school days | ナノ


▼ something to xxx


髪型よし!

笑顔よし!

臭いもよし!(体育の後だから気になる)

絶対この勝負に勝つぞ!

そう、私は一大決心を胸に秘めて鏡の中の自分と向き合っていた。

体育の後、女子トイレの鏡の前で自分で決め顔をする。
すると横から他のクラスの女子の会話が聞こえてきた。

「今日の体育、紫苑君ほんとかっこよかった〜!」

「すごいよね〜!バスケ部よりも上手いんだもん。
 ドリブルで相手を三人抜きしてるのすごかった〜!」

横目にちらりと見ると、その子達も髪の毛やメイクを直しながら彼のことを話している。
うちのクラスの委員長はやっぱり王子なんだなぁとぼんやり思いながら、
再び自分の顔を入念にチェックする。


「のぞみ、気合い入ってんね!」

そんな私を友人の純子が背後からニヤニヤしながら覗いてくるのが鏡に映りこんだ。

「そりゃせっかくのチャンスだからね!!」

「頑張れ!アンタなら絶対大丈夫だから!」

私の計画を知っている友人が激励してくれる。

そう、今日、私は紫苑君に手作りマフィンを渡すつもりだ。

週1回、家庭科の先生が開く「家庭クラブ」に実は参加してる私。
お菓子は食べるのだけじゃなくて作るのも好きで、1年の時からずっと続けている。
今では腕前もかなり上達して、クラブのメンバー30人の中でもトップ5には入る様になった。
昨日のクラブでマフィンを作ったらすごくうまく出来たから、せっかくだしプレゼントしようと思いついたの。
よく勉強教えてもらったりとかで、お世話になってるお礼をしたいってずっと思ってたから。

さすがに自分の気持ち伝える勇気ないけど。
彼は王子だし…

いくじなしだなぁと少し自分に失望しつつ、緊張しながら教室へ入り、自分の席に戻ってくる。

「「のぞみ〜」」

「あんたたち…」

すると、バカ2人が私を呼んでくる。
銀の席に海人も座って2人でぎゅうぎゅうになっている。
しかも何か食べながら話かけてくるから汚い。
そんな2人の姿を見てへなへなと脱力してしまう。

「おい、授業の準備しろよ〜」

教室に次の授業の英語の先生が入ってくると、海人が「やべっ!」と自分のクラスに戻っていく。
銀が何か私に言いたげな顔をしていたが、それと同時に授業が始まったから気づかないフリをした。

「この、接続詞のthatは…」

先生の説明を聞いてても頭には何も入らず、右から左へ流れてしまう。
そして、ノートを取る手も一向に進まない。

ちゃんと受け取ってもらえるかな?
味は自信あるけど…

時計の針が進むごとに自分の気持ちがピリピリとはりつめていく。
不安と緊張がぐるぐると渦巻いて、そわそわしてしまう。
昨日、家で丁寧にラッピングをして今日もカバンに入れて持ってくる時も
形が崩れないように細心の注意を払って登校してきた。
気を紛らわそうと窓の方へ視線をやると、私の気持ちとは裏腹に澄み切った青空で
それを背景に隣で気持ち良さそうに爆睡してる銀が目に入ってなんだかイラッとした。



昼休みの始まりを告げるチャイムを合図に気合いを入れる。

さぁ、勝負―――――――

大きく深呼吸をして、ドキドキしながら机の脇に掛けてあるカバンに手を伸ばす。
緊張のあまり少し震えてしまう手でチャックを開いて中を覗くと


…ない。


あるのはくしゃくしゃになったラッピングの残骸だけ。
2つのマフィンは蒸発していた。

マジで!?―――――

衝撃でフリーズしてしまう。

なんで?なんで?
体育の前まではあったよ!?

