what is love



「でもさ、同性愛の何がいけないのか明確な定義なんてないんじゃない?」

隣の席からそんな声が聞こえた。

どうやら、女子グループで雑誌を読んでいて、その内の一人が好きな外国の俳優が同性愛者ということをカミングアウトしたという記事が載っていたらしい。

それで、みょうじは先程の疑問を投げ掛けていた。

「でもさ、おかしいじゃん!常識で考えて。男が男を好きなんて!気持ち悪いじゃん」

「そうかなぁ?たまたま好きになったのが同性の人だったって話だと思うけど…」

「アンタの考え方ってたまについていけないときがあるわ」

溜め息を吐くみょうじの友達。

「ちょ!それよりも二人ともこの記事みてよ!」

すると、そこでもう一人の女子が声を大きくする。

「何?」

「なまえの好きな俳優の…」

なんて、そのまま次の話題に移ってしまい、その話題はそこで立ち消えしてしまったけれど、俺は気になっていた。


「なぁ、みょうじ。さっきの話…」

「おあいて君も変だと思う?私の考え方」

「いや、そうじゃなくて…」

なんだか納得いかないという彼女に、もう少し詳しく話を聞きたいとねだった。

「別に、誰かを好きになることは自由なんじゃないかって思ってさ。きちんと、社会的な義務を果たして生活しているんだったら、それは許されると思うの。付きまとったり傷つけたりしないで、相手に迷惑にならなければさ」

「…お前の考え方すごいな」

「え?だってそうじゃない?ちゃんと異性を好きになる"普通"の人で他人のもの盗んだり、騙したりとかする人の方がよっぽど常識的じゃないし、どうかしてると思う」

「そっか…」

その言葉に救われた。
高校3年になりたてのあの頃、俺はある先生に想いを募らせ始めていたから。
けれど、その人も男で…
自分のこの想いが許されないと思って悩んでいた俺の心がとても軽くなったんだ。


卒業後、俺は想いを寄せていた先生と見事に付き合う事になって。
それで、あの時俺に勇気をくれたなまえにその話を伝えた。
アイツなら理解してくれると思って。
そしたら、案の定、彼女は自分の事の様に喜んでくれた。


「そっか。いいなー!おあいては。相変わらず先生とラブラブじゃん」

卒業後もなんだかんだで連絡を取り合っている俺達。
俺は専門学校からパティシエになって、あいつは大学に進学してキャリアウーマンとしてそれぞれ社会人になっていた。
お互いにそれぞれ酸いも甘いも様々な経験を積み重ねて、大人になった。
そんな俺達は、今日は久しぶりにカフェで近況を報告しあっている。
この奇妙な友情も、もう年季が入ってきていた。

「あの人は、もう俺にとっては先生じゃねぇから」

「だよね。まぁ、あの人綺麗で線が細かったから、あの当時から何となくそうなのかもしれないと思ってたけど…」

そんな事を呟きながら、ストローでアイスコーヒーを啜るなまえ。

「なまえこそどうなんだよ」

「ん…彼氏出来たんだけどさ…続かなくて別れちゃった」

「またかよ」

もう何回この下りを繰り返してるだろう。
社会人になってから、ずっとこんな調子だ。

「だってさ、本当は別に好きな人いるのに、その人忘れる為に付き合っても続く訳ないよ」

俺とは違ってノーマルのなまえ。
しかも、見た目も普通どころかいい方だと思うし、性格もざっくばらんで寛容だ。
男の方が放っておかないと思う。
けれども、彼女が想いを寄せているのは妻子ある男で。
決して届かない想いは、自分よりもよっぽど辛いと思う。

それでも、仕方ないとあっけらかんに笑うお前は、やっぱりあの時…自分の価値観を語ってくれた時と変わらず強いと憧れさえ抱いてしまう。


「じゃあ、おあいてまたね!お店にも顔出すわ」

「あぁ、またな」

そう、なんだかんだで月一回くらいは顔を合わせている。
営業職である彼女は取引先への手土産に俺の店のお菓子を持っていってくれているから。
きっとこの関係はいつまでも続いていくのだろう。
もし、俺が普通の男だったら彼女と結婚していただろうと思う位に存在が当たり前だから。

あぁ、願わくば彼女に幸せが訪れますように…

月並みな言葉で申し訳ないけれど、大切な友人のその去っていく背中にそんな事を願わずにはいられなかった。


2016.4.18
天野屋 遥か


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