小説 | ナノ


からりと晴れた太陽の下で見るシズちゃんは、きらきらしていて、直視できなかった。ソーダ水越しに見てみると、しゅわしゅわの泡でシズちゃんが霞んじゃって、泣きそうになった。あのときシズちゃんは何を見てたのかな。
来神を卒業しても、シズちゃんは俺のそばに居てくれた。俺のことを好きだといってくれた。
いつかはきっと一人になるんだろう。それでも、それだからこそ、幸せだ。



薄暗くなった道で偶然シズちゃんと会った。2人共帰路の途中だったようで、シズちゃんは俺の手を掴むと家へとゆっくり歩く。

「シズちゃん、夕飯、何にしようか。」

「んー、手前が食いたいもんでいいぜ。」

「俺はシズちゃんが食べたいものでいいよ。」

シズちゃんは優しい。声だって体温だって、シズちゃんはなんだって優しい。こうやって歩幅をあわせてくれるのだって、凄く嬉しい。

「じゃあ貝の蒸し焼きにしようか。今日は晴れだし、月がきっと綺麗だよ。それで、お酒を飲もうよ。」

「いいな、それ。」

そういって笑って、シズちゃんはくしゃりと俺をなでた。その一つ一つの仕草だって、俺は忘れないように、深く深く胸に刻み込む。俺が思いだせなくなる前に、できるだけたくさん、シズちゃんを覚えておきたい。
シズちゃんと居るこの空間を忘れたくない。だから俺はこの街が好きだ。ここにいると、たくさんシズちゃんを感じられるから。
シズちゃんと通った道、シズちゃんと入った店、シズちゃんとキスをした路地。
何もかもが穏やかに、たおやかに、時を進めていく。
時間が止まってほしいと思うときもある。だけど、やっぱり進んでいて欲しい。シズちゃんと永遠になれたら、それはそれできっと嬉しいだろう。だけれど、違うのだ。
こうして2人でゆっくりと年をとっていきたいのだ。

「…臨也」

「んー?」

「……」

「え、無言?」

笑う。シズちゃんの頬は少し赤い。なんだよ、こっちまで恥ずかしいじゃんか。

「シズちゃん」

「あ?」

「2人でゆっくりお酒呑もうね。」

「…ああ。」

月は回る。綺麗だ。
こうしてシズちゃんといると、時間は優しいのだ。









のうぜんかつら…をイメージして


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