行かないで



どこか人を惹きつける魅力があるのは知ってた。

外見的な魅力だけじゃなくて そこに居るだけで華があるような そんな存在感を持っている。それを鼻にかけるわけでもなく 誰に対しても気さくに話すから みんなに好かれてて。でもそれ以上に浮世離れした存在感がみんなを遠ざけていた。

俺もその内の一人で 昔から蜜姫のことを知っているにも関わらず 成長するにつれて綺麗になっていく蜜姫を 側で見ていることが段々怖くなった。

目を伏せたときに頬に影を落とすまつ毛とか 少し運動すると赤らむ頬。サラサラと靡くウェーブがかった髪の毛は 無意識に手を伸ばしてしまいそうになる。







「また蜜姫ちゃんのこと?」


「…いや」


「嘘つけないんだから素直に言いなさい」


「…む」


「ふふっ 妬けちゃうなー」


「別にそんなんじゃない」


「大切なものが離れていきそうで それが怖くて自分で遠ざけちゃうのね」


「っ…」


「大丈夫よ しっかりと想えば 想いは伝わるから」







「その分行動も伴わなきゃいけないけどね」と歌帆は笑った。

歌帆の笑顔につられて少し口元を緩めると 悲しそうに笑う蜜姫の顔がふと浮かんだ。

歌帆はどこまで分かっているのか なにを思って俺といるのか…そんなことを考える余裕もないくらいに俺は歌帆といても 蜜姫のことを考えていた。







行かないで

(遠ざけるくせに 離れたくなかった)



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