりなりにも恋人がお酒をもってきてくれたんだし、喜ぶべきだよね?それになんか高そうなお酒だし。そういえばシズちゃんとお酒呑むなんて久しぶりだ。つうか会うのが久々だよね。あれ、なんか本当に嬉しいかもしれない。ああいつのまにこんなに絆されるようになったんだろう。
煙草をふかしはじめたシズちゃんに、つまみいる?と尋ねた。いらねえ、と返事が返ってきた。適当にグラスを選んでいると、不意に名前を呼ばれる。

「臨也。」

「んー?」

「グラスいらねえからこっちこい。」

いやいや。いるだろう普通に。視線を向けると、ソファーに座ったシズちゃんが手招きしていた。なんだろう。なんだか行ってはいけない気がする。
いらないとは言われたが取りあえず2つグラスを取り出し、シズちゃんの向かい側へと座った。

「…なんでそっちなんだよ。」

「え?いや、向かい側のほうが呑みやすいでしょ?」

ぼす、とシズちゃんが無言で自分の隣を叩いた。こっちにこい、ということらしい。常ならそんな恋人のような(いや恋人だけど)ことはしないのに、今日はいったいどうしたことか。
でもなんか嬉しいから素直に従う。
なんだろうすごく癪だ。
その上嫌な予感がする。
ゆっくり腰をおろそうとして、腰をがっしり掴まれる。え、何?

「シズちゃ…?、っ!?何すっ…!?」

腰を掴まれたと思ったらいきなりベルトを引きちぎられ、スラックスをおろされた。逃げようにも腰をホールドされて逃げられない。
パンツ越しに股間を掴まれる。やばい。俺の勘がそう告げていた。

「ちょっ…と!何すんのっ!?」

「ナニ。」

死ねよ。金髪を引っ付かんでやると、鬱陶しそうにシズちゃんがこちらをみた。頬が赤い。酒臭い。酔ってやがる。
ぎり、と奥歯を噛み締め睨みつけるが、シズちゃんはそんなことはお構いなしにへらりと笑って言った。

「トムさんが一度はわかめ酒やってみてえっつってた。」

知るか。一回死ねよ。





わかめ酒!
続きます


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