小説 | ナノ


プリンをつくろう、と臨也が言い出した。
用意がいいことに臨也はどこからか二人分のエプロンを取り出し、少し大きいほうを俺におしつける。はやくはやくとせかされキッチンに立つ。横では臨也が腕まくりをしていて、俺は文句を言う暇もなく卵を四つ渡された。

「なんで急にプリンなんだよ…」
「いいじゃない。あ、シズちゃん、卵は二つはそのまま、残りは黄身だけ使うからね。」

はい、と渡されたボウルを受け取る。幽がでるテレビの音を背中で聞きながら、俺は慎重に卵を割った。(録画、してねえ)
臨也は電子レンジをいじったり、お湯をわかしたりしている。とかしたバターと牛乳を俺のもつボウルに加えると、今度は砂糖と水でなにか作りはじめた。落ちてくる髪を細い指で耳にかける仕草は最高だと思う。
昨日少し無理させちまったから、大丈夫かと心配していたが、やはり少し痛むようで臨也は腰を庇っていた。首筋にみえる赤い痕にほくそえむ。

「…?なに、シズちゃん。手とまってるよ?」

少し見すぎたみたいだ。怪訝そうな表情で俺を見上げた臨也に、腰は大丈夫かと尋ねてみたら、真っ赤になって蹴ってきた。

「ばかじゃないの、シズちゃんばかじゃないの、しね。…おかしなこと考えてないでさっさと卵やっちゃってよ。」

つん、と目をそらすと臨也はおぼつかない足取りでふらふらと冷蔵庫にもたれかかった。露になったうなじはほんのり赤く、抱きしめて噛み付きたい衝動に駆られたが我慢した。(多分やったら臨也は三日は目もあわせてくれない)
まだダメージをうけているらしい臨也はふらふらしながら沸騰したなべを掴もうとする。あぶねえな。やけどするぞ。

「貸せ。どうすんだ、これ」

横から鍋を取り上げると、臨也は目を丸くしたあと、また湯気がでるんじゃないかというほど赤くなった。これ、これに、とかなんとか言葉にならない声を発しながら渡してきた鉄板をうけとり湯を流し込む。耳まで赤い臨也は少しあせりながら熱いカラメルソースとプリン液をココットに流し込んだ。

「あとは、ひやすだけ、です」

お前が冷やされたほうがいいんじゃねえかと言うほど赤くなったままプリンを冷蔵庫におしこんで、臨也は俺の横を通り抜けるとソファーへ深く腰掛けた。







シズちゃんがおかしい。シズちゃんがすごくおかしい。
まずはじめに、幽くんのでてるテレビをみてる最中だというのにプリン作るっていったら簡単についてきた。次に、なんだか変なことばかり言う。しかも俺の反応みておもしろがってる(これはいつもかも)。すごい見てくる。やさしい。意味わかんない、意味わかんないけど、しぬほど恥ずかしい。
ソファーに沈んだ俺を追いかけてシズちゃんは隣に座ると、まだ続いていた幽くんの番組を見始めた。距離は人が一人座れるくらい。ちらりと隣を窺うと、なんかうれしそうな顔してた。つられてうれしい気分になったり…とかしてない!…シズちゃんには絶対言わない。

「プリンいつくえるんだ?」

視線に気付いたのかそう尋ねられて、声が上擦りそうになるのに絶えながら、三十分くらいあと、と答えた。
シズちゃんと作ったプリン、シズちゃんと一緒に食べる。
あらためて考えたらうれしくて、でも食べ終わってしまうのももったいないと思い始めて、プリン食べるよりもシズちゃんにくっつきたい、と、思った。
だからほんの少しだけ距離をつめてみた。ほんと少し。でもシズちゃんは気付かないで、テレビをみてる。ちょっとむっとなって、また少しだけ寄ったら、距離がほとんどゼロになった。
これはやばい。ばれる前に離れなきゃ。そっと腰を浮かそうとしたら、腕をやわらかくつかまれて、そのままシズちゃんのすぐ隣にまた座らされた。

「かわいいとこあるじゃねーか、臨也くん?そんなにくっつきたかったならはじめからそう言え」
「ち、ちが、う!」
「そうだろが…。素直じゃねえなあ。」

そういって肩を抱き寄せられて、耳元で名前なんて呼ばれたら、心臓もたない、どうしよう、でもしあわせ、はずかしい、いみわかんない、

「…素直じゃなくても、いいけどな」

しんでしまいそう。
一緒にプリンなんて、食べられたもんじゃない!

just life! all right!




ついったさんにてりくえすと!
Y//U//K//Iモチーフなしずいざ、のはずなんですがずいぶん曲と違うことに…!


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