キャプテンキャプテン!
「俺の名前は浪川蓮介だ」
「……知ってます」
今更何を言うんだろうかこの人は。
…みたいなその目はやめてくれねーか。まぁ想定内だが。
さて、何故俺が、何年ともにしてきたか知れないみょうじに今更フルネームを言ったかというと……
と、説明する前にみょうじが心底不思議そうに俺の顔を覗き込んできた。
「どうしたんですか、キャプテン」
「だからそれ……それだっつーの」
「え?」
そう、俺はみんなから「キャプテン」呼びされている。
サッカーの練習中のフィールドはもちろん、休憩中、食事中、オフの時から何から何までいつ何度機もキャプテンキャプテン……
確かにキャプテンだ。海王のな。それでもってここはレジスタンスジャパンだ。
みょうじは海王サッカー部マネージャーだから俺をキャプテン呼びするのはわかる。あぁ分かるぜ。
だがな癖とは言えレジスタンスでは紛らわしい。……みょうじに「キャプテン」と声をかけられて何度白竜と同時に振り返ったことか。あ、俺じゃないのかみたいなあの白竜の気まずそうな顔を思い出すと流石に申し訳なく思う。俺でも思うんだぞ。
それに…俺だってホラ、雷門野郎みたいに先輩後輩呼びをしてみたいわけだ。
が。
そもそも恋人からくらいは名前で呼ばれてみたいというのがある。
「キャプテン、って呼ぶのやめてくれねーか。白竜と紛らわしいだろ」
そう素直に言ってみると、みょうじは確かにと頷いたあと少し黙り込んだと思えば、何かを閃いたのかニッコリと笑った。
「ではこれからは、現キャプテンの方を白竜キャプテンと呼びます」
「え」
「そうすればキャプテンと見分けつきますよね。」
そっちか。そっちなのか。
それでもって俺はキャプテンのままなのか。何故そこにこだわるんだ。どうしてそうなるんだ。
なんて色んな意味で驚きながらも、俺より少し低い目線で微笑するみょうじにどこか和んでしまいそうになる。……いや、今日という今日は諦めねえぞ俺は。名前呼びいいじゃねぇか何だか親密度上がったみたいで!
「いや、白竜はキャプテンのままでいいんだけど、」
「でも紛らわしいのですよね…?」
「だーからー……」
「……?」
名前! ……とまぁ、こんな小さなことにこだわるのは自分らしくないとも思う。思うが、何分みょうじは俺にとって初めて出来た彼女というかつまりまぁ仲良くやっていきたいわけだ。……と、同時にその方法が見つからず困っている。それで気がついたのが「名前で呼び合うって親密度高そう」みたいな。
我ながら何言ってるんだとか思うが「キャプテン」と呼ばれるよりも名前で呼ばれた方が嬉しい気もする。
「俺の名前は浪川蓮介だ!」
「……知ってま」
「じゃぁ名前で呼べよ」
「!」
「……」
「………。」
なんだこの沈黙。そんなにまずいこと言っちまったか。
しばらくみょうじはあっちこっち落ち着かない視線を泳させ、やっとこっちを向いたと思えば何故にも頬が染まっていた。
「で、ではキャプテンは私のこと名前で呼んでくれますか」
「え、あー…、……なまえ」
ぼそり。…効果音をつけるならそんなところだ。うわなんで語尾こんな小さくなったし俺。自分の声とは思えないほど今、小さくなっちまったが聞こえてるか?
そういえばいつの間にかそれていたみょうじ、…なまえに視線を戻すとりんごみたいな顔になっている。
……いや、そこまで赤くならなくてもいいんじゃねーのかってぐらいに。俺ですら声小さくなったけど! こっちまで恥ずかしくなってくるからやめてほしい。否もう遅いが。
「えっと、あの、それじゃあこれからは蓮介さんって呼ばせてもらいます」
ちょっと呼び方変えただけでも、なまえに言われるとこうも心臓がうるさくなるものだからやっぱ呼び方って重要だなって再認識した。
(次の目標は)
(とりあえずタメ口な)
浪川さん初挑戦……口調がおかしいかもしれないです。すいません……反省してます。でも後悔はry
小さなことでずっと悩んだり色々考えたりしてたら可愛い。