midnight delivery1



ピンポーンーーー

深夜、待ちに待ったインターホンが鳴った。

「はーい」

これから始まる初めての体験への期待にドキドキしながら、玄関へと走りドアを開けた。

「「こんばんはー」」

「えっ…」

元気よく挨拶をして立っていた二人の男子を見て凍り付いた。

「「なまえ先輩ー!?」」

「まさかおあいてとおあいて2!?」

「「そうだよ!」」

なんと、現れたのは学生時代の後輩で、社会人になってからもよく会っている仲良しの二人。
黒いパーカーと同じく黒いTシャツ、ジーパンに黒いブーツというラフな格好のおあいてと白いジャケットに薄いブルーのトップスにチノパンという綺麗めカジュアルのおあいて2が立っていたからだ。
キャストを選ぶ際に写真は目元が隠されていたから、線の細い綺麗そうな雰囲気の二人を選んでみたらまさかこんな事になるとは…

「なんでここにいるの!?」

「それはこっちの台詞だよ!なんでデリヘルなんて使ってるの!?」

私の問いかけに質問を重ねてくるおあいて。

「女の子にもいろいろあるのよ!それより家に入って!どういうことか説明してもらうからね!」

さすがに激務で男日照りで、とち狂って女性向けのデリヘルを呼んだとは口が裂けても言いたくない。
「女の子って年齢じゃないでしょ」と失礼発言をしたおあいて2にげんこつをおみまいしてから、家の中へ二人を入れた。


「あんた達、なんでこんな事を…」

リビングでちょこんと正座をしてしょんぼりしているおあいてとおあいて2。そして、その正面で同じく正座をしてそんな二人を見据える私。

「…俺、お金欲しくて。先輩にもっと可愛いって言って欲しくて…」

泣きそうな表情でおあいてが話を始める。
よくよく話を聞けば、おあいてはエステや化粧品などでお金を使い込み過ぎて、借金までしていたらしい。

確かに最近は会うと、前にも増して可愛いって聞いてくる回数が多くなっていた。よくよく思い返せば、エステにも月に何度も行ってたみたいだし、この間、シャンプー替えたと言って、聞いたメーカーもかなり高級だった気がする…


「どうして?おあいてはいつも可愛いし、そのままでも充分素敵だよ?」

「だって、好きな人にはもっと可愛いって言って欲しいじゃん!」

女子かよ!
いや、女子だったな。思考は。
気付いていたよ、私は。

「まぁ、おあいてはわかったとして、どうしておあいて2も一緒に働いてるの?」

彼は別に浪費家でも何でもない、普通の大学生だ。

「だって、幼なじみの不始末は僕の不始末でもあるから…」

大親友のおあいて2はそんな男前な理由でこの商売を始めたらしい。
彼らの美しい友情を出来ればこんな状況で感じたくはなかった。

「なんで相談してくれなかったの?こんな身売りみたいなことしなくても…」

「だって、なまえ先輩に心配かける訳にはいかないじゃん!」

「…それにしても、まさか先輩のとこに来ちゃうとはね」

おあいて2が頭に手を当てて溜息をついている。どうやら、知り合いに利用しそうな人はいないしバレる事はないと思ってたとのこと。多分、私も今日こんな風に会わなければ気づかなかっただろう。

「でもさ、俺達もプロだし、お金ももらってるからそんな事は言ってられないよ」

この事実をどう受け止めるか葛藤していると、まさかのおあいての発言に耳を疑う事になる。

「そうだよね。じゃあ、なまえ先輩、始めようか!」

「えぇ!?」

突然、開き直った後輩達に半ば無理矢理手を引かれてお風呂に連れられてしまった。


「じゃあ、始めるからね」

あれよあれよという間に流されて、結局、マットを敷かれたベッドの上で裸のままうつ伏せになってしまった私に声をかけるおあいて。一緒にシャワーを浴びたあと、持参していたバスローブを身につけた二人はなにやら準備を始める。
部屋も電気は消され、間接照明のオレンジ色の灯りだけの薄暗い空間になっていた。

「初めは本当にただのマッサージだからリラックスしててね」

おあいて2の声と共に背中に冷たい液体が垂らされる感触。

「ひゃっ!?」

「大丈夫だよ。ただのアロマオイルだから」

動揺した私におあいてが優しく声をかけてくれる。そして、マッサージが始まった。
首筋から肩にかけて揉み解すように両手を動かしていくおあいてと足裏を優しくマッサージを始めるおあいて2。

「先輩、どう?」

「ん…背中気持ちイイ…」

「でしょ?俺、自分もエステ通って研究してるからマッサージにはちょっと自信あるんだ」

掌全体をつかって背中から腰へと体重をかけて押しながら揉んでもらい、その後に背骨にそって親指でプッシングされていくのは心地よい。腰も左右を交互に揉んでもらうと、段々とほぐれて軽くなっていく。オフィスワークで座っている事が多いため、知らないうちに疲労がたまってたんだと思い知らされる。おあいては私の疲れがたまっている場所が分かっているのか、そこを重点的にマッサージしてくれていた。

「先輩、ここ痛いでしょ?」

一方で、足の裏のマッサージをしてくれているおあいて2にある個所を押されると痛みが走った。

「うん…ちょっと」

「ここね、ストレスのツボなんだ。他のツボは全然大丈夫なのに、ここだけ固い…」

他の箇所より少し力を抜いて、痛気持ちいい程度の刺激になる様にツボを押してくれる。

「ストレスたまってるのかなぁ…?」

思わずため息を吐いてしまう。
確かに残業はもちろん休日出勤もあるけど、それほど大変だとは自分では考えてなかった。自他供に認める社畜だし、むしろ充実してるとさえ思っていたのに…

「気が付かないところで無理してるのかも。なまえ先輩、あまり無理しちゃダメだよ」

「ありがとう」

全身が解れていく心地よさで、普段は言えないような事も素直に伝えられる。
足つぼのマッサージを終えたおあいて2は、そのままふくらはぎから太ももにかけてリンパマッサージを行っていく。何度も掌で程よい力で撫で上げられると老廃物が流れていく感覚がして、なんとも気持ちよい。

あれ…?
私ってデリヘルじゃなくてマッサージを頼んだっけ?
なんて分からなくなってしまう位に、ふたりのおかげで心地よくなりまどろみに浸されていた。

「だいぶリラックスしてきたね、おあいて」

「うん。そろそろ次の段階いこっか」

「了解!じゃあ先輩、今度は仰向けになって」

意識がふわふわとしたまま、言われるがままされるがままに身体を反転させる。ぼんやりとした視界には天井、そしておあいてとおあいて2の白い顔が映っている。二人はいつの間にかバスローブを脱いでいた。


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