blue days | ナノ

彼の言葉が胸に突き刺さり、ズキズキと痛かった。そして気付きたくなかった気持ちに気付き始めている自分がいる。彼を好きになったってこの気持ちが報われることはないと分かっているのに。



「佐倉さん?」

購買から戻る途中のことだった。呼び止められ、振り向き顔を見るとそこには可愛い女の子が立っていた。目が合うとにこりと微笑まれる。どうやら彼女は私のことを知っているらしいけれど、私は彼女と話した記憶がなかった。上履きの色からして同学年であることは辛うじて分かる。

「え…と、」
「あ、ごめんねいきなり。ちょっといいかな?」
「う、うん」

彼女はどうやら私に何か話があるらしく、後を着いてくるように頼まれた。何やら深刻そうな雰囲気だったため、私は先ほど買ったパンやペットボトルを抱えて彼女の数歩後を着いて行った。

――やって来たのは裏庭だった。
え、まさか少女マンガでよくあるみたいにここで囲まれて何か言われるの!?と冷や汗が出始める。けれど彼女は私の方を見ると、至って冷静に話を切り出した。

「さっそく本題なんだけどね、」
「う、ん」
「佐倉さんって精市とどういう関係?」
「え…?」

待って、意味が分からない。淡々と告げられる言葉に頭がフリーズする。彼女は何を言っているのだろう。どうして私にそんなことを聞くのだろうか。

突然の言葉に戸惑う私に、彼女は更に言葉を突きつける。決して乱暴な物言いではないけれど威圧感を感じずにはいられない。けれど、どこか焦っているとも取れるような声色だった。

「あなたも"彼女"の内の一人?」
「私は、そういうのじゃ…」
「……精市はあまり特定の女の子といるような所は見ないけど、佐倉さんといるところは何度か見たことがある」
「え…?」
「屋上庭園や花壇…それにこの前は一緒に帰ってたよね。私見ちゃったの」
「っ、屋上庭園や花壇に一緒にいたのは、同じ美化委員だったからで!一緒に帰ったのは……、その…」

彼女の視線から思わず目を逸らし、口を噤ぐ。一緒に帰ったのは、彼が夜道は危ないと言ったから。そして私と彼の最寄り駅が偶然にも同じだったから。そう説明すれば済む話なのに、なぜだか言葉が上手く出てこなかった。
身体が震える。酷いことを言われたわけでも暴力を受けたわけでもないのに、彼女の真っ直ぐな視線が怖かった。何も答えられない私に彼女は小さく息を吐き、言った。

「佐倉さんは精市が好き?」
「…えっ」

突然の問いかけに言葉を失う。彼女の目は真剣で、けれどどこか憂いを帯びていた。

芽生えてしまった気持ちに嘘を吐くのは、もう限界なのかもしれない。

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