high school romance | ナノ


▼ 転校生がやってきた!2

「ん?」

授業中、後ろから足に何かあたった感触がして、椅子の下を覗き見ると消しゴムが落ちていた。

「拾いなさいよ」

麻耶さんが後ろから命令してくる。

「…はい」

その傲慢な態度に少し苛立ちながらも、困るだろうと親切心で拾い後ろに振り返って消しゴムを彼女の机に乗せた。
すると、そこで信じられない事が起きた。なんと、彼女は当然と言わんばかりにフンと鼻を鳴らすだけで、シッシと追い払うように手を動かしてきたのだ。

「ちょっと!お礼くらい言ったらどうなの!?」

親切にしたのにそんな失礼な態度をとられた私はブチ切れて、授業中にも関わらず大きな声を上げてしまった。このクラスにはこんな失礼な行動をとる人はいない。皆、礼儀やマナーを重んじる素敵なお嬢さまばかりなのだ。

「アンタみたいな庶民が私の落としたものを拾うのは当然でしょ?」

ズイっと前に乗り出して、そのキレイな顔に意地悪な笑みを浮かべながらそんな事を言う麻耶さん。

「はぁ!?何それ!信じられない!すごいお嬢様か何か知らないけど、お礼も言えなくて
人を見下した様な発言するのは人として最低だよ!」

「ちょっと。二人とも落ち着いて…」

負けじと私も彼女を睨み付けて、あわやキャットファイトまで一触即発といったところで紗耶さんが仲裁に入ってくる。

「麻耶、滝川さんに謝って。あとお礼もちゃんと言うのよ」

「紗耶はだまってなさいよ!」

「悪いけど、これは私と麻耶さんの問題だから」

もちろん、私も一歩も引く気はない。そのまま、睨み合い続ける私達に周囲の他のクラスメイトもざわつき私達の行く末に息を飲む。

「そこ、何をしているんだ!」

「「「あっ…」」」

ところが、騒ぎに気づいた先生がやってきて言い争いは強制終了。私と麻耶さんはもちろん止めに入ったはずの紗耶さんまでもがその場で立たされてお説教を受ける始末。
しかも、授業中に問題を起こしたとして放課後に残って反省文という刑罰を与えられてしまった。


帰りのSHRの後の掃除を終えて教室に戻ってくると、教室には双子の姉妹しかいなかった。自分の席で二人ともすでに反省文を書いている。

「紗耶、これ、出しておいて」

「ちょっと、自分で出しに行かないとダメでしょ」

「いいじゃない。私も忙しいんだから」

麻耶さんはもう書き終えたらしく、私が来るとすぐにお姉さんに紙を渡してそのまま鞄を持って教室を出て行ってしまった。残された紗耶さんは額に手をついて溜息を吐いている。

「紗耶さんも大変だね」

「うーん。でもまぁ生まれる前から一緒だから仕方ないって思っちゃうの」

振り返って話しかければ、困ったように笑うクラスメイト。双子は普通の兄弟姉妹よりも結びつきが強いんだと実感させられる。

「それにしても、今日は妹がごめんなさいね。あの振る舞いは姉である私から見ても本当に失礼だったと思う。代わりに謝らせて」

真剣な顔で謝罪の言葉を述べて頭を下げてくれる美しい人。

「そんな、紗耶さんが謝る必要なんてないから!顔上げて!」

「でも…」

「いいの。仲裁に入ってくれた時も私を庇おうとしてくれたし、それで十分だから!」

それでもなお、謝ろうとする紗耶さんを制止する。

「ありがとう。ねぇ、隣に座ってもいい?」

「うん、いいよ」

その申し出を快諾すると嬉しそうに隣の席にやって来る転校生に、いつの間にか近寄りがたさは消えて親近感がわいてきた。

「私、都さんは本当にすごいって今日思ったの。麻耶はあの見た目で性格もキツいから、皆怖がって反論できないのにあなたはひるまないどころか、面と向かって反論して素晴らしいとさえ思ったわ」

「うーん。まぁ、慣れてるからさ」

「慣れてるって…?」

「私、高等部から特待生で入学したんだけど、一般家庭の出身だからそれもあって好奇の目で見られちゃって…大半は純粋に興味を持って話しかけてくれたりして、素敵な子ばかりで友達も沢山出来たんだけど、中にはそれが気に入らない人たちもいて、見下されるような事言われたりとかもあったの。でも、私はそんな人たちに負けたくなかったから、今日みたいな言い合いになっても絶対にひかなかったし、勉強や運動でも絶対に負けたくないって思って必死で取り組んでた。もう、今となってはそんなしょーもない事を言う人もいないんだけどね」

そんな懐かしい思い出を話せば、紗耶さんは真剣に耳を傾けてくれて、「素晴らしい!感動したわ」と目をうるうるさせながら手を握ってくれた。
その後、ちゃんと反省文を書き上げた私達は二人で職員室まで提出に行く。途中で見た麻耶さんのは、なんとアニメの美少女キャラの妙にうまいイラストとそのフキダシに「反省してまーす☆」と書かれているだけの衝撃の内容だった。もちろん、そんなものを見てしまった先生は激怒し、彼女だけは明日も居残りが決まり、私達はようやく自由の身となった。

校舎を出ると、すでに夕日で空が赤く染まっており、そんな中、グラウンドではまだ部活を頑張っている生徒たちの掛け声が響いていた。

「じゃあ、私、ちょっと部活に顔出してくから、また明日ね」

「部活、何してるの?」

紗耶さんに別れを告げようとしたところ、興味津々に尋ねられる。

「陸上部なの。短距離走ってるよ」

「そうなんだ。今度見てみたいな」

「ぜひ見学にきて!紗耶さんなら大歓迎だから」

この少しの立ち話の後、手を振って別れた私達。
新しくできた友人が寮棟の方へ向かうのを見送りながら、部活へと向かう。
今日はトラブルに巻き込まれて嫌な思いもしたけれど、新しい友達が出来てよかったと思う。

けれども、あの麻耶さんは本当に特別クラスにふさわしいんだろうか…
そんな疑念は膨らむ一方で、私は密かにもやもやしていた。


2017.5.9
天野屋 遥か




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