想定外の事態に動揺しておろおろしてしまう。
緊張は吹っ飛んで別の意味で今度は震えてきた。

そんな中、あの2人がやってくる。

「のぞみ〜!」

海人が私の名前を呼ぶのが遠くで聞こえるけど、混乱している自分の意識を
治めるのにいっぱいいっぱいで反応する余裕がない。

「おい!のぞみ!」

無視してると、今度は銀が強い口調で私の肩を掴んだ。

「何!?」

今はあんたたちの相手なんかしてる暇はないと、いらっとしながら振り向く。

「おいしかった。ありがとう」

銀が照れくさそうに、突然そう言った。
何故か少し頬を赤らめて、目をそらして頭をガシガシ掻きながら私にお礼を告げる。

「次は、他のも食べてみたいな」

海人はいつもよりキラキラ2割増の笑顔。しかも、なぜかリクエストまでしてくる。

「…は?」

意味がわからない。
突然の2人からのお礼に、間抜けな声が出てしまった。

「私、あんた達に食べ物あげた記憶ないけど…」

「何言ってんだよ!!あのマフィンだよ!」

「!?」

銀の衝撃発言に再びフリーズ。

「あれって、2つあったし俺と銀の分だったんでしょ?」

「体育の後、”腹へったな〜”って思ってたら
  俺のお菓子センサーが働いてお前のカバンから見えたんだよね。ラッピングが。」

海人が銀が嬉しそうに歯茎を見せる。

そうだ、コイツはお菓子への執着心が強すぎて「お菓子センサー」という名の第六感があるんだった…
(過去、それで何度か持ってきたお菓子を勝手に食べられてしまい、血で血を洗う戦争が私と銀の間で勃発した)

「2つ入ってたから、絶対に俺達用だと思って食べちゃった。」

海人がぺろっと舌を出す。
本人は許してもらおうと可愛く謝ってるつもりだろうが、火に油を注ぎ更に私の怒りを扇ぐ。

「はぁ〜!?ふざけんじゃないわよ!!」

教室中に私の怒号が響きわたる。

「あんた達の分じゃないわよ!!」

私はぶち切れた。あまりのことに大声を上げる。
クラスメイト達は一瞬こちらを見るも、”あぁ、またか…”といった様子で
すぐにランチタイムに戻っていった。

「やべっ!」

「逃げろ!!」

目を丸くしてしまったという表情を一瞬した2人は慌てて逃げ出す。

「ちょっと!待て〜!!」

バタバタと私達の足音が廊下を駆け巡る。
昼休みで廊下に出てる他のクラスの皆を掻き分けて前方を全速力で走る奴等を追跡する。
運動部のあの二人の走りには普段とても追い付けるものではないけど、
怒り心頭な私は火事場の馬鹿力を出して必死で追い付く。

――そしてとうとう屋上に奴らを追い詰めた。

「紫苑君にあげるつもりだったのに!!どーしてくれんのよ!」

屋上のフェンスの際に2人を追い詰める。
奴らに私の影がかかり、2人の身体は暗く染められていた。
銀と海人は青ざめた顔をして肩を寄せ合って震えている。
私は鬼の様な形相をしているのだろう。

「「ごめんなさい!」」

2人が手を合わせながら私を取り囲み必死で謝罪をしてくる。
土下座をせんばかりの勢いで謝り倒してくる。

「も〜やだ!!あんた達とは絶対に一生口きかない!」

そう言い放って、教室に戻ろうとすると腕を掴まれる。
かなり強い力で

「ちょっと!離して!!」

「のぞみ、それは勘弁して〜!ほんとにごめん!!」

振り返ると海人があのくりくりお目目をうるうるさせて覗きこんできた。
捨てられた子犬みたいなこの目に私は弱い。
なんだかこっちが悪いことをしている気分になってしまうのだ。

「あ〜もう!わかった!許すから」

「「よかったぁ〜!」」

しぶしぶ私が許すと二人は心底安心したように笑う。

「ただし!一発殴らせて!私の傷ついた気持ちを思いしりなさいよ!!」

「「えっ…!?」」

目が点になる二人。
結局、怒りの収まらない私はじゃんけんで負けた銀に鉄拳をお見舞いした。


something to xxx
―プレゼントは誰のもの?―


(痛ってぇ〜、のぞみの馬鹿力)

(我慢しろよ!口きいてもらえないよりはマシだろ?)

(お前はいいよな〜!いっつも謝るだけで済んで)



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