▼ for a change
「海人!銀!頑張れ〜!!」
ベンチから声援を送る。
とうとう今日は練習試合の日。
本日で、私のサッカー部代理マネージャー生活も幕を降ろす。
後半残り3分で海人から銀にパスが通るも、そのシュートは、ゴールキーパーに弾かれてしまった。
審判のホイッスルが鳴り響く。
試合終了!ーー
「お疲れ様〜。2人とも凄かったよ!」
練習試合の終わった2人に、タオルを渡すけど
「「あ"〜っ!!悔しい!」 」
銀と海人が大声で叫ぶ。
そう、1対2で試合に負けてしまったのだ。
「のぞみがマネージャー最後の日だから、
勝ちたかったのに…」
海人がしょんぼりしてる。
「また練習して、次は勝てるようにするしかないよ! 次の試合も、応援に行くから!」
私がそう言うと
「…それ、ほんと!?」
銀が顔を上げる。
「うん!
あと、 今日は2人の分も弁当作ってきたから食べて元気だしなよ!」
私がそう言った途端――
「「マジで!?」」
さっきまでの落ち込み様が嘘みたいに2人は元気になっている。
まるで、凄い喜んで尻尾を振ってる犬みたいだった。
3人で、中庭のベンチに座ってランチタイム。
部活後の奴らの食欲は怪物並だから、私は重箱3段に弁当を作ってきた。
(もちろん、自分の弁当は別にある。)
「やっべぇ!ちょ〜旨い!」
銀が頬袋をパンパンにしたまま感想を述べると、口から食べかすが飛んできた。
「わっ!!汚い!」
私が食べかすを避けていると、
「唐揚げも〜らいっ!」
海人に食べようとしていた唐揚げを略奪されてしまった!
何という無法地帯!!
「あ"〜っ!?それ私の!!」
私が絶叫するも
「ん〜!んまい!!のぞみはお菓子作りだけじゃなくて、料理もできるんだね〜」
そんな風にきらきら笑顔を向けてくるから、怒る気も失せる。
そのまま3人で、色々話ながら箸を進めていると、あんなに沢山作った弁当は10分足らずでほとんど無くなっていた。
「 サッカーしてる時って、2人共いつもと全然違うよね」
私がふと感想を告げれば、
「えっ!?それってどういう意味!?」
銀がデザートを食べる手を止める。
「普段は、ふざけてばっかだけど
サッカーしてる時は超マジメだなぁって思って。」
「のぞみはそ〜ゆ〜俺達みてどう思った!?」
なぜかワクワクしながら訊いてくる海人の顔には米粒がついてた。
「う〜ん、他の女子達が騒ぐ理由が ちょっとわかったかも。」
私が照れ臭くってぼかして言うと
「え〜!?もっとはっきり言ってよ!」
米粒をつけたまま海人が、そのかわいい顔を近付けてくる。
あのくりくりお目目が、じーっと私を見つめる。
「あぁもう!見直したよ!
悔しいけど、2人共カッコよかった!」
私がそう言った瞬間、2人は
「「よっしゃ〜!!」」
とガッツポーズして、何故か突然抱き合っていちゃいちゃ始めた。
…意味わかんない。
「ちょっと!勘違いしないでよ!サッカーしてる時だけだからね! 今みたいに、海人の顔に米粒ついてるのとか、ほんとにバカだなって思ってるし!」
恥ずかしくって赤面してしまった私は、デザートを食べて誤魔化した。
海人は慌てて米粒を取り、銀はさらに上機嫌にデザートを食べている。
for a change
―たまにはいいんじゃない?―
(のぞみ、このデザートのクッキーめっちゃ旨い!)
(うん、俺もこれが一番おいしかった!)
(…それ、慧先輩が私への差し入れに焼いてくれたクッキー)
((え"っ!?))
2015.5.6
天野屋 遥か
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