Live for the night | ナノ








▼ 後日来店時のセクハラ 後編2

「…えっ!?ここどこ?」

朝、起きたら知らない部屋にいて、大きなベッドに寝ている私。
飛び起きて見回せば、高級ホテルの一室の様な空間に一人きりで呆然とする。

記憶を手繰り寄せると、ホストクラブのVIPルームであのろくでなし共に散々抱かれたところまでしか記憶がない…

視線を落として自分の状況を確認すれば、汗とその他諸々でべっとりしていたハズの身体はキレイになっていて、ご丁寧に下着まで付けられていた。

これはもしや…

「やっと起きたか」

固まっていると、突然ドアが開き、上半身裸でジーパンだけを身につけた弓月が立っている。
手に持ったマグカップで優雅にコーヒーを飲んでいた。
モデルの様な出で立ちで、この空間に負けない様な…と言うよりむしろ、彼がいる事でこの空間が完成されている様な印象を受けた。

「弓月…ここって…」

「あぁ、俺のマンションだけど」

予想通りの聞きたくない答えが返ってきて、ため息を吐いて頭を抱える。
そんな私に相変わらずの笑顔で近づいて、ベッドの縁に腰掛けてそっと頭を撫でた。

「おはよう!早苗、昨日は途中で失神するから驚いたよ」

すると、政宗も入り口から顔を覗かせてくる。
大振りの黒縁眼鏡をかけ、真っ白なシャツを羽織って淡いグレーのジーパンを履いていた。奴は私の様子を確認すると、コーヒーを用意すると告げて再びドアの向こうへと消えていく。

新鮮だなぁと思いながらも、案の定とも思う。
二人ともスーツ姿しか見たことなかったけど、こういうラフな格好でも美貌は損なわれる事はない。
美しい人間はどんな恰好をしていても似合うものなんだと思わされた。

「身体はもう大丈夫か?昨日は俺たちのせいで無理をさせてしまって悪かったな…」

心配そうに顔を覗く弓月に、何故かこっちが申し訳なくなってしまう。
本当にこの2人のろくでなしのせいなのに、何故か怒る気にはなれない。

「ちょっと腰が怠いけど何とか…」

「そうか…これから朝食をとるが、俺がテーブルまで運んでやろうか?」

弓月が私を抱きかかえようとするから、丁重にお断りして自分で起き上がる。
家主のシャツを借りて羽織り、ダイニングへと向かった。

「”彼シャツ”ってやつか…なかなかいいな」

「違うから!あんたと私は付き合ってないから!あくまで、ただの客とホストクラブのオーナーだから!」

いきなりアホな事を言い出すから、全力で否定するも、奴は上機嫌に私の腰を抱いてエスコートしてくる。

そして、当然の様に三人でテーブルを囲み、
すでに用意された朝食をいただくことになってしまう。
それぞれの席にこんがりといい色に焼けたフレンチトーストやスクランブルエッグ、サラダが並んでいた。

「…これ、誰が作ったの?」

トーストを一口食べて、思わず顔を上げる。

「俺だ。どうした?まずいか?」

すると、政宗が心配そうにこちらを窺う。

「違う。美味しいからびっくりしただけ。意外、政宗が料理得意なんて…」

「 驚いたか? 俺と付き合えば、この美味しい朝メシが食べ放題だぞ?」

素直に感想を伝えれば、イタズラ成功と言わんばかりに満面の笑みを浮かべる。

「…いや、いいですわ」

いくら美味しいご飯が食べれると言っても、どうせそれ以上にろくでもない事に付き合わされるのは目に見えているから、即答する。

で、食卓を囲みながら、もちろん話題は昨日の事に…
昨日、政宗とシてる最中に失神してしまい、この弓月のマンションに運ばれてきたという経緯を聞かされた。
そして、二人によって身体を拭かれたらしい。

「服もこの通り、きちんとしておいたぞ」

「ありがとう」

大きな袋から取り出されたワンピースはきちんとクリーニングされており、ご丁寧に新しいストッキングまで用意されている。
しかも、私の普段使いよりもずっと高級なものだった。
洗面所を借りて、身支度を済ませる。

「じゃあ、そろそろ帰るわ。ありがとう」

軽くメイクをして、元通りの格好になった私は2人に頭を下げる。
原因は奴らとはいえ、きちんと後処理をしてくれてこうして家に泊めてくれた事は感謝してるから、お礼だけ言って帰ろうとした。

ところが…

「さ、送ってやろう」

いつの間にか黒いTシャツを身に着けており、車のキーを取り出して満面の笑みを浮かべる弓月。

「お!俺も付いて行こう!君がどんな所に住んでいるのか興味あるからな」

「いやいやいや!大丈夫だから!ほんとに!自分で帰れるし!!」

政宗まで乗り気かよ!
この2人に住んでる場所までバレたら、いよいよ本格的にマズいのは火を見るより明らかで。
全力で遠慮して、慌てて玄関へ向かおうとするも、行く手を二人に阻まれる。
大きく両手を広げてとうせんぼをする二人は小学生男子にしか思えない。

「ちょ!どいてよ!」

「心配するな。俺はこう見えて安全運転だ。ゴールド免許だからな」

「違う。そう言う事じゃなくて…」

どや顔で自身の運転免許証を掲げる弓月は、例に漏れず私の話を聞こうとしない。

結局、この状況では断れる訳もなく、がっくりと項垂れたまま、とんでもない高級車で結局家まで送り届けられてしまったのだった。


2017.3.14
天野屋 遥か


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