酷い有り様だった。 言葉では形容しきれない惨状だった。 ただ灰色の部屋の隅に座り込む臨也の生白い肌にのこった痕だけがいやに現実的だった。 「臨也、?」 呼ぶと、細い肩がぴくんと揺れた。ゆるゆると頭が持ち上がる。 空虚な赤い瞳が俺をとらえ、その赤は直ぐに歪んだ。 「シズちゃっ…、」 「っ、臨也っ!」 ぼろぼろ堰を切ったように流れ出す涙は臨也の顔に付着した汚れを流していく。俺は臨也の冷たい肩を抱き、小さい体を持ち上げた。 ひく、としゃくりあげ、臨也は、シズちゃん、ダメだよ、と涙声で言った。文章にならないぶつ切りの言葉を臨也は俺にすがりつきながら呟く。 「だめだ、俺、汚いよ…やだ、やだやだやだ。嫌だよ、シズちゃん…お願い、お願いだからっ…捨てないで…嫌いに、ならないで…」 最後は消え入るような声音だった。言い切って気が抜けたのか、臨也は一筋涙を流すと、ゆっくりと瞳を閉じた。 # 大急ぎで臨也を自宅へ運び、ゆっくりとベッドに寝かせてやる。すうすう眠る臨也は時折表情を歪ませ、小さく呻いた。 額に口付け、濡らしたタオルで体を拭いてやる。痛々しい痣や打ち身がいくつも臨也の白い肌にできていた。 畜生。全員、ぶっ殺してやる。 臨也をこんな風にした相手に憤慨しながら、しかし静雄は思った。どうして俺は臨也を守ってやれなかったのか。 自分の不甲斐なさに腹が立つ。ぐっとタオルを握りしめると、水滴が滴り落ち、冷たさに臨也が瞳を開いた。 ぼんやりと開けられた瞳で臨也は俺を見上げると、くにゃりと微笑んだ。首に細い腕が回され、弱く引き寄せられる。臨也の鎖骨あたりに顔を埋めると、臨也が耳元で囁いた。 「シズちゃん、抱いて。」 驚き、顔をあげようとするが、臨也の腕に小さく力が込められたので留まる。臨也の表情は読めないが、震えて怯えているのは確かだった。俺はゆっくりと起き上がり、顔をくしゃくしゃにして泣く臨也の涙を拭う。 「…シズちゃん、俺、汚い?もう、抱きたく、ない…?」 震える唇で臨也は問う。俺は返事の代わりに、血が滲むそこに深く口づけた。 # 「っあ、んうっ…あ、シズちゃ、っ、」 ゆるやかに勃ちあがった臨也自身に口付け、音をたてて吸う。涙目になった臨也が赤い頬を更に朱に染めた。背中を丸めて俺の頭を抱きかかえ、消え入るような声で喘ぐ。 「シズちゃん、シズちゃ、あ、っ、…ふ、」 「…臨也、ほかどこ触られた。」 出来るだけ優しく問いかけると、臨也は小さく身じろぎ、足、と囁いた。 他の誰かが臨也に触れて、臨也のこの乱れた姿を見たと思うだけで悪寒が走る。 すべやかな臨也の膝に口付け、太ももをさする。ひくりと震える体が普段より敏感なのは、臨也が誰かにやられた行為の所為であるのか。それならば。 「っ、あ、あっ、シズちゃん、だめ、そこ、まだ、汚っ…!」 「汚くねえよ…。お前に汚ねえ場所なんかあるはずねえだろ。」 俺がそれを塗り替えてやるまでだ。 ベッドの近くに置いてあったローションを適度に流し、手のひらで温める。 とろけたそれを優しく後孔に塗り込むと、臨也が短く息をのんだ。 「ひっ…う、俺、嫌だって、言った、んだっ…」 「知ってるよ。」 「でも、あいつら、やめなくてっ…、それでっ…!」 「知ってる…もう喋んな。」 口づけると、臨也はさらに顔を歪ませ、シズちゃん、綺麗にして、あいつらを消して、と泣いた。 滑る後孔に指を挿入し、中をかき混ぜる。生暖かい白濁液をかきだすと、臨也はかたかたと震えた。 「臨也、愛してる。…いれるぞ」 「ん、ん…、シズちゃん」 熱いそこに自身をあてがい、ゆっくりとさしいれる。震える体を手繰り寄せ、頬の涙を舐めた。臨也の鼻声はいつの間にか甘く甲高いそれへと変化していた。 「ひぅっ、あっ、ああん、っ…すき、シズちゃんとが、すきっ…シズちゃん以外、や、だぁっ、」 「臨也、俺も、だっ…、もう絶対、俺以外に、お前を触らせたりしねえからっ…。」 頭を撫でる。 臨也のこの記憶は一生消えないだろう。ならば。 とにかく今は俺が出来る限りで、こいつの中の毒を掻きだしてやろう。そうして、思い切り愛してやろう。 こいつをこんな風にした奴らのことは、ゆっくり考えて、それで、臨也の預かり知らぬところで、殺してやろう。 難産でし…た… もっとどろっどろの甘々になる予定だったんですが…お清めえっちはいつかリトライしたいです。 リクエストありがとうございました! 遅くなってすいません。 |