high school romance | ナノ








▼ 転校生がやってきた!1

「あ〜、最悪…」

講堂での始業式を終えて、教室へ戻ってくる。
新学期のスタートは最悪でため息しか出ない。

「仕方ないじゃない。都が遅刻したから悪いのよ」

「それは言わないで」

着席して落ち込んでいると、隣の席の友達にそんな事を言われる。
お金持ちのあんたたちは大きな車で家から学園まで送迎してもらえるだろうけど、私の家はただの一般家庭だから電車とバスを乗り継いでここまで来なければならないと内心毒つく。

そう、昨日、結局遅刻した私は一か月の寮のトイレ掃除を命じられた。
高等部3年になるというのに、自覚が足りないという理由で期間が長いのだ。
頬杖をついたまま憂うつになっていると、担任の先生が入ってきた。

「今日から皆さんと共に学ぶ仲間が増えます」

その言葉にクラス全員が驚いた。
他の普通クラスならまだしも、ウチのクラスに転入生はあり得ない。
私が在籍しているこの特別クラスは、高等部へ進学時に作られる色んな分野に優秀で家柄も素晴らしいお嬢様ばかりで構成されているからだ。
カリキュラムも別に組まれているし、いわゆる英才教育を行っており途中から加入なんて事は学園が許さなかった。
そして、庶民の私がこんなすごいクラスにいる理由は、特待生として奨学金を貰うためにこのクラスに在籍することが条件だからだ。

「お二人とも、入りなさい」

先生の呼びかけに二人の女子が入ってきた。

「…すっご。めっちゃキレイじゃん」

見た瞬間、思わず口から出た独り言。

教壇の前に並んだ女子達は二人ともマネキンの様にスタイルもよく、とても整った顔立ちをしている。

「栄城紗耶です。よろしくお願いします」

一歩前に出て笑顔であいさつをする一人目の転校生。
見た目に反して声が少し低めの彼女は、左の頬に出来るえくぼと笑った時に花が咲くように周りの雰囲気が明るくなるのが印象的。色素の薄めの髪を後ろでまとめてお団子にしているのが、清楚で似合っていた。


「…栄城麻耶です」

二人目の転校生は、つまらなさそうな表情で名乗っただけだった。
先ほどの紗耶さんとは正反対といった感じ。ただ、妹の方も声が女子にしては低めだから、そういう家系なのかと思う。派手な顔立ちに黒色のロングヘアーをツインテールをしており、制服のスカート丈も膝よりかなり上でニーハイを履いている。
…なんだかアニメやゲームのキャラを意識したような恰好に、オタクっぽい女子だなぁというのが私の感想だった。

「お二人は双子の姉妹で、名字を聞いてお気づきになられたと思いますが、お二人はこの学園を設立された栄城財閥の一族の方です。では、皆さん仲良くして早くクラスに馴染めるようにしましょう。お二人ともあちらの空いてる席へ」

なるほど、理事長の親族だから編入が許されたのか。
言われてみればどことなく、始業式の前の日に会った双子の兄弟に似ている気もするなぁ
なんて一人で納得していると、私の後ろ、一番窓際の二つの空席に二人がやってくる。
二人とも、私の隣を通る時になんだかじっと見つめてきた気がした。
けれども、面識もないし、ただの思い過ごしと考えてすぐに授業の準備を始める。

一気に二人も転校生がくるなんて、不思議だなぁとその時はただそれだけだった。


「紗耶さん、お話しましょう」

「ええ、もちろん」

クールな印象を与える整った顔とは裏腹の笑顔で親しみやすい雰囲気を醸し出てすぐにクラスの人気になった紗耶さん。
休み時間には、クラスメイト達に囲まれている。どうやら帰国子女らしく、その話やこの学園での行事についてなどさまざまな話題で皆と盛り上がっていた。
私は人見知りなのと、整った顔立ちの冷たい印象が強くて近寄りがたさを感じていたため、それを遠巻きに見ていただけだった。
一方で、その妹である麻耶さんはいつもつまらなさそうにしていて、クラスメイトと関わりを持とうとしない。しかも、休み時間になる度に何処かへ行っており、皆から話しかけづらい人という印象を持たれて敬遠されていた。

すい星のごとく現れた転校生とは特に接点もないまま、1週間程が過ぎたある日、事件はおきた。


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