小説 | ナノ


※静モブ表現あります





ねえシズちゃん。
蜂蜜色の少しくしゃくしゃした髪をのせた、真っ白なシャツの背中をじいっと見つめていても、振り返ってくれない。新聞をばさばさと乱暴に捲って、時々カフェ・オレを啜る姿は昔と少しも変わりない。
ねえシズちゃん。
俺がそうやって呼べばシズちゃんは振り返って、なんだよ、と首を傾げる。そんなときシズちゃんは、なんだかすごく面倒くさそうにみえる。勿論シズちゃんがなにを考えているのかは俺には分からない。俺はシズちゃんの大事なもの(って昔シズちゃんは言ってくれた)なのに、シズちゃんのことなんにも知らない。こうやって目を閉じてしまえばとても静かで、シズちゃんはまるでそこにいないような感じがしてしまう。
ねえシズちゃん。
俺が最近黙り込むのは、シズちゃんの所為なんだよ。本当はたくさんシズちゃんと話して、手繋いだり、キスしたりも、したいんだ。でもできない。怖いから。シズちゃんに、面倒くさがれるのが。
最近随分シズちゃんに触れていない。シズちゃんも俺に触れてこない。嫌だな。いつかはシズちゃんの匂いも、体温も、忘れちゃうのかな。そんなつまんない恋人にはなりたくないよ。
ねえシズちゃん。
俺がなんにも知らないって思ってるのかな。舐めないでほしいな。俺は君とずっと喧嘩し続けてきた折原臨也だよ?君の動向なんか、調べたくなくたって、耳に入ってくるんだよ。
君が、俺の知らないところでかわいくて小さくて柔らかな女の子と会ってることも、その子だけじゃなくて他にも一杯そういう子がいることも。何をしているかなんて自然とわかるもんなんだよ。だって俺達、いい大人だもん。
でもね、出来たら、そう、まだ大人でもなくて、でも決して子供でもなくて、俺とシズちゃんどっちも必死で、全力で、でもそれが楽しくて幸せで満たされてたとき、あの頃を、忘れてほしくないよ。
ねえシズちゃん。
俺はもう疲れたよ。もう傷つきたくないよ。すぐに治るほど、若くもないよ。
だからさ、

「シズちゃん。」
「あ?なんだよ」
「別れよっか。」

だから、もう、終わりにしようよ。




悲恋を書いてみましたがハッピーエンド主義なので続きます


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -