blindness
「はぁっ…おあいて、どうして…?」
彼との行為がいつもと全く違う事に戸惑いが隠せない。
最近、ずっと会ってなくて
久しぶりに会えたと思ったら、いきなり行為が始まった。
「うるさい。黙って」
冷たく言葉を放つ彼。
耳を噛まれ、そのまま耳朶を舌でなぶられる。
目隠しをされ、両手を抑えつけられた私は、普段より敏感。
耳許でピチャピチャと音がして、舌の感覚が艶かしく
「うぁ…あ…ん…」
少しの刺激で感じてしまう。
視界を奪われると、感度が増幅するのは真実で。
神経が研ぎ澄まされて、
いつもよりも感度が増しているのが自分でも分かった。
媚薬を飲まされたみたいに、肌が触れ合うだけで感じてしまう。
「いつもよりキツ…」
性急に私の中に侵入し
正面から激しく腰を打ち付ける。
おかしい。
いつもの彼じゃない。
普段は、私の反応を見て優しく抱いてくれるのに…
「はぁっ…あぁ…ん」
「ほら、もっと腰振って。
感じてんでしょ?」
膣内にいるのは、彼の筈なのに
まるで別人みたい。
もう解らない、貴方の事が…
ずっと傍にいたはずなのに
貴方の事が見えなくて
ギシギシとベッドが軋む音と
彼の息遣いだけが妙に耳に残る。
いつから?
一緒に居ても会話がなくなったのは
どうして?
会いたいと素直に言えなくなってしまったのは
そして心は離れて
互いに連絡も取らなくなった
「っ、はぁっ…あぁん…!」
奥を責められ感じてしまう
神経が全て子宮に集中しているみたいで
突かれる度に、身体全体が痺れる
「こんなのやぁ…」
不安だった
貴方が他に大切な人できてしまったんじゃないかって
だけど今更、確かめる事も出来ずに
ただ、向き合う事から逃げてた
「何言ってんの?此処は俺を離さないくせに」
彼が揶揄するように笑う。
激しい腰の動きで与えられる快楽に溺れてしまった。
感覚が研ぎ澄まされたせいで、
快感すら凶器に変わる。
「おあいて…やぁ…おあいて…
怖いよぉ…」
恐怖に耐え切れず、必死に彼の名を呼ぶ。
「…なまえ」
ポタッと私の頬に、雫が落ちてきた。
これは――――
「……泣いて…る…の…?」
私が息も絶え絶えにそう呟くと
彼は腰の動きを止め、私の両腕を掴む力が抜けた。
視界が開けると、至近距離で涙を流すおあいての顔が飛び込んできた。
涙袋の膨らんだ、男性というには可愛らしい瞳から涙が絶えずこぼれおちる。顔を歪めて酷く苦しそうだった。
腕を伸ばそうとするも、散々弄ばれた身体にそんな力は残ってない。
すると、おあいてが私に手を伸ばした。
彼は震えていて
抱き締められると痛いくらいに不安が流れ込んできた。
何だ、同じだったんだ…
朦朧とした頭にぼんやりとそんな事が浮かんだ。
「…はぁっ、動くよ」
再び律動が始まる。
グチョグチョに溶けた私の膣内は深く抉られていた。
しかし最早、私には喘ぐ力さえ残っていなかった。
愛していると伝える事も、彼の名を呼ぶ事すら出来ない。
「…なまえ、行かないで」
薄れ行く意識の中で、彼の声だけが響いていた…
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