give me everything1



「おあいて〜!」

「なまえお嬢様」

学校帰り、いつもみたいに校門で待っているの自分の執事に手を振る。
彼は迎えに来てる他のどの執事よりも凛としていてカッコイイ。

「おあいてさん素敵よね!」

「ほんと羨ましい…」

友人が口々に彼を褒めている。
私は彼女達に別れを告げて、執事の元へ急いだ。

「お嬢様、どうぞお車へ」

荷物を受け取り、優雅に車内へエスコートする姿は綺麗で完璧で非の打ち所がない。
だけど、それは表の姿。

「はい、お疲れさま!
帰ったらティータイムの用意するから!
今日はなまえの好きなチョコレートケーキだよ?」

「やったぁ!」

さっきまでの堅苦しい雰囲気とはうって変わって、車内は和やかなムード。

「お兄ちゃん、今日も皆がカッコイイって言ってたよ?」

「そりゃ、俺はなまえの自慢の執事だから当たり前でしょ?」

なんて、さっきまで執事として引き締まった表情をしていたおあいてお兄ちゃんも、こうして二人きりになってしまえば笑顔を見せてくれる。
お兄ちゃんの目尻が優しく下がり、光が弾けるような周りが明るくなるこの笑顔が大好きだった。

「あ、おあいてお兄ちゃん。今日はちょっと相談したい事があるの…」

「ん?何?」

「車の中ではちょっと…
後でお茶する時にいいかな?」

「もちろん!なまえのためなら!」

今日は学校で私にとって大事件があったから、話を聞いてほしかった。
何でも相談出来るから。

そう、お兄ちゃんもとい執事のおあいては私にとって本当のお兄ちゃんみたいに大切な人。
小さい時からずっと私のそばにいてお世話をしてくれた。
皆の前では「おあいて」って呼ぶけど、昔から2人きりになると今みたいに「お兄ちゃん」って呼んで敬語も何もなく喋る。

おあいてお兄ちゃんと2人だけの時間は、財閥の令嬢って言う肩書きを忘れることができる唯一の時間。
いつも優しく私の事を見守ってくれるお兄ちゃんの事が大好きだった。


「あれ〜?おかしいなぁ」

自分の部屋に戻った私はがさがさと探し物をしていた。
鞄の中をひっくり返して探すけど、肝心なものがみつからない。お兄ちゃんに相談したいものが出てこないの。
制服のポケットも確認したけどやっぱりなかった。

「どこいっちゃったんだろ?」

途方に暮れていると、コンコンと誰かが部屋をノックする。

「なまえお嬢様。
ティータイムの準備をしてよろしいですか?」

「お願いするわ」

大好きな執事の声。
カラカラとティーセットのワゴンを押して部屋に入ってきた。

ひとまず探し物に区切りをつけて窓際のテーブルの席につく。
だけど、お兄ちゃんはワゴンを停めるもお茶の準備をする事もなく私の方を見つめたまま。
そこにはいつもの笑顔はなく、問い詰める様に浴びせられる視線が痛かった。

「…お兄ちゃん?」

おあいてお兄ちゃんの違和感が何だか怖い。

「なまえ、これ何?」

彼が私の目の前に突き付けたのは、真っ白の便箋。

「あ!!それ…!」

まさに探していたものだった。
今日の昼休みに隣のクラスの男子からもらった手紙。

「"僕はいつも明るくて笑顔のなまえさんが
 好きです。付き合ってください"
 って何なの?これ」

内容を読み上げるお兄ちゃんの声がいつもよりも低くて威圧的。 明らかに不機嫌だった。

「ちょっと待って!」

怒っているお兄ちゃんは怖いけれど、でも私も納得がいかない。
負けない様に大声を出して立ち向かおうとする。

「私がもらった手紙を何でお兄ちゃんが持ってるの!?
 さっきからずっと探してたんだよ!!」

こんなの初めてもらって、びっくりしてどうしていいか分からなかったから、おあいてお兄ちゃんに相談しようと思ってた。
私よりもずっと年上だから、いいアドバイスをくれるんじゃないかって思って。

