Live for the night | ナノ








▼ あの後トイレで何があったのか!?2

「政宗の匂いがするな」

ヘラヘラ笑いながら弓月が私の中へと入ってきた。ジャケットを脱いで、黒いシャツも肌蹴させており妙な色気を放っている。

「あー、もう!そういうこと言うなよな。弓月!」

恥ずかしそうにそんな事を言いながら、私の胸に手を伸ばす政宗。

「…っ!!」

「胸もこっちも大きいことはいいことだ。そうだろう?」

政宗も存在感があったけど、この人のは更に一回り大きかった。押し広げられる圧迫感と擦るエラの強い刺激に耐えきれずに弓月に抱きついてしまう。意外としっかりしている剥き出しの胸板に自然と胸を押し付けてしまう形になった。

「熱いな…そろそろ本気を出すか」

それに興奮した弓月の熱い肉杭はドクンと脈打ち硬さを増していった。腰に手を回し、ゆっくりと腰を動かし始める。
探る様に粘膜を擦っていた楔は段々と速度を増して、奥へと進んできた。私を壁に押し付けて深くへ突き立ててくる。

「あっ…はぁ…」

「弓月の気持ちいいか?」

「あっ…いいよぉ…気持ちいい…」

最奥までいつの間にか侵入を許し、貫かれる度に全身を突き抜ける甘すぎる刺激に理性が飛んでしまった私。政宗の恥ずかしい質問にも素直に答えてしまう。

「でも、俺の方が良かっただろ?」

そして、奴は私の反応を楽しむように意地悪な質問を重ねながら胸を揉んでくる。

「なんだ弓月。俺の方が良いに決まってるだろ」

相方の挑発に怒った弓月が政宗に暴かれてしまったあの場所をガツガツと擦り上げてくるから、きゅうきゅうと締めつけてしまう。
あまりの気持ちよさに脳がアイスクリームみたいにどろどろに溶けていってしまう感覚。

「ねぇ…弓月…キスしてよぉ…もっと気持ちよくなりたい…」

「…初心な女かと思ってたら、上手く男を誘えるのか。これは応えてやら無いわけにはいかないな」

理性の飛んでいる私が自分の欲望のままに舌だしてキスをねだれば、その半開きになった口に舌を捩じ込んでくる弓月。
何か失礼な事を言われた気がするけど、そんな事よりもこの濃厚な口づけに集中する。
おまけに、政宗は長い舌で耳を舐めたり噛んだりしながら、胸の先端をクニクニと指で摘まんで遊んでいた。

感じる場所ばかりを一気に刺激されて、段々と腰が浮いて中が痙攣を始める。

「もっ…無理…!」

とうとう、またイカされてしまった。
弓月の両腕にしがみつきながら、ビクビクと身体を震わせる。

「っ…俺も…限界だ…」

膨張したままの自身を抜いたと思ったら、左の太股に熱が放たれた。視線を落とすと、涙でぼやけた視界の中で両方の太股が二人の白濁に染まっていた。

―天国を見せてやる―

弓月のその言葉は嘘ではなかった。
数少ない男性経験の中で群を抜いて気持ちよかったのは真実だから。
けれども…

なんて、罪悪感を感じていた時だった。

「このまま帰るには身体が辛いだろ?
車を手配して送ってやる」

いきなり耳を疑う言葉が聞こえた。

「そうだな。俺も今日はどうせあと暇だし、付いていこうかなぁ」

おまけに政宗の余計な一言も。
先ほどの濃厚な情事の余韻も酔いも何もかもが吹っ飛んでいく。
すっかり元通りにスーツを身に着け、すっきりとした邪気のない笑みを浮かべる弓月は
本当に私の事を思って申し出てくれているんだろうけどさ。

「いや!大丈夫だから!元気元気!!」

このままじゃ、自宅までばれてしまう!
てか、ありがた迷惑とはまさにこの事――――― !!

