▼ a waste of time
「つ〜かさぁ、最近変じゃね?」
部活帰りにいつものラーメン屋で海人と夕飯中。
「お前の顔はいつも変じゃん」
相方がラーメンを貪りながら、いきなりの失礼発言。
「違うって!!のぞみの事だよ!
アイツ、今日もあの村上とかって奴と一緒に帰ってたぞ!」
俺が危機感を覚えてると
「マジ!?あと、賢二が真面目に水やり当番してるって。
絶対#のぞみ狙いだよね!」
海人も眉間に皺を寄せていた。
「ヤベェよ! 近づく男が増えてる!
しかも、アイツら今までの奴等と違って、すぐ退くタイプじゃないぞ!」
う"〜ん、どうしよう !?―――
2人でラーメン食べながらうんうん唸ってると
「お前らうるせぇよ!他人の店で騒ぐな!」
店長の雅樹さんに怒られた。
「だって〜!俺達の好きな子に
変な男が寄ってきてるんだよ!」
海人が負けじと訴える。
「それって、お前等がいつも騒いでるのぞみちゃんか!?」
バイトの剛さんもやってきた。
この2人は、俺達の兄貴分。
雅樹さんは誰もが認める美しすぎるラーメン屋。
剛さんは、頼りがいのある男前。
しかも2人ともトークも面白くて、頭の回転も早い。
…そうだ!この2人ってモテるし、
アドバイスもらえばいいんじゃないのか!?
「二人は恋のライバルがいたらどーする?」
俺は真剣に聞いた。
「俺に"好きだ"と言われて落ちなかった女はいない!」
と、自信満々の店長。
…しまった。
この人は色々レベルが高すぎるから、聞いても何も参考にならない。
「剛さんは?」
海人が目をキラキラさせる。
「ライバルを気にするんじゃなくて、
好きな人をいかに楽しませるかって事考えて行動するぞ」
そうすれば、相手は俺を選ぶだろ?
剛さんがにやっと笑う。
「「すっげぇ!!さすが剛さん!!」」
これだよ!俺達が求めてたアドバイスは!!
剛さんばかりを誉めてたら、
店長は面白くなかったらしく、厨房の隅っこで無言のままスープをかき混ぜだした。
慌てて3人で、店長を誉め称え始める。
「店長は、俺達みたいな凡人とは違うんだよ!」
「そうだよ!かっこよすぎるし、憧れだよ〜!」
「「店長最高!」」
俺と海人がヨイショすれば
「確かに雅樹さんは見た目が良すぎるから、俺と違って、ストレートに行っても大丈夫なんだよな」
加えて剛さんもヨイショする。
それを聞いた店長はみるみる笑顔になっていく。
「つーか、ライバルってどんな奴らなんだよ」
機嫌を直した店長が、ニヤニヤしながら聞いてきた。
明らかに面白がってる。
「なんか、お菓子作るの上手くて、
いつも笑顔だけど腹黒くて嫌味な奴」
「あとは、ゲームオタクの生意気で毒舌なイケメンの後輩」
と、俺達が唇を尖らせて言うと
「なんだそりゃ!?お前ら含めてマトモな奴が一人もいないだろ!」
店長は大爆笑。
狭い店内に悪魔みたいな笑い声が響いている。
「そんな奴らばっか引き寄せるのぞみちゃんは、
ある意味すごいな!」
剛さんはなぜか感心してた。
「で、さっきからライバルの話ばっかだけど、実際、のぞみって子はお前等のうちの誰かを好きなのか?」
意外と鋭いとこつくな…店長。
「それ、俺も思った。のぞみちゃんがお前等の事何とも思ってなかったら、今の話、意味ないぞ」
剛さんが真顔で現実を指摘する。
…カシャーン!!
俺たち二人は箸と蓮華を落とす。
「「…図星か」」
人生の先輩達が憐れんだ目で見てくる。
「当ののぞみちゃんの好きな奴はどんな奴なんだ?」
「「学年で成績1位、野球部のエースで超イケメン」」
剛さんの質問に俺達が声を揃えて答えた瞬間
「「ご愁傷様」」
と2人に引導を渡された。
「なんで?応援してくれないの??」
「ひどいよ!!二人とも!」
俺達2人が泣きつくと
「話聞いただけで、明らかにお前らじゃあそいつにかなわないだろ」
身の程をわきまえろ―――
あの店長に冷静に忠告されてしまった。
「「えぇ〜!?」」
a waste of time
-全ては水の泡-
(まぁ、チャーシューおまけしてやるから元気だせ!)
((剛さん…))
(お前等、一回のぞみつれてこいよ!サービスすっからよ!)
((やだよ!のぞみが店長達の毒牙にかかる!))
2016.2.24
天野屋 遥か
天野屋 遥か
prev / next