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▼ 06


シーツの海に沈み、正面から一つになった俺達。
みかげの両手に指を絡ませ、律動しながら唇を重ねる。
先程の荒々しいものとは違い、優しく何度も角度を変えて唇を啄んだ。

「本当に再会できて嬉しかった…」

「はぁっ…あっ…」

顔を離しても、繋がっている銀糸。
惚けた表情のまま涙を溜めた瞳で見つめる彼女の頭をそっと撫でた。
感じるのは、やっと望んだ距離まで近づけた喜び。

母親が死んで、ヤクザの組長だった父親の元に引き取られた俺。その当初は寂しくて、みかげの事を思い出しては泣いていた。
暴力と抗争の世界では、実力がなければ食い物にされてしまう。辛い時に拠り所にしていた幼い頃の記憶は自分の現在の環境とは余りに違いすぎて、お伽話だったのではないかと錯覚さえ起こしそうだった。

けれども、それは確かに俺の支えで…

君と同じで俺も会いたいと強く願っていたんだ。

 

「みかげ…愛してる…」

身体を繋げながら何度もそう言っても、何も返事がない。眉を顰め、快感に耐える苦しい表情をみせるだけ。
 

どうして、俺の気持ちに応えてくれないの?

君を助けたのに…

これからはずっと一緒にいて、君が欲しいものは何でも与えられるのに…

じわじわと怒りが込み上げてくる。

 
「やあぁっ!!」

今度は座った状態でみかげを上に跨がらせる体位に変えて、下から思い切り子宮の口を突き上げてやった。
 
「何か言いなよ。借金のカタにお前が大嫌いなヤクザに今抱かれてるんだよ?」

「あぁっ!うぁっ…!あっ…!」

その細い腰を強くつかんで、ガツガツとその後ろを抉る。大きく波打つその長い髪が激しさを物語っていた。本当はこんな事を言いたくないのに、優しくしても以前の様には答えてはくれない君に苛立ちが募るばかり。
 
「どう?汚れた金で救われた気分は?」

「やっ…真琴君…ごめんなさい…」

ありがとうーーーー

詰って身も心も追い詰めてやれば、涙ながらに俺に許しを乞い感謝を口にする君がとても憐れで美しく愛しい。

「今更謝ったところで何も変わらないから。お前はもう俺の女なんだ」

抑えが利かなくなって、衝動のままに何度も奥を貫く。臍の裏側まで届く位に執拗に奥の奥まで突き上げてやれば、君は悲鳴の様な大声を上げていた。

「みかげ…」

その締め付けに耐え切れず、腰を押さえつけて白濁を注ぎ込む。何度も絶頂を迎えた君は俺の胸に身体を預けて、胎内に全てを受け止めていた。


ズボンだけ履いて煙草に火を付けながら窓際で外を眺める。

振り返れば、ベッドでは俺との情事に疲れて眠っている愛しい女の姿。その耳朶には先程俺の手で付けたピアスが光っていた。それは、あの日突き返されたものだった。

暗い満足感が引いてしまえば、その底から今度は後悔が顔を覗かせる。

随分と変わってしまった。

いつも二人で公園で夕方まで遊んでたあの頃と。
俺は君を守りたいと思ってたし、一緒にずっと笑ってたいと思っていた。

再会を果たした時もそう思っていたのに。
君はあの頃と変わらずに笑いかけてくれて、二人でいると穏やかな気持ちになれた。
 
今度こそ、ずっと一緒にいられるって思ったのに…


なのに、今は…

愛しているはずなのに俺自身が傷付けて…

何処で間違ってしまったのだろう?
みかげに拒絶された事に傷付いて…

夜景が広がる窓ガラスに白く浮かび上がるのは、ただの情けない男の表情だけ。

もうどうしていいのかわからない…
 
本当は、こんな風になるはずじゃなかった…

この世界でずっと生きてきた俺は、君が望む様に今更変わる事なんて出来なくて。

俺はただ、愛し愛されたかっただけなのに…

どうしてダメなのだろう?


溜め息をつき、煙草を灰皿に押し付けてからベッドへと戻る。

そのまま、みかげを胸の中へと収めて眠りについた。


2015.6.12
天野屋  遥か




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