小説 | ナノ


消毒液の独特の香りが染み付いたベッド。見上げれば、赤くなったシズちゃんの顔。その顔が可愛くて、俺はシズちゃんの首に腕を回して、その痛んだ金髪を撫でた。



ホワイト・ラブ






「ん、ぁっ…」

自分の出した甘い声に驚く。少しは出るだろうと思っていたけど、まさかこんな声がでるとは。覆い被さるようにしているシズちゃんは、俺が反応するたびに少し嬉しそうにする。激しくならないように抑えているんだろう、触る手はひどく優しい。

「あ、シズちゃん、まっ、て、」

ゆっくりと既に熱を持った下半身に手を滑らせるシズちゃんを制止すると、シズちゃんが俺以上に赤くなった顔でこっちをみた。すごくかわいい。金髪を梳いて、頭を撫でると、シズちゃんは困ったような顔をした。やっぱり可愛くて、少しからかいたい気分になった。

「あの、ね、知ってると思うけど、男は勝手に濡れないからね。」

「え、」

シズちゃんの動きが固まる。やっぱ知らなかったか。
まあ俺は、シズちゃんに少しくらい痛くされても平気だけど。きっとその後シズちゃんすごく罪悪感とか感じちゃいそうだし。それに、やっぱりするなら気持ちいいほうがいい。

「あ、入れちゃえばまあなんとかなるけど、全部入るまでが辛いから…あ、机の上に軟膏がのってる筈だから、」

「わかった。」

シズちゃんは早く立ち上がりカーテンを開けた。数秒のあと、すぐに戻ってくる。手には言われた通り軟膏が握られていた。ライオンっていうか、おっきな犬みたいだ。
よくできました、と笑ったら嫌そうな顔をされた。そのあと子供扱いすんな、と呟く。

「子供扱いすんなって言われてもなー。だって俺からしたらシズちゃんなんてまだまだ、あ、まって、ひ、あっ…!」

「うるせえ。挑発したてめえが悪い。」

唐突にズボンの上から股間を握られ、体が跳ねる。シズちゃんは慣れない手つきでベルトを外すと、パンツごとズボンを下げた。羞恥心に顔が熱くなる。
インナーは託しあげられ、ズボンはさげられ、どうにか纏っているのは薄い白衣一枚のように感じる。

「…すげえ、白い。」

「…うっさい、童貞。みんなばか。」

シズちゃんの無遠慮な視線は更に俺の羞恥心を煽った。顔が火がついたように熱い。頭の中がぐるぐる回って、言葉は何も見つからない。
白衣の袖を握って引き寄せ、顔を覆う。それに気づいたシズちゃんが指にキスをして手を取った。

「隠すなよ。」

「……、むり、」

シズちゃんが顔中にキスをする。恥ずかしさに涙がでそうだ。口づけるたびにシズちゃんはかわいいかわいいと呟くものだから、もうどうしようもない。
股間をやわやわ扱いていた手がゆっくりと双壁を押し開き、長い指が後孔に触れた。指に塗ってあった軟膏はひんやりと冷たい。唇に深いキスをすると、シズちゃんは指を後孔の中へと挿入する。圧迫感に身体が包まれる。

「ん、んんぅ…ひ、う」

「…わりぃ…いてぇか?」

呻くと、シズちゃんの指はぴたりと動きを止めた。だいじょうぶ、だから。

「だいじょうぶ、シズちゃん。いいから、も、入れて?」

「けど、つれぇんだろ?もうちょっと慣らした方が…」

「いい、早く、もっとシズちゃんのこと、知りたい、から…、それに、」

それにシズちゃんはもう限界でしょう?
そう言うと、シズちゃんは苦しいような嬉しいようななんとも言えない顔をして、わるい、と言った。ほんとうに、かわいいな、シズちゃん。

「ん、ぐぅっ…い、」

いたい、と言いそうになって慌てて唇を噛む。やばいやばい。
シズちゃんの熱すぎるそれはやっぱりいくら軟膏を塗ったからってすんなり入るはずもなく。ぎちぎちと引きつるような感覚は否めない。深く呼吸をして、ゆっくりと埋め込まれる熱を感じる。ああ、もう逃げられない。
ぼんやりとそんなことを考えていると、どうやらやっと全部入ったらしい。シズちゃんは浅く息を吐き、大丈夫か、と聞いた。きっとシズちゃんもすっごくきついんだろう。当たり前だ。なんてったって俺は後ろは勿論処女だし、シズちゃんなんか童貞だ。

「だい、じょ、ぶっ…、動いて、シズちゃ…ん、」

どうにか言葉を絞り出す。情けない声だ。ゆっくりとシズちゃんは律動を始めた。保健室の古いベッドがぎしぎしとしなる。
シズちゃんの背中に腕をまわし、抱き寄せる。ああ、爪を切っておけばよかった。

「ん、あ、あ、ひぅ…、あッ、!」

ぐり、とシズちゃんがいいところを掠め、声が上擦る。それに気づいたシズちゃんはがつがつとそこを突いてきた。頭がおかしくなりそうだ。

「ひ、あん、あッ、シズちゃ、やぁっ、ふあ、」

「臨也、すげえ、かわいい、」

は、は、とシズちゃんの息が首にかかる。どうやら止まらなくなったようだ。首筋にちくりと痛みが走った。
シズちゃんのばか、見えるところにキスマークなんかして。
そんな戒めさえも忘れ去り、俺は夢中でシズちゃんの頭を抱いた。溢れかえる感情は止められなくて、シズちゃんで頭がいっぱいで、シズちゃんはすごくかわいくて、きもちよくて、うれしくて、それで、




#



「うわ、白衣ベトベト。」

「…わるい。」

その後どっちが先にイったかはわからないけど、兎に角二人してバカみたいに達した。
最後のほうはもう俺は半分意識がなくて、気がついたら辺りは暗くなっていた。
隣で寝ていたシズちゃんを起こすと、今まで見たことないくらい柔らかく微笑んで俺を抱きしめた。
上半身を起こしてベッドの脇に落ちていた白衣を拾い上げると、それがどちらのものかわからない精液で濡れていた。悪態をつくと、シズちゃんがもぞりと動く。

「本当、シズちゃん絶倫すぎだよ。俺当分精液出ない気がするよ。」

「…悪かったっつってんだろ。」

「うーわーシズちゃん横暴ー。折原先生傷ついたー。」

大袈裟にため息をついてやると、今までそっぽを向いていたシズちゃんが急にこっちを向いた。そういえば、シズちゃんがこんな至近距離にいるなんて珍しい。

「…何、その顔。」

じっとこちらを見つめてくるシズちゃんに俺のほうがたじろいでしまう。

「てめえが、」

「は?、んう、」

かわいいのが悪い、とか、なんなの本当にシズちゃんのくせに。いつの間にそんな口説き文句覚えたのさ。
満更でもない自分がいるのを感じて、やっぱりシズちゃんはライオンだと思った。





そうして夜はふけていく。







これにてホワイト・ラブは終了です。お付き合いくださりありがとうございました。


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