「それと太陽、さっきなまえと何してたの?」


不意に天馬からそんな事を聞かれて、ちょっと驚いた。
何って…まぁ話してただけだけど。少し思わせぶりなこと言ってみようかな。


「ちょっと、ね。」


そういえば皆帆くん(で名前合ってるっけ?)情報だと、2人は両思いとかすれ違ってるとか言ってたような。あれどうなったんだろう。
あえてなまえにベターっとくっついて「気になる?」って聞いたら、天馬は何か考えるように口を閉じた。えっ そこ黙るところなの?

ていうかなまえに怪訝そうな顔をされた。
さっきはまだ行ける!、って思ったけどやっぱ…もう兄離れしちゃうのかな…寂し…。離れるべきは僕のほうか。
なまえは小さい頃からずっと可愛くてホントに手放したくなかったんだけど、あ〜…兄離れ…か…

なんて、僕が自分の世界に浸りながらなまえのくせっ毛をもふもふしていると、天馬がそっと口を開いた。


「なまえの自由を奪うつもりはないけど、やっぱりちょっと…気になる、かなぁ…」

「えっ、何が?」

「何が、って…」


それからまた沈黙。え、…え? なんか雲行きが怪しくなってきた様な。恐る恐る天馬の答えを待っていると、彼は首を振った。な、何だい。


「ううん、変なこと言ってごめん。太陽にこんなこと思うのおかしいよね。」

「うん?」

「なまえのお兄さんなのに…」


…天馬? ちょっと待ってそれどういう意味。こんなこと、って何。僕じゃなかったらどう思ってたわけ。
やっぱりなまえの目が若干赤くなってるから? さっき泣いたからそうなっちゃったんだけど、目に見えてわかるほど腫れてはいないし…誰も何も言わないから気が付いてないと思ってた。
あるいは僕となまえが2人っきりで突然抜けたから? 天馬って結構、独占欲強いの? 僕にこんなこと思うのはおかしい、ってそういうこと?
…っていやいや独占欲って何。ちょっと落ち着こう僕! 何考えてるんだ。
考えを張り巡らせすぎた。落ち着け落ち着くんだ、天馬に限ってそんな…


「太陽、どうした。ジャンケン始めるぞ」


色々と考えていたら、白竜君に突然話しかけられた。
え? ジャンケン? 何の? ていうか今それどころじゃないんだけど僕は!


「待って後でにして!」

「控えを決めるジャンケンだ! 今決めないでいつ決めると言うんだ!」


あ、あぁ…そう2人余るから前半後半でベンチに座る人決める、とか言ってたっけ…
でもぶっちゃけ今の僕はそれよりも大事なことが…っ
とりあえずなまえから離れて、白竜君をスルー。ごめんね! そして僕は天馬の前に立った。うわぁ何これ足が震える。


「天馬…あの、さ、1つ聞きたいことがあるんだけど…」

「太陽? 急にどうしたの?」

「いや…、天馬となまえ…ってさ…、」


何となく気がついていたんだ。兄のカン、というか、周りの雰囲気というか…何となく。漂う空気が、そう、…うん。
甘い。
だからまさか〜…とは思うけど一応聞いておこうと思って。
僕の考えすぎならまた茶化せばいいし、そう…そう思ってたのに。


「そうだ、太陽にはまだ言ってなかったよね」


そう言って天馬は何か覚悟を決めたような顔になる。
なまえと言えば、どこか恥ずかしそうに俯いた。何それ! 可愛いけどなんでこのタイミングで!!
僕1人が焦っていると、天馬は真っ直ぐにこう言った。


「俺、なまえと付き合うことになったんだ」

「っ!」

「何、」

「へぇ、そうなんだ」


えっ……。
……え?

しばらく僕はフリーズしていたようだ。なまえにガクガクと肩を揺さぶられるまで本気で魂が抜けていた。
危ない…幽体離脱でもするところだったよ。いや僕が言うと笑えないからこの類の冗談やめておこう。
僕の想像を超越したことを天馬が言うから誰がなんてリアクションしたか分からないぐらい混乱してしまったじゃないか。とりあえず白竜くん他数名が驚いているのとシュウ君が何故か愉快なのは見て取れる。
…本当は数秒前まではきっと天馬のことだし的外れなこと言ってギャグみたいに終わるんだろうとか思ってたんだけど。真剣な顔で真剣なこと言われるのがこれだけ心に響くとは。ていうか響きすぎじゃない?
そうだよ落ち着くんだ雨宮太陽…何を今更…驚くことないよ。もうずっと前から分かってたことじゃないか…そうだ、そうだよ。そう…だけど…
何だろうこのダメージは。


「お兄ちゃんしっかりして!」

「あ、あぁ…うん…」

「大袈裟だなお前…」

「素直なだけだよ……」


自称究極を名乗る白竜君に大袈裟とか言われたくないな。
あぁいけない、自分の殻に閉じこもるところだった。だけど僕の肩をゆっさゆさ揺らすなまえは何だかんだ言って照れてるし。頬赤いよ君。嬉しそうだね…。


「ダメかも…僕もうダメかも…」

「なんで!?」

「分かってたよ、なまえだっていつか独り立ちするんだって…!」

「何お母さんみたいなこと言ってるの!?」

「ていうか独りじゃないだろ」

「うわあぁぁ…っ」

「え、な、なんで泣くの!? なんで!?」


しっかりしてよ、となまえにいっそう強く肩を揺らされる。
妹が離れていくのがこんなにもダメージあるものだとは知らなかった。


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