小説 | ナノ


※静モブ表現あります






大事にしたいと思った。
愛してやりたいと、優しくしてやりたいと、幸せにしてやりたいと。思っていた。今だって、そう強く思っている。臨也が笑えば俺はうれしくなるし、泣いていれば、理由がしりたいし、もしそれが俺以外の原因だったなら、臨也をそうしたやつを殺してやりたいと思った。
だけれど、今、こいつが、臨也が泣いているのはほかでもない、俺が原因なんだ。
華奢で、触れたら壊れてしまいそうな肩を震わして、顔を手で覆って、俯いて。目をあわせてくれない。いつからだったか、臨也はまるで、俺を怖がるような、ひどく怯えたような目をするようになった。(違うだろ、)
本当はわかっているんだ。なんで臨也がそんな目をするのか。

触れることが怖かった。
そんな情けない理由だった。けれどそれはあまりにも俺には強すぎて、大きすぎる壁だった。急なことではないのだ。コップに水が溜まるように、砂時計の砂が下へ落ちていくように確実に、前から少しづつ溜まっていって、飽和状態になった。
俺が触れても、きっと臨也は怖がらないで、うれしそうに瞳を閉じるのだろう。そうされるのがうれしくて、触れたくて触れたくて、触れたくて触れたくて触れたくて。
でも、もしこの欲望を、全部臨也にぶつけたら、こいつはどうなってしまうのだろう。この細すぎる体を抱きしめたとき、俺はこいつを、つぶしてしまうんじゃないのか。
臨也とは幾度となく体を重ねてきたけど、この思いが尽きることはなかった。
壊したくない。大事にしてやりたい。幸せに、してやりたい。

どんどん溜まっていく恐怖と怯えと不安。そして、臨也に触れないようにすることで蓄積されるストレスと、それから性欲。

臨也以外なら、壊してもいいとは思わない。思わないのだけれど、けれど臨也を壊したくない。それで、俺が選んだ選択が、これだったんだ。
最低なことだ。力も、そして気持ちさえも、俺は俺自身をどうにかすることができないんだ。気持ちがいいと思ったことはなかった。けれど、欲望は収まった。手荒にした。
何も考えられなくなって、気付いたら女が横に寝ていることが多くなった。名前もしらない。けれど携帯のメモリは増えるばかりだ。見覚えのない番号から電話がかかってきて、誘われることも幾度となくあった。そして俺は、それを断らなかった。
最低だ。

目の前で小さくなって、震えている存在が、大切だったのだ。笑わせたかったんだ。なのに、泣かせた。最低だ。なにしてるんだ、俺は。

「臨也」

手を伸ばして触れようとしてみると、臨也はさらに体をこわばらせ、顔を覆っている手が、俺の手を拒否するように、握りこまれた。

「触らないで……ごめん、ごめんね、でも、だめなんだ。ごめんね。」

なんで、お前が謝るんだよ、そんな声、出すなよ。悪いのは、全部、俺だってのに。

「俺、帰るね。ごめん。これからも、多分、池袋で仕事あるからさ、でもできるだけ、いかないようにするよ。ちゃんと、調べて、静ちゃんが、いないときにでも……ああ、ごめん、調べるとか、気持ち悪いね。ごめんね、でもこればっかりはさ、我慢してよ…ね、それじゃあ、」

いくなよ、頼むから、いかないでくれ。臨也。

「それじゃあ、バイバイ。」

本当に、最低だ。





お、終わらなかった…!続きます。ハピエンがこい…!!


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