小説 | ナノ




気だるい光が差し込む、狭いアパートの一室で、静雄はゆっくりと覚醒した。何度か瞬きをするうちに、だんだんと視界と頭がクリアになっていくのを感じる。昨夜から隣にあったはずの温もりはすでにベッドから抜け出したようで、臨也の形を残した布団だけがあった。目をこすり、ゆっくりと上半身をおこす、と、

「あ、ああああ、あー…」

洗面台のほうから、臨也の小さな悲鳴ともつかない声が聞こえてきた。何事かとそちらをぼーっとみていると、臨也が焦点の定まっていない瞳でこちらにひょっこりと顔を出した。声をかけようとして、臨也の様子がおかしいことに気がつく。目があっているのに、どこか遠くを見つめるような目でこちらをみている。眉をひそめてその様子を観察していると、おぼつかない足取りでゆっくりと歩み寄ってきた。

「…シズちゃん?」

「あ?」

ベッドの近くまできてもやはり定まらない焦点で臨也はぼんやりと遠くをみるような目で静雄の名前を呼んだ。答えてやると、安心した表情になって、またゆっくりと歩き、やっとベッドの端に腰をおろした。掛け布団を引き寄せ、臨也は不機嫌そうに呟いた。

「コンタクト流しちゃって、なんにも見えない。まだあれ、二日しかつかってないのに。」

「あほか。…どこまでなら見えてんだ?」

ゆっくりと臨也に顔を近づけていく静雄。距離30センチ。

「見えないよ、」

臨也は言うと、静雄がいるであろう方向に向き直った。また静雄が近づく。20センチ。

「…金髪、が、ぼやっと見えるくらい?」

首を傾げながら言う。目をこすろうとした手を静雄は優しく降ろさせると、また少し近づいた。10センチ。

「…見え、た、ん、」

臨也はゆっくりと目を瞑ると、静雄の優しく暖かいキスを受け入れた。
暖かな春の日差しが部屋に差し込み、朝を告げている。唇をゆっくり離しながら、吐息が掛かるような距離で囁いた。

「あいしてる、臨也。」

「ん、俺も、シズちゃん。」






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甘い朝、みたいなのを目指しました。
2人共低血圧で、とくにセックスした次の日はふたりでだらだらと昼まですごしたらいいんじゃないでしょうか。
シズイザを書きだしてわかったことは、私が情事後が好きだということ。


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