白夜2



「えっ…?」

嬉しそうに笑う彼の意味が分からない。
困惑する私をよそにそのままお構い無しに言葉を続ける。

「例えば…昨日、買い物でワンピース買った事も、コンビニでお気に入りのスイーツ買ったことも、僕に会えなくて一人で泣く夜があることも何もかも…」

「…どうしてそれを」

さぁっと音を立てて血の気が引いていく。

何でそんな些細な事や、私が隠したい事まで知っているんだろう?

「どうしてって…そんなの決まってるじゃん」

今まで感じた事のない恐怖に、身体はカタカタと震えるだけで動けない。

「なまえの事、愛してるからだよ」

耳許で蕩けそうな甘い声で囁いた彼が、そっとキスをする。
そのままおあいては私の両足を大きく広げて、正面から侵入してきた。

「やっ!?これって!」

明らかに違う。
直に熱が伝わってくるこの感覚は…


「待って、コンドームは!?」

「さっきも言ったよね?僕は君の事、何でも知ってるって」

質問に答える事なく、諭すように語りかける恋人。

「なまえよりもなまえの事をよくわかってる」

感触を確かめる様に、ゆるゆると張り出したエラで粘膜を撫でる。

「…例えば、今日が生ですると危ない日とか」

「!?」

「危ないってのも変だね。僕の子を身籠ってくれる絶好のタイミングなのに」

ふふっと嬉しそうに笑うおあいては、いつもと変わらない柔らかいあのふわふわな笑顔なのに、言葉は鋭利で私をじりじりと追い詰めていく。

「今日こそは、ちゃんと妊娠してくれるといいな」

「えっ…?」

一瞬、何を言ってるのか分からなかった。

「だって…いつもちゃんと付けてたじゃない…」

震える唇で、確かめるように、否定を求めて確認する。

「バカだね、なまえは。コンドーム付けててても穴が開いてれば意味ないでしょ?」

普段、他愛ない事を喋っている時みたいにクスクスと笑い声を洩らすおあいて。

「毎回じゃなかったけど、たまに穴を開けてたんだ。小さな穴を」

その口調が、髪をかき上げる仕草が、余りに自然すぎて、信じられない。

不意に明るみになった衝撃の事実。
どうして気づかなかったのだろう…?
今まで何もなかったのが奇跡だと思った。

「やっ…やだっ…!離して…!」

その言葉に不安を感じて暴れるけれど、逆効果で、私の腰を抱える手の力は更に強くなった。

「そんな不安そうな顔しないで?」

優しく頬に触れる恋人の指は酷く温かい。

「離してなんかあげないよ? なまえは僕のものなの」

心底楽しそうに口角をあげるおあいて。
そのまま、激しく腰を打ち付け始めた。

「んんっ…あ…あぁっ…!」

胸の膨らみの先端に吸い付かれたまま、入り口を浅く擦られると声が我慢できない。
さっきあれだけの恐怖を感じたはずなのに、知り尽くされた身体はイイトコロを執拗に刺激されれば、快感に震えてねだる様に彼へと絡みつく。

「やぁっ…!ダメそれっ…!」

貫かれたまま、結合部のすぐ上にある硬くなった突起を刺激されれば腰は跳ねて大きく鳴き声を上げてしまう。

「初めて会った時からずっと可愛いなって思ってた。欲しくてしかたなくなって、それで、君が僕を好きになる様に色々行動した」

そして、恋人は鎖骨に吸い付いて紅い跡を刻む。

「他の男が近づけない様に虫除けするのも大変だったんだからね。まぁ、人を疑う事を知らない君は微塵も気づきもしないで、ちゃんと僕の事を好きになってくれたしよかったんだけどさ」

ぐちゅぐちゅと膣内を擦られれば、肉襞は反応してしまう。
熱い塊に吸い付き、お互いの蜜が溶け合っていく。

「なまえ、そろそろだよね?イッて?そろそろ…」

堪らないと言う様に吐息を漏らすおあいて。
頬を紅潮させて、伏し目がちな目元は睫毛が影を落とし、放たれる悪魔的な妖しい色気に充てられて、背筋がぞくぞくと震えた。

「あぁっ…!やっ…!」

おあいては自分も快感に浸りながらも、私が登りつめていく様子を時折鋭い視線で見つめて、深いところを激しく、そして、時折緩く擦ってくる。
そんな事をされてしまえば、腰の中は耐えきれずに収縮を始めてしまう。

「はあぁっ…!」

達してしまった私は、胎内のおあいてに絡みつき痙攣をする。
力が抜けてぐったりとしているにも関わらず、彼は満足そうに腰を動かし続けていた。


「手にいれてもさ、不安だったんだ。なまえの世界の中心には僕がいないといけない。だから、君の事は全て知りたいんだ。先回りして、常に僕が君の瞳の先にいられるように…」

知らなかった。
大好きだったその優しさが、そんなどす黒い感情の上に構築されていたなんて…

言葉も何も出なくて…
ただ、呆然と身体は揺さぶられるばかり。

「もう、全部僕に任せてよ」

好きだった穏やかな声で悪魔の様に囁く。
その先には絶望しかないというのに。
さも、まるで楽園へと導くようなそんな言葉。

そのまま、覆い被さり、自身を一番奥へと口付ける。
彼が律動のスピードを早めると、比例しておあいて自身が硬さと大きさを増していった。

「…っなまえ」

びくびくと胎内で雄が跳ねた。
そして、熱を噴出しながら、奥へとさらにぐりぐりと先端を押し付けてきた。
いつもの膜越しに伝わる鈍い熱とは違い、熱い液体が粘膜に染み込んでいく感覚だけが朧気な意識の中で浮き彫りになった。

「君はただ僕に溺れてくれたらそれだけでいいから…」

繋がったまま、恍惚に満ちた表情でそっと一束掬った私の髪の毛に口づけるおあいて。

彼の愛情が強すぎて、
余りに眩しすぎて
何も見えなくなる。

真っ白なのに、まるで、暗闇にいるみたいなそんな感覚に襲われる。
あぁ、明るすぎて何も見えない場所は結局、暗闇と同じなんだ。

けれども、無意識に差し出されたその手に縋ってしまう私は、もはや彼がいなければ生きていけないのだろう。

「大丈夫。なまえは一生僕が守ってあげる」

愛したその人の腕は私を自身の胸へと閉じ込めた。


2016.6.18
天野屋 遥か


prev/next

back


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -