ふわふわきらきら

紅炎と女の子の話




鴉のお話し声で、ぱちりと微睡みから目を覚ます。少し前までお日さまがぽかぽかと包み込んでいたのに、辺りは優しい紅に染まっていた。


「紅炎、お仕事終わったかな?」

大抵の我儘は聞いてくれる紅炎だが、唯一何人かでいつも入っていくお部屋でお仕事するときは、わたしを入れてくれないし構ってくれない。退屈で仕方ないところへ、今わたしの後ろで眠るジュダルが遊びに誘ってくれたのだ。ジュダルは不思議な力を使えるようで、綺麗な冷たい石を出したりお空を飛んだりできる。わたしが、凄いね!というと、ジュダルは少し得意げに笑い、その周りをきらきらが嬉しそうに鳴く。そんな風に遊んでいるうちに、いつの間にかわたしもジュダルも眠ってしまっていたらしい。


「ジュダル、遊んでくれてありがと!また遊んでね」

起こさないように一声かけてから、わたしは彼がいるであろう方向に向かって駆け出した。



***



さっきまでいたお庭を抜けて、紅炎のお部屋までの道を歩いていると、前方から彼が向かってくるのが見えた。


「紅炎!」
「…む、名前か。今日は何処で遊んでいたんだ?」
「ジュダルとね、遊んでたの」
「草がついてる、ということは庭園か?」
「うん!お庭で遊んでさっきまで寝てたの」

わたしのからだについていた草を優しく払い、ひょい、とわたしを抱き抱えてくれた。やっぱりわたしはこの匂いが一番好き。お日さまやお花、ジュダル の匂いも好きだけど、紅炎は特別安心するようなそんな匂い。少ししか離れてなかったのに、その時間を埋めるように紅炎の胸に擦り寄る。


「何だ、今日はやけに甘えてくるな…俺がいなくて寂しかったのか?」
「うん、わたし寂しかったの」
「悪かった。明日は会議はない、ずっとは遊んでやれないが一緒にはいてやれる」
「紅炎がそばにいてくれるなら、それでいいの」

ちゃんと気持ちが伝わるように、紅炎に手を伸ばしてわたしの頬を彼の頬に合わせる。満足そうに少し笑って、紅炎はわたしたちのお部屋へ入り、ベッドの上にそっとわたしを降ろした。


「お前はここで少し待っていろ」

わたしの頭を一撫すると、すっと彼が離れて行く。また紅炎が何処かへ行っちゃう。やだ、というと彼は意地悪そうな顔をした。


「何だ、お前も一緒に風呂に入りたいのか?」
「お風呂?!やだ、絶対に入らない!!」

紅炎から少し距離をとって、じろりと睨むと、彼はクックッと笑いながら奥のお部屋へと消えていった。



***



濡れた髪を拭きながら、名前のいるベッドへ近付く。キシッ、とベッドに腰掛けた僅かな音で目が覚めたのか、欠伸をしながら俺を見上げた。その目はまた何処かに行くつもりか、とでも言いたげで、


「髪が乾いたら俺も寝る。先に寝ていろ」

安心させるように名前の頭を撫でる。気持ち良さそうに目を細め、すぐにでもまた微睡みへと落ちていきそうだ。


「おやすみ、名前」
にゃあ〜〜おやすみ、紅炎



2019.0413