school days | ナノ


▼ run to you

「てか、やっぱ銀君超面白いね!」

「だろ!?コイツ最高だって!まじ授業中に弁当食いながら寝ちまうなんてありえねぇだろ?」

「あれは、我ながらいい作戦だった!食事も昼寝も同時にできるなんて夢のようだろ?
 しかも、昼休みの初めからサッカーできるんだぜ?
 みんな昼飯食ってるから誰もグラウンド人いないし!」

「「どんだけサッカー好きなんだよ!!」」

なんてクラスメイト達は俺を中心に盛り上がり大爆笑。
同じサッカー部の奴と机に座って話をしてたら、周りの女子や他の奴らも集まってきて会話が広がる。
俺はクラスでも注目されてる人気者だから、休み時間にもこうやって自然と人が集まってきちゃうんだ。


「あれ?ここってXじゃなくてY使うんじゃない?」

「そうだっけ?」

そんな中、教室の後ろの方からのぞみが誰かに話しかける声が聞こえてくる。
振り向くと、アイツはクラスメイトの斎藤に課題を教えていた。
窓際の一番後ろは俺の席なのに、そこに座っている斎藤。
どうやら奴は今日提出の課題をやってなかったらしく、成績のよいのぞみに聞いてるみたいだ。
ノートに色々書いて説明しているアイツに対して覗きこむふりして距離を縮めている斎藤にイラつく。
あいつ、ちゃらちゃらしててだらしないんだよな。
この間も他の学校の女子と4組の子を二股かけててもめてたらしいし。


「ここ、俺の席なんだけど」

二人の間に割り込んで、斎藤を睨み付ける。
”お前なんかがのぞみに近づけると思うな”
そういう意味を込めて威圧感タップリに奴を見下ろす。

「あ…悪ぃ…」

俺の迫力にビビった斎藤はノートやテキストをまとめてそそくさと席を立つ。

「のぞみちゃんありがと!だいたいわかったから!」

「え!?まだ途中なのに…!」

のぞみの制止を振り切って脱兎のごとく自分の席に戻った奴を鼻で笑う。

「何だったんだろ…?」

不思議そうに首をかしげながらチョコレートを取りだす隣の鈍感女。
コイツに悪い虫がつかない様に俺はもちろん海人も影で涙ぐましい努力をしているというのに…
こいつはのん気にお菓子を食べている。

「も〜らい!!」

ついつい意地悪したくなって、コイツの口に入るはずだったチョコを横取りして自分の口に放り込む。

「あ〜!!返しなさいよ!!」

いきなり怒りだすのぞみ。
さっきまでぼんやりしてたのに、食べ物になるといきなり真剣に怒ってくるから面白い。
ついついちょっかい出してしまう。
こんな感じでいつも俺がのぞみに1番近いところにいると思ってる。



キーンコーン――――――

授業終了のチャイムと共に起床。

「紫苑君!ちょっと、ここの部分教えてもらっていい?」

教室の真ん中の列の学級委員長の席に向かうのぞみの後ろ姿を寝ぼけてぼんやりとした視界に捉えた。
その瞬間に眠気は一気に吹き飛んで、視線はアイツと紫苑に集中する。
のぞみの足取りはいつもよりもおしとやかで、表情を見ると緊張して少し強張っているみたい。

「どこがわからないの?」

「今日の授業でやった、この変数の事なんだけど…」

紫苑が物腰柔らかに微笑みながらのぞみに話かけると、アイツは嬉しそうに教科書を広げて話を始める。
こうして2人の世界が出来上がっていくのを、おバカな俺は指をくわえて自分の席から見ているしかない。
だって話についていけないから。

くそっ!!―――――

心の中で地団駄を踏みながら、机に突っ伏してふてくされていると…

「銀〜!」

「ぐぇっ!?」

いきなり俺の上に隣のクラスからやってきた海人が乗ってきた。
この危機的な状況に気づいていない親友のいつもののん気な笑顔にイライラする。
そして、うらめしそうな視線を奴に送った。

