小説 | ナノ


高校生静雄×司書臨也
静→←←←←←臨気味?
臨也さんはゲイ





「それで俺はゐつたのだ、おまへは俺のたつた一人なのだと」

図書館に男の声が響いた。たおやかな響きだ。
赤い瞳はすらすらと本の上の言葉を拾ってゆく。黒髪をさらりと耳にかけ、男は言葉を続けた。
横で自らの腕に顔を埋めている青色のブレザーは、雨の所為か濡れている。滴る水滴が青いブレザーを紺へと染めた。

「それで君はどうなのかね。俺は尋ねた。しかし彼女はしかと黙り込み、」

「…おい」

金髪が動く。水がゆれた。
黒髪の男は本から目を離し、隣の金髪を見やる。

「…うるさい…っす、よ。臨也さん」

「非道いなあ。シズちゃんの為に読んであげてるのに〜。」

「その呼び方やめろ…やめてください。」

「…シズちゃん、そろそろ敬語馴れなよ…。てゆうか敬語やめてって言ったのに。」

ふう、と臨也は溜め息をつき、本を閉じた。静雄はゆっくり起き上がり、臨也の手元の本を見る。相当古いものなのだろうか、表紙は汚れ、題名は霞んでいた。
臨也は本の表紙を優しく撫で、それで、と尋ねる。

「それでシズちゃん、今日はいったい何をヘコんでいるのかな?」

「…あんた、司書の癖におかしな日本語使うなよ。」

「いいじゃない。それとも小難しい言葉で話して欲しいわけ?」

ふん、と肩をすくめ、臨也は優しげな視線を静雄へ向けた。う、と静雄は口ごもり、喧嘩売られたんだ、と呟いた。

「まあそれはいつものことだしよ…別にいいんだ。」

「ふうん。」

白いマグを両手で包むように持つ。臨也はふ、と中のコーヒーに息を吹きかけた。

「で…したら、その…。」

言いたくないのだろうか。静雄は指先で金髪を遊びはじめた。マグから口を離し、臨也は涼しい口調で静雄の言葉を遮る。

「…なんで、喧嘩買ったの?いつもなら逃げてるじゃん。2、3人適当にあしらってさ。」

唐突な質問はしかし確信をついたようで、静雄は落としていた視線を更に下降させた。そしてぼそりと呟く。女が、絡まれてたんだよ。
臨也は眉一つ動かさず、成る程、と頷いた。

「それで正義の味方なシズちゃんは女の子を助けてやったわけだ。成る程。」

「…んだよその言い方…。」

「べっつにー?まあいいや、それは置いといて。助けてあげたんでしょ?じゃあ落ち込む理由ないじゃん。」

ぱらぱら本を捲る指を止め、臨也は隣に座ってもなお自らより少し大きい静雄を見上げた。静雄は眉間に皺をよせ、なんとも言えないような表情だ。

「…化け物。」

「は?」

「…化け物だって言われた。」

唇を噛む静雄の表情は涙をこらえているようにも見える。
化け物。
確かに静雄の規格外の力をまざまざと目の前で見せつけられたら、そう思ってしまうかもしれない。錯乱していたのなら尚更だ。
臨也はゆっくりたちあがり、静雄の金の髪を先ほど本にしたように撫でた。静雄は拒まず、それを受け入れる。

「…君は、化け物なんかじゃないよ。」

物語を読むように臨也はいった。

「君は俺にとってのたった一人だ。」

慈しむように、愛おしむように、臨也は静雄の髪を梳く。

「シズちゃんは?」

「…あんたは、ずるい、っす。」

もそりと静雄が身じろいだ。臨也は笑む。

「当たり前じゃない。だって俺はシズちゃんをおとしたいんだもん。弱ってるときに優しくするのは当たり前でしょ」

「…挿れられる側とは思えない台詞…すね」

「そう?もっと可愛い方がシズちゃんの好み?ね、ほら、こっちみて?」

臨也に導かれ、ゆっくりと視線を臨也へ移動させる。臨也は妖艶に笑い、額にキスをした。離した後に、人差し指で静雄の唇をなぞる。

「…俺はシズちゃんが好きだよ。シズちゃんに抱かれたい。」

蠱惑的な呟きは本の海へ消えた。






よく見かける
精神的に臨静で肉体的に静臨を目指したのですが…
私には向かないみたいです
やっぱりげろあま静臨の方が書きやすい…


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