「たーいち。どうしたの?」
「…別になんでもねーよ。」
そう言って、彼は笑う。
なんでもなくなんかないくせに。
太一と歩きながら思う。
付き合い始めた2人のために私たちも2人で帰ることにしたのだ。
いつも4人で帰ってたのにな、なんて思いつつ、太一と2人で帰るこの時間が好きだったり。
太一と2人で帰るようになってから気付いた。
太一の大丈夫、は大丈夫じゃない。
もちろん、本当に大丈夫なときもあるけど、自分自身のことに関しては大丈夫じゃないことが多い。
いつからか、なんてそんなのは明確で。
彼と彼女、が付き合い始めてからだ。
私たちの親友の彼、と彼の元カノの彼女。
2人とも私たちからすれば親友で、とても大切な人なわけで。
傷つけたくなくて、平気なふりをして自分を苦しめる。
そんな彼だから。
この気持ちは伝えない。
ずっと、好きでした、なんて。
優しい彼だから、また自分を傷付ける。
だから、伝えない。