※妖孤静雄×巫女臨也 折原臨也はお祓いで名の知れた神社の一人息子だ。 強い霊力…例えば常人には見えないものが見える、そういう類のものと戦う…を持った両親の下で幼い頃から鍛え上げられ、今では両親を凌ぐほどの祓い屋となった。 彼の類い希なる才能と、この世のものとは思えない美しい容姿で仕事の依頼は後を絶たない。 しかし臨也はもっぱら神社に籠もりっきりで、祓い屋の仕事は殆ど受けようとはしなかった。 一度出過ぎた取材を臨也に試みようとしたレポーターが何かの力で持ち上げられ放り投げられたことが大きく報道され、そういった強引な取材や依頼は無くなったという。 そうして、臨也は今日という日も、一人境内の掃き掃除をしていた。 散った桜を掃きながら臨也は思う。そろそろだ。 花びらを掃いていた手を止めると、一陣の風が臨也の赤い巫女装束を巻き上げた。集めた桜は無残に飛び散り、宙を舞う途中で形を薄桃色の花びらから橙の紅葉へと変えていく。 辺りが橙に染まったなか、ある一カ所だけがぼんやりと黒い。 紅葉の中で浮き出たように黒いそこには、真っ白な九つの尻尾とぴんと尖った耳を持つ、紅葉のような髪の男が立っていた。黒い着物は煽られることなく、まっすぐと垂れ下がっている。 「シズちゃん。今日は早いね。」 箒をぽいと投げ捨て、黒い何かに臨也は抱きついた。抱きつかれた黒は、臨也の髪についた紅葉を払いのけ、くしゃりと撫でる。視線は柔らかい。 白い耳は垂れ、九尾がぱたんと揺れた。 黒の正体は平和島静雄という。元は人間だったようだが、今は神社を守る臨也のために使い魔の妖孤となっていた。そこそこ名の知れたお稲荷さんである。 今でこそ丸くなったが、臨也の使い魔となる前はその強大な力の制御方法すら知らず、周囲を傷つけては自己嫌悪にひたるループを繰り返していた。そんななかで自分の力を押さえ込める臨也と出会い、静雄は臨也の使い魔になることを決めた。 「…臨也てめえ、朝飯食ったか?」 抱きついてきた体のあまりの軽さに問うと、臨也は案の定答えを濁した。 「んーうん…ん、うん?」 「食ってねえな…そんな状態でなんかあったらどうにもならねえだろが。」 呆れたように言うと、臨也は少し笑った。 「そんなときはシズちゃんが助けてくれるじゃん。」 そういう問題じゃねえ、という言葉は飲み込まれた。 臨也は静雄の胸元に手をつき、ゆっくりと瞳を閉じる。巫女装束ははらはらと風になびき、臨也の真っ白い足首を露わにした。 漆黒の髪を指で梳き、優しく口づける。触れるだけのそれに臨也は少々不満そうだったが、静雄のやんわりとした微笑に絆され、胸に体を預けた。 「シズちゃん。」 「あ?」 「お腹すいた。」 「…なんか作ってやるよ。」 やった、と喜ぶ臨也を見ながら、静雄はどっちが主人かわかんねえな、と胸の内で呟いたのだった。 書きたかったネタがかけてうれしい。 これなんて俺得^^ |