はあ、と大きく溜め息をつき、俺は屋上から校庭を見下ろした。 屋上ラプソディ 生徒達は今日も元気に部活動に勤しんでいる。普段ならこの時間は怪我が多いし、保健医の俺は保健室にいなくてはならない。だけどいくら人間を愛してて人間観察のために保険医になったからと言って、俺が疲労を感じないわけではない。むしろあまり体力があるほうではない。 生徒の声をぼんやり聞きながら大分吸っていなかった煙草をポケットから取り出した。くわえてからライターを持っていないことに気づき、横に視線を流すと、屋上の扉が開くのが見えた。 「あれ、シズちゃん。」 くわえていた煙草を指で持つと、俺は現れた金髪の彼に声をかけた。その顔は夕日のせいか、赤い。 「どうしたの。シズちゃん部活してなかったよね。」 「…」 シズちゃんは無言でこちらに歩いてくる。俺の半歩手前でシズちゃんは止まり、指で挟んでいた煙草を奪った。それをそのまま自分でくわえる。 「ちょっとシズちゃん?」 眉をひそめた俺をシズちゃんは流し目で一瞥し、持っていたライターで煙草に火をつけた。 「ちょっと…俺の前で煙草吸わないでよ。」 奪ってやろうとした手は虚しく空をかいた。その手首をシズちゃんは掴み、自分の方へ引き寄せる。突然のことで足は踏ん張りがきかず、俺はそのままシズちゃんの胸へと倒れ込んだ。 「シズちゃん、おふざけにしては度が過ぎるよ。」 後ろ手でシズちゃんの胸板を叩くが、シズちゃんはまったく動じず腹に腕を回してきた。そのままがっちりと固定されてしまう。こうなってはどうやっても抜け出せない。俺は逃げるのを諦め、そのままシズちゃんの胸にもたれかかる。きっと後ろからみたら俺隠れてるんだろうな。 シズちゃんの体温は高くて、心地よい。かぎなれたシズちゃんの香りを吸い込む。シズちゃんは煙草を吸うくせに、まったく臭いがしない。 「…臨也、ありがと、な」 突然なんの脈略もなくぼそりと呟かれた言葉は聞き取れず、俺は疑問符を発した。シズちゃんは少し身じろぎしたあと、やっぱり聞き取りづらい声で話し始めた。 「お前だろ?俺の喧嘩隠蔽してんの。普通なら退学処分になってもおかしくねえのに…」 「…シズちゃんは売られた喧嘩を買っただけでしょ。…それに、シズちゃんがいない学校なんてつまんないもん。」 笑っていってやるとシズちゃんは何か言おうとして、口を閉じた。言葉のかわりに腕に込められた力が強くなった。 「臨也」 シズちゃんが囁くように俺の名前を呼んだ。シズちゃんの鼓動が背を通して伝わってくる。早く脈打つそれは俺の鼓動と重なる。 「臨也、俺はお前が、」 好きなんだ。 と。耳元で囁かれた言葉に、俺の心臓はシズちゃんを追い越すほど早く脈打った。 数年越しの思いを君に やっと告白しました。 次からはめくるめく保健室えっち…のはず… |