ガールズトーク(デイダラ)

 

久しぶりの任務がない昼下がり。ランチタイムを終え、私は小南が淹れてくれたハーブティーを口にした。私の向かいには小南が座っていて、同じハーブティーを片手に持っている。
こうして休暇が重なったら小南とは時々ランチタイムをしてティータイムをするという時間が恒例になりつつあった。その間に話す内容は、専ら恋話。小南は今でも弥彦が好きだということ(弥彦のことは大分前に小南から聞いて泣いた)、でも長門もとても大切な存在であること等よく話してくれる。私は彼氏であるデイダラの惚気に近い話や愚痴なんかを話しては楽しんでいる。デイダラはかっこいいし性格もいいし悪いところはそうないんだけど、やっぱり芸術バカなところがついていけない。そんなところ含めて好きなことに変わりはないんだけど。

一頻り話終えた頃、小南の視線が私の首筋にあることに気がついた。そんな小南を不思議に思い首を傾げる。

「デイダラとは、仲良くやっているというのが良くわかったわ」

なんて微笑む天使様。一体どういうことだろうか。益々わからない。余程私が難しい顔をしていたのか、小南は一層楽しげな様子を見せた。

「椿は気がつかなかったのね。ここ、痕がついているわよ」

ここ、と首筋を指差され一気に顔が熱を持つのが嫌でもわかった。すぐに確認しようとしたけれど、自分の首筋なんて鏡でもなければ到底無理な話で。
私には思い当たる節があった。昨夜はデイダラと熱い夜を共にしたわけだけど、そういえばやたらと首筋や胸元に唇を寄せていたなぁと今更になって思い出した。行為に夢中でそんなことまで気にする余裕がなかったのだ。唇を寄せられていた時、チクリと一瞬痛みが走った気がしたけど、それでも気にしていなかった。まさかそんな痕をつけていただなんて…!デイダラったら、独占欲丸出しじゃないか。嬉しいけど小南に見られてしまったのは恥ずかしすぎる。

「うう…全然気がつかなかった…!」
「あなたを誰にも取られたくないと思っている彼らしいわね」
「え、なんでそんなことわかるの?」
「デイダラが言ってたからよ」

小南の言葉にきょとんとしてしまう。デイダラはそもそも小南と話す機会なんてそうない筈。私の知らないところで話していたということになる。面白くないけど小南がデイダラを相手にすることは絶対に有り得ないから不安はないけど、面白くはない。

「嫌ね、あなたを不安にさせるようなことは一切ないわよ。デイダラね、時々椿のことを聞きにくるのよ」
「私のこと?」
「今日私とどんな話をしていたんだ、とかペインに呼ばれてたけど大丈夫なのか、とか細かいこと。その時に誰にも渡したくない大切な奴だから気になって仕方ないって、そう言ってたわ」

全然知らなかった。デイダラがそんなに私の行動を気にしていたなんて。何も気にしてないような表情で「今日は何してたんだ?」って聞いてくることはあるけど頻繁じゃないし、そんな素振りも見せなかった。

「彼はあなたと同じで独占したくて仕方ないみたいね」
「なっ…」
「ああそう、あなたがデイダラのことを惚気ていたとか愚痴を言っていた、なんてことは一切伝えてないから安心しなさい」

私を安心させるように優しい口調で小南は話した。そこは特に心配してなかったんだけど、小南に愚痴をペラペラ話してたなんてことが知られたら、デイダラが不機嫌になるのは目に見えてわかる。それは女同士の秘密にしてくれた小南の優しさに感謝した。

「ありがとうね、小南」
「椿は大切な人が生きているのだから、それだけでも十分幸せね」

儚げに微笑んだ小南の顔を見て、胸が締め付けられる。大切な人を失う悲しみを経験している小南は、大切にしなさい。といつも言う。忍である以上、常に死と隣り合わせで死の覚悟も出来ている筈だけど、デイダラがいなくなったら。そう考えるだけで耐えられる自信がない。自分が死ぬのはいいのにデイダラが死ぬのは耐えられないだなんて、おかしな話なのかもしれない。
小南と話すと楽しい。でもそれ以上にデイダラを大切にしようと改めて強く思えるのだ。いるのが当たり前になりつつある今、そういう気持ちを思い出させてくれるのは本当に有難い事だ。

「そろそろ帰ってきたんじゃないかしら」

気がつけば時間はあっという間に過ぎ去っていて、デイダラが任務から帰ってきたようだ。玄関先から物音が聞こえてきた。

「椿、お出迎えに行くんでしょう?」
「そうだね。小南、また近いうち話そうね」
「そうね。楽しみにしているわ」

小南は微笑み、自室へと向かった。私は駆け足でデイダラをお出迎えする為に玄関先へ向かった。

おかえりなさい、と優しく抱きしめてみよう。デイダラは、どんな反応をするのかな?




fin





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