小説 | ナノ


※先天性女体化臨也=臨美



朝起きたら、あるはずのものがなくなって、ないはずのものがあった。

「……は?」

なにこれ、なんだこれ。
混乱する頭を抱えて、私は薄手のパジャマの上から体を触る。目立たなかったとはいえ昨夜まで一応あった膨らみが消えていた。腕や肩は細いままだが、しかしどう考えても一夜でつくはずがない量の筋肉がついている。柔らかな曲線ではなく硬い直線。
ゆっくりと下半身に手を滑らせ、股の間を触る。…ある。確実に、ある。

「ちょっ…とこれ…え、これ………」

信じられないことだが男になってしまったようだ。いやようだじゃすまないけど。(昨日何かしたっけ)
目を閉じて昨日の記憶を探る。昨日は池袋に仕事があったから行ったら案の定シズちゃんに見つかっていつもみたいに素直になれなくてナイフ腹にぶっさして逃げて、そしたら転んだから新羅の家に行ってシズちゃんの愚痴を語って…ああ駄目だいつもどうりすぎる。

取りあえず波江に今日は休みだとメールを送りベッドから抜け出す。視界が普段より高くてなんとなく不安定な気分になる。

「新羅…ならわかるかな…。」

タンスを開けて気がついた。着られる服がない。タンスの中身は当たり前だが女物ばかりだ。私は深く深く溜め息をつき、新羅に電話をかけた。



#


昨日の臨美の態度が気になり、俺は朝っぱらからセルティに相談するために新羅のマンションに来ていた。
セルティは俺の話をいつも熱心に聞いてくれる。臨美とは同性同士で仲がいいと前新羅に聞いたことがあったし良い相談相手なのだ。
新羅のマンションのドアの前でいきなり行くのはまずいだろうと思いたちセルティにメールを送ると、すぐに返事がきた。

すまない、先客が来るらしいんだ。

先客?こんな朝から診断があるのか?
首を捻っていると、エレベーターがちん、と到着を知らせる音を鳴らした。
中から黒いファーのついた見覚えのあるコートがひょっこりとでてきた。コートはきょときょと周りを見回し、俺を見つけるとぎくんと肩を跳ねさせた。

「…臨美?」

「っ…し、シズちゃん…なんでここに…、」

声をかけるとそいつは明らかに動揺して言った。声は聞いたことのない男のものだ。だがしかし。俺をシズちゃんなどと不愉快な呼び方をするのはあの情報屋しかいない。

「お前…のぞみ」

「やあ臨美、待ってたよ!」

俺の疑問は完膚無きまでに新羅の発した声と勢いよく開かれたドアによって消し去られたのだった。





つづきます
両片思い難しい(´・ω・`)

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