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▼ 03

あの日以来、何度か真琴君から着信やメッセージがあったけれど、全て無視をした。
そのうちに、連絡も来なくなり、私達を繋ぐものは何も無くなった。
 
私自身も精神的に非常に落ち込んでしまい、仕事でもミスを連発したりと、何もかもが上手くいかなくなっていた。

そして、悪い事というものは重なる。

数ヶ月が経って、やっと立ち直ってきたある日、会社から帰ってくると玄関の前に黒塗りの車が止まっていた。
この住宅街に似つかわしくないその高級車に不審の目を向ける。けれども家は電気も付いており、いつもと何ら変わりはない。

「ただいまー!」

お客さんでも来ているのかなぁと思いながら、普段通りに帰宅をした。

「おかえりなさい。遅かったね」

リビングのドアを開けて凍り付いた。
なんと、 真っ白なスーツを身に付けた真琴君がリビングのソファーに座っていたのだ。しかも、あの日の出来事なんて嘘の様に微笑んでいる。
一方で、本来いるはずの両親は家の中には居なかった。

「…なんでここにいるの?」

「なんでって、君のご両親の借金の取り立てに来ただけだよ」

立ち尽くしている私に、彼が近づいてくる。

「借金!?」

その言葉に耳を疑う。

「あれ?知らなかったの?ここに借用書あるんだけど…」

クスクスと笑いながら書類をスーツの内ポケットから取り出して私に突きつける。
そこには二百万円という数字が示されており、父親の名前と印鑑が押されていた。

「何これ…私…こんなの知らない…」

何の前触れもなく知らされた衝撃の事実に、そしてその恐怖に身体がガタガタと震え始める。
鞄は手から滑り落ちて大きな音を立てた。

「そりゃ、普通は言えないか。大切な娘には。投資に失敗して借金したなんて。しかも、今は利息が膨らんで一千万円にまで達してるんだから」

書類を元の場所に収めて、私に寄り添う様に両肩に手を置く。

「それでね、この家のもの全てを抵当にあてて、あとお前を貰うって条件で、借金は俺が建て替えるって事になったんだ。ご両親とは話がついて、もう住む所も別の所に移ってもらったから」

優しく、諭す様に耳許で囁くそれは、とんでもない内容だった。

「それじゃ私は…」

自分の人生が当事者であるはずの私の意志など全く関係なく決められていたという虚無感に気が遠くなる。
けれども、ここで私が断るなんて事は到底許されない事も分かり切っていた。

「もちろん、今から俺の所有物になるに決まってるじゃん。普通なら風俗で使い物にならなくなるまで働いて返済してもらう所だけど…」

”みかげは本当にラッキーだよ”

なんて歯をみせる彼に戦慄が走る。

「やっ…!」

本能的な恐怖を感じて逃げようとするけれど、強い力で抱き寄せられてしまった。
そして、いきなり唇を重ねてきた。
無理矢理捻じ込まれた舌は、荒々しく私の呼吸を奪った。
力で捩じ伏せようとするその動きは、私が知る真琴君からは全く想像がつかなかったけれど、これが彼の本性なのだろうと、正体を知った現在は妙な説得力を与えた。
 
「逃がさないから…」

解放されると、紅く色付き唾液で妖しく光る唇が私の心を縛り付ける。

激しい口付けに身体の力が抜けてしまった私は、そのまま彼に連れられて待機していた例の車へと乗せられた。


2015.6.2
天野屋 遥か




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