夏の終わり


今日はかぶき町で一番大きなお祭りがある。お祭り好きな江戸っ子は無論それに向かい、そして万事屋も例に漏れずお祭りに来ていた。
なんと今年は神楽ちゃんのお父さんも一緒で、最初は乗り気でなかった神楽ちゃんだったけれど、ご飯をたくさん買ってもらえるということに気付いてテンションはマックスだ。お祭り会場に着くと、神楽ちゃんは早速定春とお父さんを連れてどこかに行ってしまい、新八くんは偶然居合わせたお友達と行ってしまった。残された私と銀時は呆然としていたけれど、物凄い人の波に押されたのでとりあえず流れに従って歩くことにした。

お祭りはいくつになっても楽しいと思える行事だと思う。もちろん大人になった今では子どもの時のようにはしゃぐことはないけれど、数々の屋台が開かれてたくさんの人たちが楽しそうに笑っているのでこちらも段々気分が乗ってくる。人の多さに辟易とするのは否定出来ないけれど。

かぶき町一大きいお祭りというだけあって、お店が思っていたよりも並んでいる。毎年来ているが、何処まであるのか忘れてしまう。半分も行っていないくらいですでに銀時の両手にはたくさんの食べ物がある。いつも酒をちびちび飲みながらお祭りを傍観するのに今年は珍しい。
そろそろ抱えきれなくなってきたのか、とうとう近くのテントで一旦消費することにしたらしいので私もそれに付いて行く。近くにあったカウンターでビールを貰い、銀時の元へ行くと喜んでいた。


「屋台で食べ物買うなんて珍しいね」

「今年はハゲが来てくれたおかげで大食い娘とメガネの分の金が浮いたし、たまにはお前と二人でゆっくりしてもいいだろ?」


まるで少年のような笑顔でそんなことを言われては何も返すことが出来ない。単純なものだ。
それから暫く何を話すでもなく、二人でゆっくりまったりと時間を潰した。



8時が近づいて来ると、周りの人が動き出した。花火の席取りに向かっているのだろう。人集りに紛れて神楽ちゃん親子と定春、新八くんがやって来た。どうやら花火は毎年恒例で全員で見るらしい。神楽ちゃんが早く早くと急かすので、私と銀時は顔を見合わせて笑い、いつもの特等席に向かうべく先頭の神楽ちゃんについて行った。

私たち万事屋だけが知る唯一の特等席は、当然だが私たち以外に人はいない。ここにたどり着くまでは足場が悪いので誰もこないのだ。


「なまえ〜時計持ってないアルか? ワタシ待ちきれないヨ」

「時計ならお父さんが持っているよ神楽ちゃん!」

「ハゲは黙ってるヨロシ」


神楽ちゃんに冷たくあしらわれてショックを受ける神楽ちゃんのお父さんがあまりにも不憫だったので、今回はフォローすることにした。


「時計は持ってるけど、私の時計は正確な時間ではないんだよね。星海坊主さんの時計はどうですか?」

「…うむ、正確なはずだ。私はあらゆる星を行き来するので特殊な電波時計を使っている。そう易々と狂ったりしないだろう」

「だってさ。神楽ちゃん、10秒前になったらカウントダウンして私たちに知らせてくれる?」

「任せるヨロシ!」


星海坊主さんからグッジョブポーズをされたので苦笑し、なんとなしに夜空を見上げる。すると、いつもは曇っていて見えない星が綺麗に見えた。しかもたくさん。花火が上がるまでの間暇はしないだろうと思い、キラキラと瞬く無数の星々を眺めていると、神楽ちゃんの明るい声が静寂を破った。


「あと10秒ネ! 9、8、7、6、5、4、3、2、1…」


紺色の空に一筋の光が音を立てて上がり、数秒後にドンッと音を轟かせて大輪を咲かせた。お祭りの最後を飾る花火が始まった。
私たちがいる場所が空に近い分、花火もより大きく見える。赤い花火、緑の花火、黄色い花火、柳など、たくさんの種類の花火が打ち上げられる。


「…また来年もみんなで見られるといいなあ」

「…そうだな」


花火に紛れて聞こえないだろうと呟いた言葉に返事が返ってきたことに驚いて隣を見ると、銀時は眩しそうに花火を見つめていた。これ以上何かを話すのは野暮だと思い、口を噤んで花火を見た。でも、先程の銀時が切なく見えたので、首が疲れて摩ってるふりをして、俯いてちょっとだけ涙を零した。










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*感謝と反省
リクエストありがとうございました! そして大変長らくお待たせしてしまい、本当に申し訳ありません!
夏の終わり感あまり出せていない気もしますが…私はお祭りのあとの花火が終わると「ああ、夏終わったな…」と、ちょっと切なくなります。最後の銀さんに特に意味はありません(笑) でも想像したら、やっぱり切なく見えるんだろうなと思ったので、夏の終わりのあの切なさを引き立てる役割を担ってもらっているという裏話でした。
ご希望に添えているかどうか大変不安ですが、みなと様に捧げます。この度はご参加ありがとうございました!


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