「ガストン隊長!」
ガストンの手により牢の鍵が開き放たれナナシ達がぞろぞろと牢の外へでたとき、聞き覚えのある凛とした声が響いた。
「!君は…君は名前か…」
その声に振り返るガストンが名前の姿を目にした時、信じられないかというように目を見開いた。
「なぜここに来たのだ。君も脱獄を手引きしたとメルカバーに知れれば大罪人になるのだぞ?この国からもいられなくなる…」
「ガストン隊長が無事ならば私のことは構いません。」
「何故ッ、何故私にそこまでできるのだッ!?私は隊長…いや、元隊長と君はただの隊員。出会ったのも日が浅いし関係も大したものではないじゃないか!何故君は…」
絞り出すかのように言葉を吐き出すと震えるまつ毛を伏せ視線を地面へ向けた。
「私はガストン隊長のことをずっと見てきました。ガストン隊長は知らないかもしれませんがずっと貴方を見てきたんです。そして、貴方に憧れサムライになるのを夢見て武器を手に持ったのです。」
「な、なんだと…?私に憧れ…?」
「ええ。貴方が周りの噂や評価に負けず己を磨き意志を貫いてきた。それをずっと、ずっと昔から憧れていたのです。」
”憧れ”そんな想いをこの名前という女は私に抱いていたと…?
心の奥底がじんわり暖かくなる思いだった。
今まで周りは自分の事を兄、ナバールの弟としか見ていなかったし、実力はあれど恨みを買うばかりであったのでそんな評価を受けたのはメルカバーぐらいであったのである。
視線を名前に戻すと、しっかりとガストンを見つめ微笑む名前と目が合った。
その瞳はガストン、1人だけを見据えていた。
ガストンはその瞳に引き込まれる思いを感じ目が離せずにいた。
「私をガストン隊長の傍に置いてください。そして東のミカド国や東京の民を救う手伝いをしたいのです。」
「…君は…全く仕方のない馬鹿な女だな…」
ガストンは名前の瞳に籠る意志に負けたかのように深いため息をついた。
「よかろう。仕方ないから私の傍に置いてやってもいいだろう!精々足を引っ張ってくれるなよ?」
「はい!ありがとうございます隊長!」
「あと私はもう君の隊長ではない。これからはガストン。ガストンと呼びたまえ。もう目上でもなんでもないのだし”さん”は付けなくてもいいと特別に許可してやる。」
「!わ、わかりましたっ…そ、その、ガストン…」
「…フン」
お互い顔を薄く染め、名前は視線をキョロキョロと忙しなく彷徨わせ、ガストンはいつものように偉そうな態度で目をそらしていた。
「…おい、ガストン。イチャつくのもいいけどここが何処で時間がないってこと分かってんのか?」
「みんな見てるんですけどー」
「「!?」」
二人の世界に入っていたガストンと名前が声がした方を向くと仲間たちが困ったような笑みを浮かべ2人を見つめていた。
「ま、まあ、話まとまったみたいだしみんなでここから急いで逃げましょ!追っ手が来るわ。」
慌てふためき始めたガストンと名前を落ち着かせるように、ノゾミがパチンと手を叩き機転を利かせた。そして名前含め全員で慌てて地下から逃げ出したのである。



「…フ」
「何笑ってるのガストン?」
「君が私の傍に置いてくれと言ってきた時を思い出していた。」
ここは東のミカド国のガストンの自室。
ガストンと名前は2人でお茶を飲んでいた。
そして今、多神連合、メルカバー、ルシファー。そしてYHVHと倒し驚異を退け、人類が少しずつ平和を取り戻し復興を続けている最中だ。
ガストンと名前の2人は復興を進めるべくサムライの仕事に明け暮れていた。その一時の休息を2人で取っている最中が今である。
「なあに、なんでそんなこと今思い出しているの」
クスッと恥ずかしそうに話す名前。
「いや、こうやって君と2人でいれることが嬉しく思うのだよ」
「昔のガストンならそんなこと絶対言わなかったのに」
「…私も変わったのだよ。ナナシ達や君…名前のおかげでな」
「もうっ!恥ずかしいじゃない!」
名前はぽふんと赤く染まり始めた顔を隠すようにソファに置いてあったクッションで顔を隠した。
「フン、君は相変わらずだな」
やれやれという態度を出しながらも少し表情が柔らかくなったガストンが名前の顔を隠しているクッションを奪い取る。
「君が…名前が傍に居てくれてよかった。感謝する。」
「ガ、ガストン…」
ぽぽぽっとみるみるうちに薄く色づいていた頬が更に真っ赤に染まっていった。
「も、もう〜!いつからそんなに恥ずかしげなくかっこいいこと言えるようになったの〜!」
「私は昔からかっこいいだろう!何故ならナンバーワンのサムライなのだからな!」
「そ、そこはいつも通りなのね…」
ふふんと胸を貼るガストンを横目に名前は熱くなった頬を冷やすことで頭がいっぱいになっていた。

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