おパンツ大事件(デイダラ寄)

 

「これは……まさか……」

暁のアジトにて、うちはイタチは廊下に落ちていたある物をうっかり手に取ってしまい、パニックを起こしていた。しかしポーカーフェイスな彼は、どんなにパニックを起こそうと顔に出すことはない。だが無表情ながらに、頭の中は大混乱中である。その証拠に、無意識に写輪眼を発動してしまっていた。
イタチはそれを軽はずみに手に取ってしまったことを、酷く後悔していた。このままでは、自分は変質者扱いされてしまう。咄嗟の判断で再び床に戻した、その時だった。

「おいイタチ、廊下のど真ん中で何をして……」

暁のリーダー、ペインが通りかかり、硬直しているイタチに声をかけた。……が、床に落ちているソレを目にすると、イタチ同様硬直した。輪廻眼がぐるぐる回っているところを見ると、ペインもパニックを起こしているらしい。
そう、床に落ちているソレとは……


おパンツ大事件


「……リーダー、何故廊下のど真ん中に女性の下着が落ちているんだ……?」

イタチは恐る恐る問いかけた。そう、廊下の床に落ちていたものとは、女性物の下着、所謂パンティーだった。淡い桃色で、花柄と思わしき柄が散りばめられている。暁で女性は二人しかいない。その二人の、どちらかの物であることは明らかだ。

「俺が知る筈ないだろう。……しかし待て、恐らく椿の下着ではないか。小南はそんな淡い柄物はつけない」

ペインのとんでもない発言にイタチに数メートル程引かれた。何故小南の下着の種類を熟知しているのだろうか。とんだ変態である。

「……しかし本人に手渡すのも抵抗がある。そうだ、デイダラは椿と付き合っているな。奴に託すとしよう」
「それがいい。早速呼び寄せる事にしよう」

ペインはそう言うと術を発動し、デイダラにコンタクトをとっていた。これですぐにでもここへ駆けつける事だろう。イタチは床に落ちているパンツへ目を向け、呟いた。

「しかし……床に置きっぱなしと言うのも忍びない。かと言って手に取るわけにもいかないしな……」
「まぁすぐにここへ駆けつけるだろうから、このままで良いのではないか。幸い小南も椿も任務で外に出ているしな」

その時、ドタバタと足音が聞こえてきた。しかも複数名。明らかにデイダラだけではないその騒々しい足音に、イタチとペインは振り返った。

「なっ……何でこんなにたくさん来たんだ……?」

そこにいたのは呼び寄せたデイダラだけではなく、トビ、サソリ、飛段、角都も一緒にいた。事情はデイダラへ伝えた筈だから、他の奴らは言ってしまえばただの野次馬である。

「だって椿ちゃんのパンツだろ!?ンなもん落ちてるって聞いたら行かないわけねーだろ!」
「だぁぁっ!だからって着いてこいなんて一言も言ってねーぞ!つーか見るな、うん!」

飛段が興味津々に床のパンツを凝視すると、デイダラは顔を真っ赤にして怒っている。どうやらデイダラが連れてきたわけではなさそうだ。

「それにリーダー、まさかデイダラ先輩にだけコンタクト取ったつもりですかー?僕たちにも筒抜けで聞こえてきたっスよ!」
「な、そんな馬鹿な!」
「馬鹿なんだよ、うん!」

リーダー、まさかの凡ミス。女性の下着にパニックを起こした結果だろうか。サーっと顔を青ざめさせた。

「ほぅ、これが椿のパンツか……色気もクソもねえ、餓鬼のパンツだな」

サソリも床にあるパンツを見ては、毒を吐くように感想を述べた。

「旦那も見るな!うん!」
「……それにしても、俺としては角都もついてきたのが意外でしかないのだが」

イタチは若干引いたように横目で角都を見た。一番そう言う事に興味なさそうなタイプだというのに、やはり男の性という事か。イタチは一人納得しようとした。しかし、そんなイタチを角都は鋭く睨みつけた。

「戯言を抜かすな。俺は自室へ戻ろうと歩いていたら、巻き添えを食らって足止めされたのだ。パンツだのそんなものは知らん」

どうやらただの巻き添えを食らってしまっただけらしい。不機嫌そうに眉間の皺を深く刻む角都。

「とか何とか言ってよぉー、角都も椿ちゃんのパンツが見たかったんだろぉ?そういうのムッツリスケベって言うんだぶへっ!!」

飛段の言葉を制止するように硬化した拳で思い切り殴りつけたのは、言うまでもなく角都である。あーあ、と冷めた目で皆は見つめた。こんな事は日常茶飯事である。

「で、何でこれが椿さんのだってわかったんですか?女性なら小南さんもいますよね?」
「ああ、それはリーダーが小南の趣味じゃないとか言い出したからでな……」
「ほぅ、リーダーいつの間に小南の下着なんて把握してやがったんだ。俺にも教えてくれりゃいいものを……」

トビの問いにイタチが答え、サソリが親父的発言をしてデイダラにドン引きされていた。

「まぁ確かにな、こんな可愛らしい柄のパンツは椿しか履かないだろ、うん」
「そういうわけだ。デイダラ、椿に返してやってくれ」
「いや……どう返せばいいんだ、うん?」

