シズちゃんとなんだかんだで一線越えた。なんだかんだで付き合っている。考えられないだろう、高校生の俺。 そのなんだかんだな関係も、もう一年がすぎた。なんだかんだのこの関係にも慣れてきて、最近は連絡なしでお互いの部屋を行き来したりしてる。合鍵作ったし。ただ最近俺の仕事が立て込んでて、ついでにシズちゃんも急がしいらしく、池袋行っても会えないし、部屋に行く時間がない。おかげであんまり会えない。まあ、仕様がないけどさ。 事務所の、前シズちゃんが持ち上げてぶっ壊しそうになったソファーに腰掛けて、明日までに仕事を進めていた。身が入らない、とか言ってられない。俺だって商売だし。金がなきゃ愛を育んでなんかいけないってのが俺の持論である。まあそんなこと行ったらシズちゃんは怒るだろうけど。カタカタとキーボードな鳴らしていると、なんとなく口寂しい気分になった。俺はシズちゃんみたいにヘビースモーカーじゃないけど、煙草すえないわけじゃない。ただ、気分じゃない。デスクをあさってみたが、ガムどころか飴さえない。今から買いに行くのも面倒だなあ。ソファーに背を預けて、ふう、と息をつく。 天井を見上げて舌をだしたり、唇を噛んだりしていると、なんだか妙な気分になってきた。ここは事務所で、そんな気分になるものなんて一つもないはずなのに。それで目をつぶって、夢中で唇を噛んでみたり、舌で舐めてみたり、指で触ってみたりする。次第に、シズちゃんならこう、だとか、シズちゃんはこうすると喜ぶ、だとか思い初めて夢中になってくる。舌を突き出して、想像のシズちゃんの右の頬の内側に触れようとした。 「ん、あ!?」 舌を摘まれた。引っ込める事が出来なくなった舌に驚いて目を開けると、スーツを着崩したシズちゃんがすごい顔して覗き込んできた。舌をつままれたまま動けない俺。舌つまんだまま動かないシズちゃん。なにこれシュール。とか言ってる場合ではない。両手でシズちゃんの腕を掴んで引っ張ってみるが、そのままクレーンのように俺の舌を掴んだまま持ちあがって舌引っこ抜かれるかと思った。腕を離させるのは諦めて腹を殴ってみるが、悲しいかな、シズちゃんはびくともしない。それどころか掴んでいる指で器用に俺の舌を撫で始めた。やばい、よだれ、垂れる。 「ん、ん、へ!」 離せ、と睨みつけると、ようやっと指は離れていったが、代わりに口に突っ込まれた。声にならない叫びとともにげほげほ咳き込む俺にシズちゃんはにやっと笑った。むっかつくなあ、オイ! 「なにすんの!?俺の舌引っこ抜きたいわけ!?閻魔大王!?ああ、シズちゃんなら似合うかもね!」 「うっせえ。ほんとに引っこ抜きゃよかったなあ、臨也君?」 どか、っとソファーに座って、スーツの懐から煙草を取り出す、なんかむっとした。 「匂いつくからすわないでよ。…つか、なんでスーツきてんの?バーテン服は?」 指から煙草を奪い取ると心底嫌そうな顔で見られたがきにしない。だって俺がいるのにタバコ吸おうとするなんてありえないだろーが。と、と舌打ちして、シズちゃんは、事務所に用あったんだよ、と言った。 「なになに、まさかクビ!?とうとうクビ!?」 「ちっげえよノミ虫!社長の手伝いだっつの!」 シズちゃんはあたまをがしがしとかいて言った。なぁんだつまらない。クビだったら本格的にシズちゃんをヒモにしてやろうと思ってたのに。ちぇ、と舌打ちしてみると、文句あんのかコラと凄まれた。頬を掴まれて目を合わせられる。キスすんのかな、と思ったがシズちゃんはそれ以上アクションしてこないから、俺もじっとしていた。茶色の瞳を覗き込む。 「お前何してたんだ?さっき」 「さっき?」 「上向いて舌だしてよぉ…」 気が狂ったかと思ったぜ。そう言うシズちゃんの顔がおもしろくて笑うと、シズちゃんはムッとした。そんな顔でもイケメンだ。 「あれねえ。あれはさ…知りたい?」 じらしてみると、勿体ぶってんじゃねえよと鼻に噛みつかれた。あむあむと甘噛みしてくる。 「シズちゃんとのキス確かめてた。」 「あ?」 「一週間もキスしなかったから忘れそうだなあと思って」 きちんと答えたというのに、シズちゃんはなにもいわない。なんかいってよ、恥ずかしくなるじゃないか。仕返しにと俺も鼻に噛みついてみると、ようやっとシズちゃんが動いた。俺を抱き寄せて溜め息をつく。 「寂しかったなら電話しろよ…」 「電話じゃ足りなくなるからしない」 呆れたみたいな物言いだったから言い返すと、更に強く抱きしめられた。あー、とか間抜けな声をだして、シズちゃんが肩に額を押しつけてくる。 「明日お前仕事?」 「明日は休み」 「俺も。けど一応謝っとく。悪い」 「いやだ。明日言うこと何でも聞いてくれるなら、いい。」 聞いてやっから。そう言うか言わないかくらいでシズちゃんがキスをしてきたから、俺は右頬の内側へ舌を伸ばした。 やおい。あほっぽい臨也すき title/zinc |