deep red
「おあいて…止めてよ…お願い…」
「…俺には指一本触れさせないくせにあんな男には肩まで抱かせるのか?」
イライラがずっと止まらない。
ベッドになまえを組み敷いて、抵抗するコイツの服に無理矢理手をかける。
今日は大学のゼミの忘年会だった。
上級生と合同だったから先輩達も来てて、なまえはそのうちの一人の男と親しげに話をしていた。
その姿にイラついて、ガンガン酒を煽ってしまった俺。
「ちょっと…!おあいて…大丈夫!?」
「飲み過ぎた…」
心配そうに駆け寄ってくるなまえの肩を借りる。 一次会が終わる頃にはかなり酔っ払ってしまったみたいで足元がふらついていた。
「なまえちゃん悪いけど、コイツ送っててやって。
俺、二次会も仕切らねぇとダメだから」
「うん。任せて!」
店を後にする時、幹事の俺の親友が申し訳なさそうになまえにそんな事を頼む。
「ほら?しっかりして?もう少しだからね?」
「あぁ…」
互いに独り暮らしで近くに住んでるコイツをいつも送って帰るのは俺の役目だったが、今日は逆。なまえが俺を送ってくれた。
心配そうに背中をさする手は優しくて温かい。
けれど、その優しさが今は憎かった。
「やぁっ…!?どうしたの!?」
「他の男にいい顔してんじゃねぇよ」
部屋まで送ってくれて、親切に介抱までしてくれていたコイツをベッドに押し倒す。
あんな男には笑顔を見せていたのに、今一番そばにいる俺には拒否の言葉ばかり浴びせる目の前の女に怒りが湧いてくる。
怯えるなまえを鋭く睨み付けた。
「お前は俺のもんだろ?」
煌々と明かりのついている部屋で、なまえは全てを俺にさらけ出していた。 ベッドの周りにはアイツと俺の服が散乱している。
確かに彼氏じゃないけれど、それでもコイツに一番近いところにいる男は俺だと思ってた。
同じゼミになって仲良くなって、なまえがまだ誰のものにもなったことがないと知った時、俺が守りたいと思った。
汚されない様にとコイツの周りを常に旋回して、他の男が近づけない様に威嚇していたんだ。
まるで、背ビレだけを見せて泳ぐ鮫の様に。
「やだ!やだ!止めてよ!!」
騒いで暴れるなまえを黙らせる為に噛みつく様に塞ぐ唇。
酸素すら入る隙間を与えたくなくて荒々しく舌を絡ませ、その口の中を懐柔した。
角度を変えて何度も何度も口腔内をしゃぶりつくしてやるとコイツの腕から力が抜けていくのが分かり、思わず目を細める。
怒りでかつての決意はいとも簡単にまるで泡の様に消えて無くなった。
「おあいて…お願い…」
「うるさい。感じてる癖に…」
嫉妬に支配された俺は、酔いに任せて泣かせて俺だけを感じる様に強要する。
雪のような肌を持つしなやかな身体は美しい白魚の様で、余りに魅惑的で思わず喉が鳴ってしまった。
うっすらと桜色をした胸の先端に舌を伸ばして口に含む。思い切り吸い付いたり、甘く噛みつくと痛みなのか快感なのかどちらとも取れる高い啼き声を上げる。
気分は高揚して、そのまま秘部に手を伸ばし誰も入ったことのない蜜壺も暴いて指を突き立ててやった。
「おあいて…!」
拒絶の意味を込めて呼ばれる自分の名前に、傷つくどころか情欲が煽られて更に激しく指を動かし、蜜を滴らせる。
「ほら、ぐちゃぐちゃになってる。
気持ちいいんだろ?」
ひくついてだらしなく愛液を垂らしているソコを見つめて満足げになまえに問いかける。
汚さないと誓ったはずなのに…
結局、俺自身が汚してしまった。
「やぁっ…!痛い…」
逃げようと身体を捩ったコイツをそのまま四つん這いにさせて、後ろから奥を抉る。
そこで気が付いた。
なまえは守るべき存在じゃなくて、獲物だったんだと。
泳がせてじっと待ち、隙が出来た瞬間に背後から喰らい付く俺は、なんて狡猾なんだろう。
そんな自分に嫌悪を覚えながらも背中に覆い被さり、その白くて細いうなじに歯を立てる。
鮫ってのは行為の最中に雄が雌のヒレに噛みつくらしい。だから、性行為の経験のない雌の鮫のヒレには歯形がない。
こいつの肌もそうだよな。
真っ白で穢れないそれに俺のものだと言わんばかりに跡を付ける。
いっそ、噛み千切って俺だけの目にしか触れないようにしてやりたかった。
いつも物分かりのいい友達のふりして、ほんとはこんな浅ましくて獰猛な本性隠してただけだったんだよ、俺は。
彼女を傷付ける度に、透明な海に鮮やかな赤がゆっくりと広がっていく。樹木が根を張るように、じわじわと赤に蝕まれる感覚。
それでも、初めて味わう彼女の身体に酔いしれて無我夢中で貪る。
俺が責め立てる事で、涙を流し、俺と自分の唾液で濡れた唇から喘ぎ声を漏らすなまえ。肌が上気しピンクに染まり、身体を跳ねさせるその姿に硬さと質量は増して、呼吸は荒くなりますます激しく打ち付けた。
「おあいて…やだぁ…!!」
涙と涎でぐちゃぐちゃになっているなまえが悲痛な声を上げて、とうとう絶頂に達した。 大きく身体をくねらせて、そのままぐったりとベッドに四肢を投げ出す。
「っ…あっ…」
しっかりと絡み付いている彼女の肉圧に耐えられず、腰を掴み今まで我慢していた欲求を一番奥に吐き出した。
自分でも驚く位の大量の精液がなまえの胎内に流込んでいく。栓をしているはずなのに白濁が溢れてくるから、それにまた興奮を覚える。
まだこんなのじゃ足りない。
跡形が残らない位に喰い尽くしてやりたいと思う俺はどうかしてるんだろうな。
結局、その後も腰の動きは止まらなくて、何度も何度も中に熱を放出した。
「なまえ…」
愛しくて仕方のないはずの女の名前を呼んでいるはずなのに、辛く振り絞る様な声しか出ない。
「ごめんな…なまえ…愛してる…」
意識が飛んでしまった彼女をそっと抱き締める。
その両脚の間からは俺の欲望が線を描いて黒いシーツに白い染みを作っていた。
ずっとお前の事が好きで、けれど勇気が出せなくて、ヤキモチ妬いてこんな風にしか想いを伝えられない俺を許して欲しい。
カッコ悪くて、卑怯でごめん…
申し訳ない気持ちで眠ってしまった彼女の顔を見つめ、熱が冷めやらないまだ汗ばんでいる肌にそっと手をのせる。
さっきまでが嘘みたいに安らかな柔らかい表情の彼女に安らぎを覚えると、視界がぼやけてきた。
身体に潜むアルコールによって、意識は段々と眠りの海に沈んでいく。
不安に駆られて胸元のなまえの存在を確かめる様に両腕に力を込めた。
怖いんだ。
このまま目を閉じてしまうのが…
けれど、その思いとは裏腹に次第に瞼は重くなる。
次に目を開けた時、なまえは隣に居てくれるだろうか…
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