俺に抱かれながらあーだこーだくっちゃべっていた臨也が、突然黙った。 見るととろんとした目を擦っている。幽は臨也の小さい手を掴み、こすっちゃだめですよと言った。 「おい、眠いのか。」 「んー…」 「寝んなよ、てめえの家の鍵なんざ持ってねえんだからな。ドア壊されてもいいんならいいけどよ。」 「壊さないでよ、…」 うっすら開いていた瞳は完全に閉じられた。 「寝ちゃったね、臨也さん」 幽は微笑を浮かべ、臨也の髪を撫でる。柔らかい猫毛がさらりと頬を流れて落ちた。 「あー…寝ちまいやがって…。どうすんだよ。」 「つれて帰ればいいんじゃない?兄さんの家。」 指で髪を弄る幽をなんとも言えない気分で見る。やっぱりそうだ。幽の好きな奴っつーのは、 「…兄さん今、俺の好きな人は臨也さんだって思ったでしょ。」 「な…っ、…」 驚いて情けない声がでた。幽が鋭いのは昔からだが、こんな風に核心をつかれるとは思ってもいなかった。 「兄さんは顔にでるよね。」 ふ、と笑った幽を軽く戒める。 「…それで、どうなんだよ、結局のところはよ。」 「…兄さんはどうなの?」 思いもよらない切り返しに言葉が詰まる。何も言わない俺を幽はぼんやりと見つめ、俺は好きだよ、と呟いた。 「俺は臨也さんが好きだよ。」 「…そうか、」 あまりに真っ直ぐな視線に少したじろぐ。胸の奥が燃えるように熱い。小さい頃から俺の隣にいて歩いてくれた幽にこんな感情を持ってしまう自分に嫌気がさした。 「兄さんが臨也さんを好きなことも、知ってるよ。」 幽はぽつりと言った。夕焼けが黒い髪を照らす。 「いや、俺は…、」 「兄さん。」 「……、あー、畜生…。まさか幽と争うなんてなあ…。」 「俺も思ってもなかったよ。兄さんはもっと清純で年上な人が好みだと思ってた。」 ふふ、と笑う幽になんとなくむず痒い気分になる。そう言えば、幽とこんな風に話すのは久々だ。色恋沙汰の話しなんて初めてかもしれない。 「あーまあ確かに、自分でもなんでこいつに惚れてんのか分かんねえわ。」 「へえ、そうなんだ。…兄さん。」 「あ?」 「モタモタしてたら、俺が臨也さん貰っちゃうからね。覚悟しといてよ。」 「…おお。」 うん、それだけ。幽は頷くと、また臨也の髪を梳いた。 # なにがどうしてこうなったのか。俺は一体誰でこいつらは誰でそれでなんで裸で腕が俺の腹の上と頭の下にあって安らかな寝顔を浮かべているんだ。 落ち着こう、一度落ち着こう。 俺は折原臨也で新宿に住んでる素敵で無敵な情報屋さんで永遠の21歳。 右で寝てるのは俺の宿敵で怪物みたいな怪力の持ち主のシズちゃんこと平和島静雄。 左で寝てるのはそのシズちゃんの弟で人気俳優の羽島幽平こと平和島幽。 俺は昨日新羅に一服もられて子供になった。新宿の家まで送ると言って聞かない幽くんに根負けして送ってもらうことにした。途中で帝人くん達に会ってあまりにも屈辱的だったから抱っこしてもらうことにした。(新羅の薬の所為で頭まで幼児化していたのかもしれない。) それで…その後の記憶は、ない。ただシズちゃんの煙草の匂いと、幽くんの指の感触がうっすらと思い出せるだけだ。 隣でシズちゃんが身じろぎをした。ぎくりと肩が跳ねる。その衝撃でか、幽くんも小さく唸る。 ああ最悪だ。 とにかく俺は叫びたい。 なにがどうしてこうなった。 これにてどうしてこうなった!は終了です。 遅くなって申し訳ありません。 リクエストありがとうございました! |