school days | ナノ





▼ Have a sweet tooth!

「海人、行くぞ!」

「うん!」

放課後、俺達は部活を自主休憩して家庭科室の前に身を潜める。
ジャージでドアに張り付いてる俺達は不審者以外の何者でもない。

こっそりと後ろのドアを開けて、教室に忍び込んだ。
今日の家庭クラブの活動は、明日のバレンタインに向けてチョコレートを使ったお菓子を作るらしい。
(昨日、のぞみが友達に話してたのを盗み聞きした)

俺と海人の狙いは、もちろんのぞみのチョコレート。

今日、出来たてを貰うんだ。
(てか、勝手につまみ食いの予定)
明日まで待ってたら、俺達もらえるかわかんねぇし。
欲しいものは自分から取りに行くのがモットーだからな。

「音たてんなよ」

「銀こそ!」

小声で話ながら、こそこそとほふく前進をする俺達の鼻を甘くて美味しそうな匂いがくすぐった。
明日を楽しみに張り切ってお菓子を作ってるみんなの声が近づいて、クラブの活動中の調理台にたどり着いた。

「きゃあ!?」

「「しーっ!」」

後輩の女の子達がびっくりしている。
慌てて、俺と海人は人差し指を唇の前で立てて静かにしてほしいアピールをする。

「そっちのテーブル大丈夫!?なんか声したけど…」

のぞみが後輩たちを気遣う声が聞こえた。

「大丈夫です!ちょっとチョコレートの分量間違えちゃって…」

「そっか!気を付けてね!」

後輩が上手くごまかしてくれた事をいいことに、のぞみのテーブルの方に進んでいく。
後ろから、ポリポリと音が聞こえてきた。
振り返ると…

「おまえ、何食ってんだよ!?」

「さっきの子がくれたんだ」

海人がクッキーを食べてた。

「音、立てんなよ! ほら、行くぞ!」

「ん…」

そんなこんなで引き続きほふく前進で何とかのぞみのいる調理台にたどり着いた俺達。

そっと近寄り、2人で目だけ調理台の上に出した。
すると、すぐそばにはチョコブラウニーの山。

俺達は顔を見合わせて嬉しそうに笑って手を伸ばす…

その瞬間――――

「「痛っ!!」」

バチンバチンと思いっきり手を叩かれた。

「君達、何してんの?」

冷たい声が頭の上から降ってくる。

「「げぇっ!慧!!」」

見上げるとあの腹黒でイヤミな奴が見下ろしてきた。

「あ〜!あんた達何してんのよ!?」

騒ぎを聞きつけたのぞみまでこっちに来る。

「のぞみちゃん、この子達つまみ食いしようと忍び込んだんだよ?」

「「うっ…」」

慧が軽蔑する様に、俺達に視線を送る。

「えっ……」

どれだけ卑しいのよ…と呟きのぞみもドン引きしてる。

「つまみ食いしようとするし、部活もサボってるみたいだし…
サッカー部のキャプテンに言ったらどうなるのかな?」

「それだけはマジで勘弁!」

「絶対殺されるよ!」

慧に脅されて、俺達は真っ青になる。

「ていうかさ、ずっと思ってたんだけど、仮にも先輩にそんな口きいていいの?」

「すいませんでした!!」

「頼みます!何でもしますから!」

キャプテンだけにはチクられたくないと、慌てて今までの無礼を謝る。

「ふーん、何でもしてくれるんだ」

にっこりと楽しそうに笑った慧のに俺達は嫌な予感しかしなかった。

Have a sweet tooth!
-働かざる者食うべからず-

(ほら、もっと腕動かして!)

(疲れたよ〜!)

(何で俺達がクリーム泡立てなきゃならないんだ!)

(そりゃ、あんた達がつまみ食いしようとした天罰でしょ。)


2017.2.13
天野屋 遥か



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