▼ escape from xxx!
「最悪!」
「のぞみ、ほら練習するぞ!」
休み時間、机に突っ伏して嫌がる私を銀が責め立ててくる。
「2人とも、何してんの?」
おまけに海人までやってきた。
「文化祭の練習。うちのクラスは執事&メイド喫茶やるんだよ」
「へぇ〜面白そう。うちのクラスは
作品の展示だから羨ましいな〜」
私はヘラヘラ笑うのん気な海人が羨ましい。
「で、俺は執事でのぞみはメイドやることになったのに
コイツ練習しないんだよ!」
「うるさい!
ジャンケンに負けただけでほんとはやりたくないんだから!」
私が顔を上げて、銀に喰ってかかる。
裏方希望だったのに、まさかのメイドになるなんて。
ジャンケンには昔から弱いから嫌な予感がしてたのは事実だけど…
「練習って何の?」
何も知らない海人に銀が得意そうに説明を始める。
「いいか、メイドはご主人様であるお客に食べ物や飲み物を持ってきた時に萌えポーズをしないとダメなんだ!」
「萌えポーズ?」
聞きなれない言葉に海人が不思議そうな顔で首をかしげた。
「ちょっと、銀!」
私が説明を阻止しようとするも華麗にスルーされてしまう。
「こうやって"萌え萌え"」
銀が両手で拳を握り、顔の両脇で猫の手みたいに動かして
「"キュン!"」
両手でハートを作ると、そのまま腕を前に出した。
「何それ!?」
海人が目をキラキラさせて超食い付く。
「こうやって、ご主人様への愛を込めなきゃダメなんだよ!」
銀が力説し続ければ、海人はうんうんと頷いている。まるで宗教の教祖の演説に聞き入る信者みたい。
「そんなのできるわけないでしょ!?恥ずかし過ぎるわよ!」
「のぞみがちゃんとやらないと紫苑が悲しむぞ〜!」
「うっ…」
私が必死に嫌がるも銀が痛いとこをついてくる。
確かに、紫苑君はもちろん執事をやるし、文化祭も真面目に参加するから…なんて考えが揺らいでしまった。
「「ほら、のぞみ!」」
2人に促されて私は握った両手を頭の横に持っていき…
「も、萌え…萌え…」
言葉に合わせて猫の手にして
「キュン…」
ハートにした両手を前に突きだした。
銀と海人を見ると…
「「……」」
2人とも目も口も開けっぱなしのまま私の方をガン見していた。
案の定、とんでもない恥ずかしさに襲われた私は…
「やっぱやだ〜!!」
と叫びながらダッシュで廊下へ!
「のぞみ、もう一回!"萌え萌えキュン"って!」
「俺のジュースに愛を込めて〜!」
バタバタと足音をたてながらバカ2人が追いかけてくる。
「もう、止めてよ〜!」
2人から逃げるのに必死で、すれ違った賢二君が"萌え"という単語に異常に反応していた事に私は気づいてなかった。
escape from xxx!
-運命から逃れたい!-
(やっべぇ!下手なAVより破壊力がハンパない!)
(俺、文化祭で絶対のぞみ指名する!)
((メイド姿楽しみだ〜!!))
2016.10.22
天野屋 遥か
天野屋 遥か
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