とっても天気が良いから | ナノ

今日は君の邪魔をしに会いに行こうか

「単位、争奪戦?」
「そう、基本は先生が一単位って書いてある札を持ってて、生徒がそれを取るんすよ。で、俺も参加しようかと思ってて」
「へえー」

 へへ、と太陽の色を帯びた髪を揺らしながらそう話し白銀が笑うのを咲耶は眺める。
 そんな会話をしたのは、最後に白銀に会った相変わらず暑い日の夕方だった。


―――――――――――――――――


 その日の夕方。いつものようにふらりと街中を歩いていたら、いつの間にか天照学院の近くに居た。丁度下校時刻だったこともあり、通学路になる道には学生が溢れていた。
 そろそろ帰ろうかと人を避けながら前を進んでいると、視界に入る学生達にある人物を思い出す。
 もし彼に会えたら楽しい帰路になるのになぁなんて。
 そう思ってしまうのは、何故なんだろう。深い意味を探してはいけないのかもしれない。けれど、咲耶は暇を持て余し気味に思考を巡らせる。
 しかしそれも束の間で、前を歩く学生達のその中、一際目立つ美しい髪色を持つ目当ての人物を見付けてしまったので、咲耶はくだらない考えを意識から放ると、人目も憚らず挨拶代わりに後ろから腕を伸ばし彼に悪戯した。
 その帰路に付き添った道中での会話で知ったのだ。

「十五日って、言ってたっけ…」

 咲耶は椿組の屋敷、一人きりの部屋の畳の上にだらしなく寝転がり、ふと視界に入った暦の15と大きく書かれた数字を見上げる。
 時刻はまだ午前8時になるところ。既に蝉の喧噪が静かな屋敷いっぱいに響き渡り嫌でも夏を意識させられる。
 部屋に差し込む陽の光が咲耶の肌をじりじりと焼いている。日差しを避けるように咲耶は数度寝返りを打ち、まだ陽の暖かさを感じる肌が、ふと白銀の白い肌を彷彿とさせ、そこからその会話を連想した。
 そう言えば、彼にとって陽の光はあまり身体に良くないと聞いていた。
 咲耶は呆れた。
 止めておけば良いのに、と。こんな真夏日の炎天下だ。教室で授業を受けるのとは訳が違うだろう。
 大丈夫なんだろうか?
 呆れていたが、同時に 少しだけ心配していた。しかしそれでも彼はやるのだろうということも、一緒に過ごす短い時間を重ねた今、なんとなくわかっていた。
 きっとそういう男なのだろうし、自分でやると決めたのだ、それでどうなろうが咲耶の知ったことではない。実際、咲耶はそれを聞いた時に止めも労りの言葉も掛けてはいない。今でこそ少し心配したのは、ただの気まぐれで。
 それよりも西京学園も交えた争奪戦、つまり亜人たちも含めた争奪戦ということは、生易しい物ではないのだろうことくらいわかる。武器は使えないと聞いていたが、生徒全員を監視出来る訳もあるまいし、どうなるかわかったものじゃないな、と咲耶は誰へともなく同情した。
 しかし教師を追いかけて札を奪うというルール自体は到ってシンプルで、むしろ楽しそうではある。それに関しては羨ましい。
 参加すると言っていた彼は体術が得意だと言っていたが、どういう風に戦うのだろうか。少し興味が湧いた。戦いながら駆ける姿はさぞ綺麗なのだろう。
 自分が可愛いと、綺麗と、素敵だと感じたものを愛でることが趣味で、愛でることで自分の欲を満たせるし、純粋にそれが楽しいと思う。人だろうが物だろうが。白銀はその中の一人だ。
 でも。この気持ちは何だろう。
 白銀に、会いたい。

「…アハっ、久しぶりに身体動かそうかしらぁ」

 確かボランティアで一般の者も参加も出来ると聞いた。カラーボールをぶつけて邪魔をするらしい。それに紛れ込んで遊んでやろう。山育ちなのでこういった遊びは得意だ。
 咲耶は悪い笑みを浮かべると、静かに立ち上がり地面を照り付ける日差しの下に向かい歩き出す。
 無意識に笑みが零れる。楽しみだ、楽しみだ。

「あはー、今日はいっぱい構ってあげるわよぉ」

 白銀の驚いた顔を思い浮かべ、咲耶はまた笑った。




もし参加するとして、咲耶が白銀くんに会うまでの妄想。



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