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「あっ、お待たせ〜!」

 入学式も終わり集合場所へ赴けば、既にあたし以外の3人が揃っとった。
 待たせたことを詫びつつ、4人で移動を開始する。入学式とクラス毎での簡単なガイダンスだけ行われた今日は、これから祓魔塾の第1回でもあるのだ。
 誰かに見られんよう念のため人気の少ない場所を選び、坊がポケットから鍵を取り出した。祓魔塾に行くためにと予め送られてきた物や。

「ほな行くか」

 そう言って鍵を開け、ギィと軋むような音を鳴らしながら扉を引く。
 その先に広がっとった塾へ続く廊下はかなり古びて埃っぽいけれど、ヨーロッパみたいな雰囲気の内装は随分と立派や。噂には聞いとったけど、鍵ってすごいなぁ。むちゃくちゃ摩訶不思議やん。

「一年生の授業は一一〇六号教室ですよね」
「おォ。あそこやな」

 子猫丸に言われ坊が指さした扉には、たしかに“一一〇六”と書かれとった。
 よう見ると、たっかい天井まで届くえらくデカい扉の中に通常サイズの扉がある構造になっている。デカい方の扉開けることてあるんかな。

「ははは、なんや緊張しますねぇ」
「なん言うてんの、ただの塾やん」

 そんなふうに志摩を一笑しながら、坊の後ろについて教室へ入る。
 中は廊下以上に老朽化が進んでいる感じで、なんか廃墟みたいや。生徒やってまだ男子が2人おるだけで、かなりガランとしている。
 坊が奥の列の真ん中の座席に腰掛けはったから、またそれに続いた。

「塾生少ないとは聞いとったけどこんだけなんかなぁ」
「かもしれへんけど……まだもうちょい時間ありますし、これから増えるんとちゃいます?」
「あー」

 隣の席の子猫丸とそんなふうに話していれば、ギィ、と先程同様音を立てて扉が開いた。言ったそばから別の生徒が来たらしい。
 どないな人やろうと思って見つめとったら、なんと現れたんはあたしとおんなじセーラー服。2人組の女の子や。

「お、」
「女の子やぁ!」

 あたしの言葉を遮ってまで歓喜の声をあげ、ルンルンで2人の方までスキップしていったんは言わずもがな志摩廉造その人である。

「……ここにも女の子はおるんですけど?」
「はは……志摩さんほんま自重できひんなぁ」
「あの阿保……」

 残されたあたしら3人はそれぞれ深く溜息を吐く。
 腹立つ。廉造の女好きは今に始まったことやないけれど、それでも腹立ってしゃーない。ほんまになんなんやねんアイツ、あたしにあんな素振りしたことあらへんくせに。

「…………」

 それだけ眼中にないってことなんやと、改めて思い知らされる。キッツいなぁ。

「あ」

 子猫の声にふと顔を上げれば、上機嫌で話しかけた廉造がツインテールの女子にガン無視を決め込まれる瞬間やった。隣のショートカットの子も気まずそうにしながらも廉造のことはスルーして席に着く。
 廉造はそれでもめげずに会話しようとしたみたいやけど、睨みをきかせたツインテールの彼女に「ウザい、消えろ」と一蹴されていた。
 あたし的にはかなりスッキリしたけど、なかなか厳しめな子やな。

「はァ〜〜フラれてもうた〜」

 肩を落としてトボトボと帰ってきた廉造に皆冷ややかな視線を向ける。もちろんあたしもや。

「志摩お前東京こっち来てまで恥ずかしい真似すんなや」
「煩悩は京都に置いてくるべきでしたね」
「廉造はほんに元気があってよろしいなぁ」
「ちょっとみんな傷心の志摩さんにヒドない?!」

 誰がヒドいねん。ちゅーかどの口が傷心とか言うてんねん。

「これから一緒に悪魔祓いエクソシズム学んでくんやし仲良うなっとこ〜思ただけやないですか」

 そう言って坊の隣に腰掛けながらヘラヘラと目を細める。
 そんな見えすいた嘘に、誰もが再び溜息を吐いたのだった。

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