恐怖に戦慄した私は光の速さで服を整え、あの二人を振り切ってそのまま帰ってきた。
お会計だけは忘れずに済ませて店を出てきた自分を褒めてやりたい。


「…今日の事は忘れよう」

布団に潜りこんで小さく呟く。
慌てて帰ってきた私は身体だけは綺麗に洗って、ベッドに飛び込んだのだ。

今日が金曜でよかった。
明日からの休日でゆっくり休んで忘れよう。
ホストでしかも同時に二人の男性と関係を持ってしまった事は、さすがに友達にも言えないし、自分でも有り得ないと思う。

あのお店に通うのは確かに楽しかったけど、こんな事になってしまってはもう通えない。

寂しくなるけど仕方ないな…

そんなことを思いながら、眠りについた。


しかし、次の日ーーーー

「もしもし。俺だ。弓月だ」

穏やかな昼下がり、家でのんびりしていたところ、知らない番号からの着信が入った。
そして、通話ボタンを押したところ、今一番会いたくない人物その1の声が聞こえてきたのだ。

「おい!弓月!電話貸せよ!」

「嫌だ。政宗は待ってろ」

「俺も話したいんだよ!」

顔色が引いていくのが自分でもわかる。
まさかの電話。
しかも、二人が電話を取り合ってるみたいで向こうが騒がしい。
鈍い音が聞こえたから、おそらく弓月が政宗を叩いたのだろう。

「…どうしたの?」

恐る恐る尋ねる。

「昨日はどうだったか?身体は大丈夫か?」

「…お気遣いどうも。…大丈夫です」

「どうした?敬語になる必要はない。お前は特別な客だ」

そーゆー問題じゃないよ!
恋愛関係にもないお前らと致してしまったことが気まず過ぎるんだ!

と、心の中で毒づいてみる。
もちろんチキンな私にはそんな事を言う勇気もないけど。

「で、次はいつ来るんだ?」

「いや…次はちょっと…いつになるか…仕事が忙しすぎて…」

何回か通ったけど、こんな風に電話で営業されるのは初めてで戸惑う。

「何?仕事が忙しい?
 じゃあ、俺の所へ来るか?働かなくても一生面倒見てやるぞ?」

えぇー!?
何言ってるのこの人!
ホストの接客とは思えない重い言葉。
あ、でもこの人はオーナーだからホストじゃないのか!

なんて、ぐるぐる考えていると、向こうでガタガタと音がして、
"痛っ!おい!政宗!"っていう弓月の悲鳴(?)が聞こえた。

「よぉ!元気か?俺だ!政宗だ!」

その直後にいつもの明るい飄々とした声が耳に飛び込んでくる。

「今度は政宗か…」

「君さ、このまま店に来なくなるつもりだろう?」

「うっ…!」

いきなりの奴の的確な指摘に、思わず呻いてしまう。
恐ろしい男…
驚かせる事に命を懸けるあまり、人の思考を読む技術も一流だ。

「いいのか?それで」

「いいも何も…」

どんな顔をして店に行けと言うの?―――

そう言葉を続けようとした次の瞬間、とんでもない一言が。

「光長に会わせてやるって言っても来ないのか?」

何――!?

そんな事を言われては話が変わってくる。

「待って!?そんな事出来るの!?」

「あぁ。アイツは俺の後輩だからな。お前も何回か俺とアイツが雑談してるの見た事あるだろう?」

確かに、何回か親し気に話している場面を見た事があった。
で、政宗に光長さんをテーブルに呼んで欲しいとお願いしたのに、無理だと断られていたのを思い出す。

「…本当なんでしょうね?」

「あぁ。仕事だから、そこについては嘘はつかない。俺たちの商売は信頼関係が大切だからな」

声の調子から電話の向こうでニヤニヤしている政宗の様子が手に取るようにわかる。

「で、どうするんだ君?光長に会えるチャンスだぜ?これを逃したら無理だ。
 君の給料程度では、一生奴とは酒は飲めないだろう」

真っ白な悪魔の囁き。
けれども、彼が言っている事は紛れもない事実だとは自分でも分かっている。

「…来週の金曜、いつもの時間に行くから!
 その代わり、光長さんに会えなかったらもう二度お店には行かないからね!」

見事、口車に乗せられた私は光長さんとお酒を飲める喜びで、この二人に会う気まずさは何処かへ行ってしまった。

「そうこなくっちゃ!じゃあ待ってるからな!」

政宗の弾んだ声を最後に電話は切れた。

こうして結局、また私はホストクラブへと向かってしまうのであった。

2016.9.12
天野屋 遥か



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