小説 | ナノ


※美大生パロ 
※シャングリラ の続きです





臨也が少し困ったようにいった言葉に俺は固まった。否、固まらずにはいられなかった。26歳?社会人?誰が?

「お前、まじで……?」
「まじまじ。そっかー、そういえば、俺たち全然何にも知らない仲だったんだよね。馴染むの早くて忘れちゃってたよ。」

臨也は皿に残ったピラフをもふもふ食べながら、自己紹介でもする?と首を傾げた。
確かに臨也のことは何も知らない。外見と話し方だけで勝手に同い年だと思い込んでいた。背だって俺より低いし(まあこの年になればそれはそんなに関係ないかもしれないが)声も高い(成人男性にしてはって意味だけど)。体つきだって華奢だ。服だってラフなものが多い。とても年上には、ましてや働いている人間には見えなかった。

「んーと、折原臨也…てのはさすがに知ってるよね。さっき言ったとおり、26歳。仕事は、まあ、法律関係のこと。ほかになにか質問は?」

微笑んで尋ねてくるその笑顔はやっぱり幼くて、俺はほんとにこいつが年上なのかと疑う心をどうすることもできない。法律…法律関係ってなんだ、検事とか、そういうのか?

「シズちゃん?黙っちゃって、どうしたの?」

困った顔で覗き込んでくる臨也になんでもないと首を振ると、臨也はそお?と少し不満げにしながらまたスプーンでピラフを掬った。
しばらく皿とスプーンがぶつかる小さな音だけが聞こえる。臨也は少し下を向いたままもくもくとピラフをほおばっている。
つか、もしかして、俺は、社会人のこいつに、給料も払わずに三時間も椅子に座らせておいて、その上安売りのもんばっかでつくった飯とか食わせてたのか。こいつもこいつでなんも文句いわねえからてっきり時間もてあました学生かと思ってた。これからどうすりゃいいんだ。つか、この課題終わったら、どうにか臨也を引きとめようと思ってたが、社会人とかさらに望みなくねえか?いっそのこともうここでいっちまって、課題終わるまでつき合わせて印象悪くなっちまうよりもいいんじゃねえか?よし、そうしよう。もういい。課題だってほんとは写真とってそれ参考にすればできないことはないんだ(もちろん実物みたほうがそりゃいいとは思うが)

「臨也、」
「あの、シズちゃん!…て、ん?なに?」

意を決して臨也を呼んでみると、臨也も同じように顔を上げて俺の名前を言った。切羽詰ったような顔をして、スプーンを握り締めている。俺は今までの勢いはすっかり衰えてしまって、なんだ、と気の抜けたような声で臨也に問い返した。

「あ、いや、あの…俺、働いてるし、もうモデル、やめたほうがいいかな…だってシズちゃん、俺が年上だって知らなかっただろう?知ってたら、多分、モデルなんて頼まなかったと思うし…だから、」

尻すぼみになって黙ってしまった臨也に、俺はすぐに言葉を返した。
こいつの言い分じゃ、俺の目が悪いみたいじゃねえか。俺は臨也がきれいだと思ったからモデルを頼んだんだ。年とか、関係ねえだろ。

「お前が年上だろうと働いていようと、俺はお前にモデル頼んだ。ここはぜってえ否定しねえ。だから、その、なんだ、あー…やめる、とかも、いい。関係ねえし。それに俺は……」

言いかけて、思わず口をつぐんでしまった。
向かい側に座る臨也が今までみたことないくらいに、やわらかくあまく、うつくしく微笑んでいたから。





26歳で、社会人。いつかは絶対言わなきゃならないことだったけど、結局いえなくて、今日まで有耶無耶にしてしまっていた。
だって、男でモデル、ってだけどもなんともいえないのに、その上年上だなんて、ほら、なんというか、おかしいというか、気持ち悪い、だろう。
案の定、本当のことをつげたあと、シズちゃんはそれきり黙ってしまった。困惑した表情で、じっと固まってしまった。
(ああ、やっぱりなあ。)そんな反応になるのも無理ないよね。シズちゃんは俺のこと、年上どころか、同い年とも見てなさそうだったし。
あーあ、どうせこうなるならもっと早めにいっとけばよかったかなあ。だって騙してたみたいじゃないか。いわなかっただけで、騙すつもりはなかったんだよ?それに、こういう反応だって、うすうす気づいてたし。もういっか、そうだ、ならいっそ、俺はシズちゃんがすきだよって言っちゃって、これ以上辛くならないうちにばいばいしちゃおうかなあ。俺はそんなに若くないし。大きいダメージには耐えられない。受けた傷はすぐに治らない。

「シズちゃん、」
「臨也っ…?」

顔を上げると、静ちゃんが切羽詰った顔でぐっとこぶしを握り締めてた。目がはっと合って、俺は思わずそらしてしまう。シズちゃんは困ったような声で、なんだ、と言った。
つまりつまり言葉を吐いてみるけれど、すごく自分勝手だし、言いたいことは怖くて言えてない。やっぱりシズちゃんと会えなくなるのはさびしい。でも傷つきたくない。ほんとに利己的で、ずるい。(ああ、だから俺はシズちゃんが好きなのかもしれない。シズちゃんは俺みたいに曲がってなくてまっすぐで、自分の行きたい道を進んでいるから)(そんなところが、好きなのかもしれない)
考え事をしていたら、自然と言葉が途切れてしまった。するとシズちゃんは少し黙って俺をみつめて、すうと域を吸い込んだ。目はまっすぐで、光がきらきらしている。こんなシズちゃんの顔が、すきだ。

「お前が働いていようと、年上だろうと、俺はお前にモデルを頼んだ。」

シズちゃんは、癖なんだろうけど、なにか言いたいことがあるとき、じいっと目の中を覗き込んで、なにもかもみすかしてしまうような顔をする。

「だから、やめるとかも、いい。関係ねえし。」

言い切ってしまうところに、若いなあ、と感じてしまう俺はなんだかすごく年寄りみたいだ。それで、そうやっていってもらって、安心してしまう。シズちゃんと出会ってそんなに時間はたっていないのに、シズちゃんの言葉は俺を安心させる。
やっぱり、離れられないなあ。
何かいいかけたシズちゃんはきゅっと眉根が寄っていて、そういう表情も愛しい。逃さないようにと見つめていると、シズちゃんは困った顔してそっぽをむいてしまった。
かわいいなあ。やっぱり、俺は、シズちゃんを諦められそうにない。少し傷つくくらいなら飛び込んでしまおうと思う自分がいることに、内心笑ってしまった。





ぐだぐだしてしまった…シャングリラ一区切りです。
美大生パロ、時間軸ばらばらなので、急に話がぶっとんだりしますが、よろしかったらお付き合いください。


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