「どうしたんだよ?どっか具合悪いのか?」

「ちげーし。あれ見ろよ。」

俺が指さす方向には、顔を赤くして俺達としゃべるときよりも1オクターブは声が高いのぞみと、
いつも通りオーバーリアクションな紳士の紫苑がいた。

「なんだよあれ!!」

さっきまでへらへらしてた親友の表情も曇る。

「なんでお前割り込まないんだよ!!」

海人がまさかの俺に逆切れ。

「んなの、あの2人の勉強の話なんてついてけねーから無理に決まってんだろ!」

「あ…」

海人ががっくりとうなだれる。
そう、勉強についてはこいつも俺と同レベルだから何も言えない。


「「…はぁ」」

2人で机に頬杖をつきながらため息を溢す。
その様子を見たクラスの奴等が俺達に冷ややかな視線を送ってくる。
確かに机の上に男2人が折り重なって落ち込んでいる様子は正直キモいと思うけど、今の俺達にはどーでもよかった。
それよりも好きな女の子が目の前でライバルといい感じになってるのに、何もできない自分達がマジでダサい。

だけど…

「紫苑にはかなわないもんな」

「うん。アイツだけは違う」

そう、奴は成績は常に学年トップで野球部のエース。
しかも、学級委員長なんてめんどくさい仕事も自分から率先して引き受けている。
しかも彫刻美男って呼ばれる位の彫りが深くてはっきりした目鼻立ちのイケメンで、
黒髪の短髪は清潔感が溢れててスポーツドリンクのCMに出られそうな位の爽やかさを放っている。
しかも、紳士的で誰に対しても親切だから、
女子から王子と騒がれている。
俺達の頭を悩ますのぞみもその一員だ。

「まぁ…紫苑がのぞみに対して何も思ってないのが、唯一の救いだよな」

海人が何か吹っ切れたような前向きな発言をしながら体を起こす。

「…そうだけど」

背中は軽くなったけれど相変わらず机と同化したまま、納得行かないという気持ちを込めてそう呟く。

心配なんだよ。

のぞみって、自分では気づいてないけど実はモテるから。
切れ長の瞳、通った鼻筋にピンク色の薄めの唇は知的にその顔を彩る。
全身を覆う白い肌と黒くて長い髪、スラリとした身体は黙ってればクールビューティーに見える。
皆、真面目で堅物だと思ってるけど、ほんとはただの人見知りでめんどくさがりなだけ。
意外と面倒見もよくて何だかんだで優しいから、この間の斎藤といい興味持ってる奴らは少なくない。
俺と海人がガードを固めてるから誰も寄り付けないだけなんだよな。

「も〜!紫苑君!」

楽しそうなアイツの声に顔を上げると学級委員長に向かって笑いかけている。
たまに見せる笑顔がまるで花が咲く様に明るくて可愛くて、俺達はそんなのぞみが大好きで。
けれど、それは自分達に向けられたものじゃない。

「どうしよう…」

変わらず机におでこをつけたまましつこくため息を溢す俺。
アイツの事になると何でこんなに弱気になっちゃうんだろ?
サッカーじゃ負けてても強気でガンガン相手ゴールに攻めていけるのに…

「でも、いつまでもくよくよしてるわけにもいかないだろ?」

そんな海人の発言と共に背中が軽くなる。
アイツはあほだから立ち直りが早いんだよな。深く考えないから。

「わかってるけど…」

あ〜もう!自分の事なのに訳わかんねぇ。マジで。
頭の中でぐるぐると色んな事を考えて不安になってしまう。
相変わらず机に突っ伏したままの俺は、もはやこのまま溶けて机に同化したいとか意味不明な事まで考え始める。


「ほら、銀!いいかげん起きろよ!」

痺れを切らした海人に机から引きはがされた。
けれども、元気は出なくてため息を溢してしまう。

「へこんでても仕方ないだろ!?俺達には俺達のやり方がある!」

その言葉にハッと目が覚める。
海人の言葉に俺は元気を取り戻した。

「そうだよな!」

バンッと机を叩き、勢いよく立ち上がる。

「行くぞ!海人!」

「そうこなくっちゃ!!」

まるで試合前みたいに、2人で顔を向き合わせてがっちり手を組んだ。
こうして気合いをいれると何でもできる勇気が湧いて来る。

迷う事なんてない―――

俺達は大好きなアイツの元へ駆け出した。


Run To You
―足音に想いをのせて―


(のぞみ〜!赤点とっちゃった!)

(再試まで勉強教えて〜!)

(あんた達またなの!?)


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