スイート・ビター・スイート | ナノ
case.06
日曜日。今日は珍しく幸村くんの部活が休みだというので、幸村くん家にお邪魔してまったりと休日を過ごしている。いや、幸村くんはまったりしているつもりかもしれないけれど、残念ながら私はそうではない。
「こうやって二人で過ごすの久しぶりだね」
「そ、そうだね」
「なんで声震えてるの?」
「気のせいだよ」
それはすべてこの体勢のせい。ベッドにもたれた幸村くんの足の間に私が座り、後ろから腕を回され抱き締められている状態。つまりはかなりの密着状態。
部屋に入ってすぐ足の間に座るように促され、それからずっとこの恥ずかしすぎる体勢で今に至る。幸村くんは平気かもしれないけれど、男の子、ましてや大好きな人とこんなにも密着しているなんて私の心臓は破裂寸前だ。
「照れてるの?」
「そんなことない、よ?」
「そう。じゃあこれでも?」
そう言って幸村くんは前に回す腕の力を強めて、体をぴたりと私の背中にくっ付けた。幸村くんの顎が私の肩に乗る。息遣いまで聞こえるようになり、私の心臓はスピードを上げる。こんなにぎゅっと抱き締められて、幸せは幸せなんだけど、とりあえずそれよりも恥ずかしい。恥ずかしすぎる!
「う、あ、あの、幸村くん!」
「なに?」
「恥ずかしいです!」
「俺は別に何ともないけど」
この人絶対楽しんでる!だって耳元で小さく笑う声が聞こえるから。私の反応を見て楽しんでいるのだ、幸村くんは。分かっているのに、思う壺になんてならないぞって思ってるのに。身体は気持ちに正直に熱を帯びる。だめだ、恥ずかしい。
「恥ずかしいよ、幸村くん…」
「知らない」
「しっ、…………っひゃあ!」
ゆゆゆゆゆ幸村くん、が!今!耳を!かぷって!
そう声を大にして言いたかったのに、恥ずかしさのあまり声が出てこない。私はぎゅっと目をつむって大きな音を立てる心臓を落ち着かせようと小さく息を吐いた。しかし幸村くんがそんな私を放っておくはずもなく。
「ふっ、…本当に可愛いなぁ」
耳元で聞こえた慈しむような声に私の心臓はさらに跳ねた。