「鞄の中を確認してたら出てきたんだよね。
もしかして、相談ってこれの事?」

「そうだよ!
お兄ちゃん、私の鞄の中を勝手に見たの!?」

「もちろん。いつも確認してるよ。鞄だけじゃない。携帯も手帳も何もかも。
 だって俺はなまえの執事だから」

「えっ…?」

その答えに固まってしまった。
驚いた。
私のプライバシーが存在してなかった事に。

「なんでそんな事するの…?」

「なまえを守るためなんだ。
 こーゆー言い寄ってくる変な男から守れるのは俺だけだから」

「何それ!!」

自分の行動を正当化してくるオッパに怒りが込み上げてくる。

「執事だからって、勝手に見るなんて最低だよ!」

勢いよく立ち上がりながら、怒りに任せてに大声で怒鳴った。

「お兄ちゃんなんか大嫌い!」

思ってもない言葉を浴びせてしまう。
おあいてお兄ちゃんは目を見開いたまま
その場に立ち尽くしている。

「あっ…」

しまった、言い過ぎた―――

「おあいて…」

我に帰った私は、謝罪しようとしたけれど
一瞬泣きそうな表情をして、無表情になった執事を見ると何も言葉を発する事ができなかった。

いつも笑顔を絶やさない大好きなお兄ちゃんのこんな顔を見るのは初めてで…

じわじわと不安が足元から登ってくる。
動きたいのに足が床と同化したみたいに動かない。

「なまえ」

名前を呼ばれた瞬間、腕を掴まれてベッドに突き飛ばされる。

「痛っ…!」

背中をマットレスに打ち付けられて、身体全体に衝撃が伝わる。
慌てて身体を起こそうとするも、すごい力で両腕を押さえつけられて、上からは影が落ちてくる。

「お兄ちゃん、何すんの!?」

視線を上へ向けると、おあいてお兄ちゃんが四つん這いになって私を見下ろしていた。

「いいコト」

今までこの天使の笑顔に恐怖を感じた事があっただろうか。
大切な人の瞳にはかつて見たことない様な暗い暗い光が宿っていた。

「なまえが誰のものかはっきりさせないきゃダメでしょ?」

お兄ちゃんの物々しい雰囲気とは裏腹に、触れる唇は優しくて。
初めは羽根で撫でるように優しくキスをしていたのが、舌が捩じ込まれて段々と深くなってきた。

「ん"んっ…」

息も出来ないようなキスに溺れさせられている感覚。
夢中で酸素を求めていると、いつの間にかおあいてお兄ちゃんの手が直接肌に触れていた。
ようやく解放されて、自分の姿を確認するとブラウスは脱がされていて、スカートも太股まで捲し上げられていた。

「ちょっと!おあいて!」

拒絶の意味を込めて、あえて執事として呼んだ。

「お嬢様、大丈夫ですよ?
私が男というものを教えて差し上げますから」

なのに酷く楽しそうに口角を上げる執事。
目の前で私に跨がったまま身に付けていたベストを投げ捨て、シャツのボタンを外している彼はずっと一緒にいるはずなのにまるで知らない人みたい。
私の記憶にあるお兄ちゃんとはほど遠かった。
はだけたカッターシャツから覗くその肌は驚くくらいに白くて綺麗だった。

「やぁっ…ダメ…!」

ちゅっと音を立てて、首筋や胸元に吸い付かれる。荒い呼吸と鋭い目付きにはだけたカッターシャツでのし掛かる彼はとても怖かった。

「ダメって言ってるけど、身体は正直だよ?」

「ひゃんっ…!」

ブラジャーが外されて、すでに少し尖っている先端に優しく舌を這わされている。
お兄ちゃんのシャツが下がり、半分脱げた服から肩が露になった。
いつもは見えなかったけど、がっちりとして鍛えられてるその身体は…

ああ、そっか…
"お兄ちゃん"じゃなくて"男の人"だったんだ。


「あっ…ふぁ…」

乱れた衣服から覗く肌と熱すぎる体温に頭がクラクラする。
そして、初めて与えられる刺激は強すぎて身体から力が抜けていった。



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