冷めやらぬ歓声の中、ステージから降りて控室に向かう。
この後すぐに局移動だから、室内は数多くのスタッフたちが忙しなく動き回っていた。

ヘアメイクはそのままに衣装から私服に着替えていると、まだ廊下で誰かと話し込んでいるデヒョンが見えた。
相手は壁に隠れていて見えないけれど、恐らくテレビ局のスタッフだろう。

ちらりと時計を確認して、まるでデヒョンを探しているかのような声でその名前を呼ぶ。
するとひょっこりと控室に顔を出して、俺と目が合った途端、ふにゃりと笑った。


「なに?よんじぇや、」


なに?じゃないだろ、と内心溜息を吐きつつ、時計を指さす。

一瞬小首を傾げたデヒョンだったけれど、俺の指した方を見て、あっ、と小さく声を上げた。
その後すぐに話していたスタッフであろう人に挨拶している声が聞こえ、ぱたぱたとこちらに走ってきた。


「何時に出るんだっけ?」

「11時」

「えっ!まじで!」


急がなきゃ、と大慌てで荷物をまとめ始めたデヒョンに、俺たちの会話を聞いていたヒムチャン兄が、遅れたら置いていくぞー、とからかいの言葉を投げている。
その声を聞きながら、室内に広がった自身の私物をかばんに詰め込んでいるデヒョンを目で追った。

一体どうすればこんな短時間で部屋をぐちゃぐちゃ出来るのだという程、デヒョンはよく物を広げる。
決して持ち物が多いという訳でもないはずなのだけれど。

シャツのボタンを留め終えて、まだ室内をうろうろしているデヒョンを横目に見ながら彼のかばんから水と酔い止めを取り出す。
それから、大量に入っている食料の中から腹持ちの良いクラッカーを選んで。


「デヒョナ、」

「ん〜?」

「片付ける前にこれ飲まないと」


言いながら、ドレッサーの前でごそごそしているデヒョンに近づく。

びりりとクラッカーの袋を破いて、こちらを振り向いたデヒョンの口にそれを突っ込んだ。


「んぐっ」

「食べて」

「ふ?」

「全部食べたら、酔い止め飲んでね」


もしゃもしゃ、もしゃもしゃ。
籠った音を立てながらクラッカーを咀嚼しているデヒョン。
その姿がまるで小動物のようで、何だか少し面白い。

ごくん、と飲み込んだのを確認して、次のクラッカーを彼の口に運ぶ。
ぱくりと咥えたデヒョンに残りのクラッカーと水、酔い止めの薬を渡すと、口を動かすのに一生懸命なデヒョンに代わって彼の私物を適当にかばんに詰め込んだ。


「…なんかお前、デヒョナの母親みたいだな」

「はい?」


ぽつん、と独り言のように呟いたヨングク兄を見上げる。
思っても見なかった言葉に、思わず顔をしかめた。


「ヨンジェおんま〜」

「おんま〜!」


ヨングク兄の言葉に悪ノリしたヒムチャン兄とジュノンを軽く睨んで、ジュノンに至っては軽く蹴りを入れておいた。

ちらりとデヒョンを盗み見ると、何だか嬉しそうにもぐもぐと口を動かしている。
その姿に何故だか溜め息が出た。


「ヨンジェ兄、飼育員さんみたい…」


ぼそり。
呟いたジョンオプの声が室内に響いた瞬間、一瞬の間の後どっと笑いが起こった。


「飼育員わかる!それすっげー的確!」


ぎゃはは!と笑うヒムチャン兄の隣でヨングク兄も口を押えているし、ジュノンもお腹を抱えて笑っている。

この笑いを引き起こした張本人はきょとんとしていたけれど、周囲の笑いに釣られてへにゃりと笑った。


「こら、ジョンオパ!兄さんを侮辱したなーっ?!」


ようやくクラッカーを飲み込んだのであろうデヒョンが、へらりと笑っているジョンオプの首を掴んで揺する。

ぐらぐらと揺すられながらも、そんなつもりじゃないです〜、とのんびり抵抗しているジョンオプ。
と、やっぱり楽しそうに笑いながらジョンオプを締め上げているデヒョン。

兄2人もまだ笑っているし、ジュノンはデヒョンを指さして煩い飼い犬だとからかっている。

本当騒がしい人たちだなぁと一人苦笑いしながら、デヒョンがまた散らかしたクラッカーの袋や薬の残骸をゴミ箱に捨てた。




マルガリータみたいな









デが乗り物しやすい子だと可愛いなぁ、と。
そんなチョンデのお世話係ヨンジェを書きたかったのですが、なんだかよくわからなくなったのでボツに。笑













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