小説 | ナノ



俺はこの池袋最強をつくる全てのものが大好きだ。
細いのに筋肉がついている体だとか少し痛んだ金髪だとかニヒルな笑みを浮かべている唇だとか、兎に角彼が好きで好きで堪らない。
そうやって彼に告げると、彼はいつも少し困ったように笑った。ありがとな、と言って額や頬にキスをしてくれた。俺はそんなとき、嬉しいくせに涙が止まらなくなるのだ。

「シズちゃん、すき。だい、すきっ…」

性懲りもなくぼろぼろ溢れ出す涙は止めようがなくて、シズちゃんが目の前でおろおろしていて、俺は申し訳なくて止めようとするのに、涙腺はしっかり俺に逆らって涙を流しつづける。
止まらない涙を流す目を手の甲でこすると、シズちゃんは壊れ物を扱うように(これは逆効果で更に涙がでてくる)俺の手を握って、指にキスをしてくれる。
俺みたいなやつの汚い指にシズちゃんの綺麗な唇がくっついて、そこが熱を持ったように熱くなる。

「…シズちゃ、汚い、から」

「汚くねえよ。」

汚くなんてねえ。繰り返すと、シズちゃんはきつく俺を抱きしめた。



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臨也は俺が優しくすると、ぼろぼろ涙を流して泣き出す。どうにか涙を止めたくて瞼にキスをすると、水は更にたくさん流れはじめた。柔らかい猫毛を撫でる。さらさら滑るそれは心地がよい。
臨也が泣くようになったのは高校を卒業した日だった。それまで涙など見たことがなかった。卒業式の朝、俺の家まで来ていた臨也は何も言わず俺に抱きつき、無言で泣いた。頭を撫でると更に激しく泣き出した。

「…っ、ぅ」

「…臨也」

「…シズちゃん、いかないで。いなく、ならないで。…一人に、しないで。」

絞りだすように発せられた言葉に俺は思わず臨也をだきしめた。
柔らかく震える睫に唇を押し付け、涙を舐めとる。

「いかねえよ。どこにもいかねえ。手前を絶対一人にはしねえから。」

囁いてやると、臨也はぱちぱち瞳を瞬かせ、とろけるような微笑を浮かべたのだった。





臨也を甘やかす静雄と泣き虫臨也
レイニーデイズ様に提出させていただきました。


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