小説 | ナノ


※シズイザ前提の九十九屋×臨也



騙された。しかも、絶対に騙されたくない相手に。
いつもどうり、首尾よく運んでいたのだ。普通すぎてつまらないくらいだったはずだ。ネットで死にたいなんて言ってる人間に声をかけて誘い出す。適当に観察したら、後は運び屋なんかにまかせてさようなら。簡単なことだった筈なのだ。

「やぁ」

第一声はそれだった。軽く、顔見知りにでも会ったような声だった。
咄嗟に振り返った俺は一瞬そいつが誰か分からなかった。しかし次の言葉で気付かされる。そいつはあの男だと。

「リアルでは初めましてだな、折原臨也。一応名前を言っておくと、俺は九十九屋真一だ。」

普通だった。どこまでも平凡で普遍的、特殊の欠片もないような容姿だった。
ただその瞳は、周囲から逸脱したなにかをもっていた。

「九十九屋…なんでお前がここにいる。」

どうにか声が震えないように眼前の九十九屋を睨んだ。九十九屋は人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべると言った。

「賢い君なら解るだろう。つーくんとは俺のことだ。」

ふ、と鼻で笑う九十九屋に苛つきが倍増する。チャットでもそうだが、俺はこの男が気に入らない。

「そんなことは聞いてない。なんでわざわざこんなまねして俺を呼び出したのかって聞いてるんだ。」

語尾を強めると、肩をすくめて怒るなよ、と呆れたように発した。そして一歩こちらに近づき、やっぱり少し笑って言った。

「折原臨也、君、大嫌いなんだよな?静雄のこと。」

何を言い出すかと思いきや、そんな分かりきったことを聞いてきたので一瞬拍子抜けをした。客観的に俺とシズちゃんを見たことあるなら、誰だって解るだろうし、まして九十九屋は池袋を舞台にした本を出版してるのだ。俺とシズちゃんは(表面上)殺し合うほどに嫌いあっている。

「ああ、嫌いだね。俺はシズちゃんが大嫌いだ。」

「成る程。だったら俺の情報は間違っていたと言うわけだ。」

ふむ、と頷き、九十九屋は携帯を取り出しなにやら作業を始めた。何回かプッシュし、画面をこちらに向ける。サウンドレコーダーのようだ。スタートボタンを押す。

「…シズちゃ、……やぁっ…ん、あっ」

「何が嫌なんだよ。こんなよがってるくせしてよ。」

聞こえてきた声に背筋が凍った。どう考えてもその声は自分と恋人のものだ。

「お前、なんでっ…!」

「なんでじゃなくてどうやってだろう。君の住所を俺は知っている。それが答えだ。それで折原。」

九十九屋がまた一歩こちらに近づく。知らぬ間に壁際に追い込められ、逃げられない。

「んだよ、この、変態野郎…!」

声が震える。屈辱的だった。これから何を要求されるのか考えたくもなかった。

「君は静雄を守ってやりたいだろうし、君だってこんな事実隠しておきたいだろ?」

九十九屋が笑う。三日月のように口が歪む。

「それならばやることは決まってるだろ?」

九十九屋は独裁者のように笑った。






つくいざを布教したいです…
がしかし九十九屋さんキャラわかんない\(^o^)/


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