デイダラの問いかけに、一同意味がわからないと言わんばかりに硬直した。

「はぁ?何言っちゃってんだよ、デイダラちゃんよぉ!」

復活したらしい飛段が呆れたように言葉を返す。流石は不死身と言った回復力である。

「いや……確かに椿とつきあってるけどよ、その、まだ深い関係にはなってねーから、いきなり下着を手渡されんのも抵抗あるんじゃねえかなって思って……うん」
「あぁ?てめえまだ手出してなかったのか。流石童貞だな」
「先輩ってば、だっさーい!そんなんじゃ椿さんに飽きられるのも時間の問題ですよー?」
「てめえトビ!ふざけた事抜かしてんじゃねえぞ!しかもオイラは童貞じゃねえ!うん!」

意を決したように事実を述べると、案の定サソリとトビに小馬鹿にされるデイダラ。即座にブチ切れた。空気になりつつあるリーダーが、口を開いた。

「しかし、他の奴らに渡される方が嫌だろう。そもそもパンツなんか落とした椿が悪いのは百も承知だが」
「そりゃねーな!他の奴らになんか触らせてたまるかよ、うん!」

先程うっかり触ってしまったイタチは、無言を貫いていた。大体、パンツを取り囲み口論する犯罪者とは如何なものなのだろうか。

「仕方ねえなぁ、じゃあ俺がサラッと椿ちゃんに渡してやるよ。どうだ、これで解決だろ?」
「どこがだ!大体他の奴らに触らせてたまるかって数行前に言ったの聞いてなかったのか!?うん!」

飛段の馬鹿発言に再びキレ出すデイダラ。これでは拉致が開かないと、イタチは深くため息を吐いた。一体どうすればこの件は収集されるのか。

「フン、下着等誰もが履いている極当たり前の物だろう。グダグダ考えてないで、とっとと返せばいいものを……」

羞恥心等という感情は、既に欠落しているらしい角都が呆れたように呟いた。

「けど椿さんは、渡される人によっては恥ずかしいって感じるかもしれませんよ?……はっ、まさか今椿さん、ノーパンだったり!?」
「アホか!パンツくらい何枚か持ってるだろうが、うん!」
「……はぁ、ナンセンス。会話が幼稚すぎてついていけん」
「ノーパンの椿……ゲハ、やべえなぁ。想像しただけで抜けそうだぜ」
「椿をオカズにしようもんなら、てめーを今すぐ爆破するぜ!つーか、ンな想像してんじゃねえ!うん!」
「くだらねえ……」

ギャースカと言い争いが始まりそうな時だった。再びこちらへ向かってくる足音が聞こえ、ペインは振り返った。

「ちょっと待てコラァァ!!あんた達、何で人のパンツ取り囲んでんのよ!変態ー!」

走ってきたのはパンツの持ち主、椿であった。相当飛ばしてきたのか、じんわりと汗ばみ、呼吸が乱れている。

「お、椿ちゃん!よくパンツが落ちてるってわかったなぁ?」
「リーダーから通信が届いたかと思いきや、私のパンツが落ちてるって聞いてね……」
「あーそうそう!リーダーったら間違って全員にコンタクト取っちゃったんでしたね!」
「ぐ……す、すまん」

珍しく反省した様子のペイン。そして椿は引ったくるように床に落ちてあったパンツを取った。

「ていうか信じられない!何だってこんなにうじゃうじゃ集まってる訳!?小南に言いつけてやるんだから!」
「ま、待て椿!小南には黙っていてくれ……!」

小南へ報告する発言に焦るペイン。知られてはマズイ何かがあると言うのだろうか。それとも怒った彼女は相当恐ろしいという事かもしれない。しかも椿絡みであれば、小南が怒らない筈がなかった。

「というか、小南さんにも伝わっちゃってるんじゃないですか?だってリーダー、全員に伝えたんでしょ?」
「はっ……」
「ナンセンスだ。一先ず解決したようだから、俺は行くぞ」
「あ!ずりーぞイタチ!逃げてんじゃねえ、うん!」
「くだらん。そもそも俺は自室へ行きたかったのだ。何故こんな所で足止めを食らってしまったのか……」
「あ!待てよ角都ぅ!俺も行くからよぉ!」
「さて、傀儡のメンテでもしてくるか……」
「僕も戻らなきゃー!じゃあ椿さん、さよならー!」

次々と去りゆくメンバー達を恨むように睨みつける椿。ペインは茫然と突っ立っている。デイダラも去ろうとしたが、一瞬だけ椿の方を振り返った。

「椿の下着、今度は二人っきりの時に見せろよな、うん」
「なっ……!」
「もう二度と落としたりすんじゃねーぞ。それはオイラしか見ちゃならねえもんだからな、うん」

吐き捨てるように言えば、照れ隠しのようにデイダラは去っていった。椿と言えば、まさかの彼氏の発言に赤面していく顔面を隠せずにいた。

少し経ってから小南が駆けつけてきて、椿から事情を聞いたペインはコテンパンにされたとか。


fin




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