嘘1



「先輩の事が好きです…」

涙ながらに俺への気持ちを告げたみょうじ。

知っていた、ずっと。
俺に好意を抱いている事をーーーーー


「帰らないで下さい…」

泣き止まない後輩を家まで送ったけど、離れなくないと訴えて俺にしがみついてくるみょうじ。
一人暮らしのマンションに男と女が一組。
何が起こるかなんて、想像に難く無い。

「いいのか?このままだと本当に…」

「いいんです。おあいて先輩なら…」

胸に収まる彼女を無下にする事なんて出来なくて、このまま関係を結ぶことになるだろう。
俺は狡い男で、性欲もある。
だから、こんなお誂えの添え膳を喰わないなんて選択肢はない。

「後悔しません…」

その言葉に、思わず唇を塞いだ。
自分のものよりも少し甘い煙草の匂いが鼻を掠める。

お互いに会社での姿しか知らなかったけれど、今日を境にとても複雑な関係に変わってしまうだろう。

唇を離して、ソファに組み敷いたみょうじの瞳は涙と情欲で潤んでいた。
雄の部分がぞくぞくと反応する自分。
服に手をかけながら、その一方でかつての出会いを思い出す。


「みょうじ なまえです。よろしくお願いします」

半年前、うちの部署に異動してきたみょうじ。
忙しくて有名なこの部署に、自ら志願してきた変わり者だと配属前から話題になっていた。

皆の前で挨拶をしているコイツを見た瞬間に目が離せなくなった。

同じだと思った。
俺はこの目を知っている。
今の会社に転職してきたばかりの頃の俺と同じだ。
深く傷付いて、けれどもそれから立ち直ろうとしてる人間の目をしていた。
消えそうな輝きを必死で守っている、そんな瞳だった。

それが第一印象。
だから放っておけなくて、ずっと気にかけていたんだ。

「みょうじ、こんなんじゃ根拠として弱い。もっと調べてこいよ」

「はい!」

ひたむきなアイツは、ダメ出しをすればするほどに頑張って更に仕事の質を上げる。
愚かしい位のそのひたむきさに、どこか懐かしさを感じていた。

「私、婚約破棄されちゃったんですよね。で、忘れたくて…仕事頑張ってみようかと思って…」

ある日、商談の後に二人だけで飲みに行った時にそんな事を言っていた。
それでこの部署を希望したんだと。
眉を下げて、寂しそうに俺に笑いながらそう告げる。
仕事中は負けん気が強くて堂々としているコイツも、
こうして自分の話をする時は年相応の脆さを垣間見せる。
そこに少し安心した。

とにかく、真っ直ぐだったと思う。
全てが同じで、まるで他人とは思えなくて。
昔の…社会人になったばかりの自分に重ねたんだ。


「ん…先輩…」

首筋に舌を這わせながら、少し小振りの胸の膨らみを揉んでいく。
彼女は控えめに喘ぎながら、吐息を漏らす。
反応が可愛らしくて、思わず目を細める。
愛しくなる素直さだ。

ただの後輩でなかったのは事実だ。

けれども、こんな風になるなんて事は考えていなかった。
ふさわしい男を見つけて、幸せになって欲しいと思っていた。
ただ、それだけだったはずなのに…

「みょうじ…こっちもいいか?」

ショーツはすでに滲んだ蜜でしっとりと濡れており、割れ目に沿って指でなぞれば小さく腰を揺らす。
ここまで来て拒否する訳なんてないのに確かめるのは、自分の中にまだ迷いがあるからで。
じっと顔を見つめて窺う様に問いかければ、後輩は予想通り物欲しそうに首を縦に振る。
その反応に自分を正当化し、彼女を覆う最後の薄い布に指をかけた。

彼女が自分の中心を晒し、俺はその秘裂の淵をそっと撫でて指を花びらに沈める。
粘膜を擦りながら、その熱さ、俺の指の動きに合わせて発せられるアイツの喘ぎ声。
それに集中したいはずなのに、あの人の事が脳裏に浮かんできてしまう。

「今日から指導係になります。よろしくお願いします」

入社して配属された部署にいたあの人。
俺の直属の先輩で、美しく厳しい人だった。
仕事のノウハウは勿論、社会人としての心構えも学んだよ。
その優秀さで社内でも有名だったあの人に褒められたくて追い付きたくて、そしていつか認められたいと思っていた。

それが、恋心に変わるまでに時間はかからなかった。

けれども、婚約者がいるのは知っていたし、どうこう出来るはずもないと思っていたんだ。

あの日までは…



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